今期も仕事が忙しい時期になってきたので、早いところ台湾猫旅レポートを進めていかないと、いつまで経っても終わらないのである。ちなみに現在絶賛執筆中の3月25日(4日目)は今回の猫旅で最もたくさんの猫に会った日であり、都合6回に渡って掲載することになるが、翌26日以降は旅程の都合で移動が多くなり、旅の充実度はともかく猫の数としては次第に少なくなってくる。
そんなわけでたくさんの猫に会った3月25日、前々回と前回の記事では朝の馬公市街を散歩し、わずか1時間5分という短い時間で20匹もの猫に遭遇した。普段俺が猫影の濃い散歩コースとして重宝している南武線沿線の出現頻度が0.9〜1.0meow/kmぐらいのものだから、2.8km歩いて20匹=7.1meow/kmというのは極めて高い数字だ。猫に会うのが目的の旅なのでこれは嬉しいことだが、同時に残り少ない体力を蝕んでいくことにもなるわけである。
馬公南海碼頭に停泊中の馬公之星168號に乗り込んだのは出港20分前。船体に書かれた数字を見て、馬公之星という名前の船が少なくとも168艘も存在するのかと目を剥いたが、あとで調べてみると、168という数字は語呂合わせで、ほかにも168號を名乗る船がたくさん存在するそうだ。例えば馬公之星168號の代船は亞曼尼168號という船だし、淡水〜八里を結ぶ渡船は順風168號というように、この命名は澎湖や台湾だけでなく、大陸や香港、シンガポールやマレーシアなどの華人文化圏全体に見られる。数字の168(yīliùbā)の発音が「一路發(yīlùfā)」という商売繁盛に通じる言葉と似ているからだそうだが、馬公市の委託船である馬公之星168號が繁盛したところで船員の待遇が良くなるものなのか、外国人の俺には分からない。
台湾初めての二次離島となる桶盤嶼には8:50に到着。馬公南海碼頭からわずか20分の船旅にも関わらず、定住人口10人以下とされる桶盤嶼は予想以上に荒涼としていた。事前の調査で島内に1軒だけ確認できていた商店もすでに廃業していたが、島を離れたわけではないらしく、元店主が面倒を見ていると思しき猫も少し離れた擁壁の上でお昼寝していた。

奥に見えているのが廃業した商店。夏季のみ季節営業を続けている可能性もある。

公共施設や民家が建っているのは港の周囲の狭い範囲で、少し内陸に行くと写真のように荒涼としている。桶盤嶼は澎湖諸島の中でも特に柱状節理が発達していて、断崖という断崖に六角形の玄武岩が積み重なっている。この島の周囲には澎湖名物の石滬は存在せず、宿泊施設はおろかアクティビティの拠点もないので、観光客の多くは柱状節理だけ眺めて帰っていくが、台湾の魅力の一つは地質だと俺は思っているので、その姿勢は誤りではないはずだ。島の面積は熱海の初島よりやや小さいくらいなので、時間さえあれば徒歩で一周するのもたやすいが、現在は落石のため通行止めになっている箇所があるようだ。島内で撮った写真はこちら。

桶盤嶼の滞在時間はわずか40分で、先ほどの馬公之星168號が9:30に馬公へ折り返す。実は桶盤嶼の南2kmほどのところに虎井嶼という島があり、そこは登録上の人口が900人弱と桶盤嶼よりもずっと栄えていて、しかも台湾では猫島としても知られているのだが、敢えてそちらを選ばなかったのは、俺の性格的に人々から注目されない猫の方に興味が湧くからだ。両方に行ければいちばんいいが、この日は旅程がぱつぱつで、どちらか一方を選ぶしかなかった。
そんなわけで、2匹の茶トラに会ったあと、申し訳程度に港の周囲を散歩したらもう残り12分。あれはさっき商店の近くで見かけた子かな。

人気のない波止場を眺めている。石滬もないこの島に漁船は存在するのかな。

よくよく見るとさっきのとは別猫。桶盤3匹目となる茶トラと指で挨拶して間もなく、馬公之星168號は馬公南海碼頭へ向けて出港した(動画あり)。

馬公に着いて船を降りたらもたもたしている暇はなく、すぐに次の散歩地へ向かわなければならない。この日は嘉義に泊まることになっていて、それには澎湖空港を15:40に発つ立榮航空8662便に乗る必要があるが、少なくともあと2箇所は澎湖の集落を歩いてみたい。
澎湖本島の北に中屯嶼という面積1.4km²の小島があり、両島を結ぶ中正橋を渡ればすぐそこが白沙郷の中屯村となる。馬公南海碼頭からは9kmほど離れていて、路線バスもあるにはあるが、悠長にそれを待っていたのでは飛行機に間に合わないのでここはタクシー一択。しかし予想に反して碼頭の周囲に黄色い車両は見当たらず、離島では55688(台湾のタクシーアプリ)も当てにならないので、南海遊客中心の総合案内のお姉さんに頼んで呼んでもらった。「5分ぐらいで来るから外で待ってて」と言うお姉さんに礼を言い、ほどなく黄色い車が横付けされてほっとしたのも束の間、行き先は事前に伝えているはずなのに、「去哪裡?」と何度も聞いてくる。中屯漁港と答えても納得せず、俺の発音が悪いのかと思って傷ついている間にも、中屯の次はどこへ行きたいのか、海は見ないのかなどと粘り強い。どうやら俺がタクシーをチャーターして澎湖観光することを期待しているらしかった。こういう時は動物行動学のフィールドワークとでも言っておけばたいてい黙るものだが、台湾華語でどう言えばいいのか分からず、面倒くさいのでジョントゥンジョントゥンと鸚鵡返しのように答えていたら、いつの間にかタクシーは中正橋を渡り終えて中屯國小前の道端に停車した。金にならない客は早く降ろして馬公へ戻りたいのか、漁港よりもだいぶ手前だった。
しかし猫探しにおいてはそれが福に転ずることもある。向こうに小さく見えているお焦げみたいな毛色の子、タクシーで漁港まで行っていたら会えなかった。

シャッターの向こうへ逃げかけたところ、何とか思い止まってもらってもう1枚。この出会いにはちょっと感動してる。

静かな集落の奥へ進むと立派な廟が現れた。扉が閉じられているのは風の強い地域だからだろうが、猫は無防備にひっくり返っている。

私は日本から来た旅の者です。どうぞ気にせず寝ていてくださいな。

中屯の路地は七美や桶盤よりもだいぶ近代的に見えるが、たぶんこれは珊瑚石の上にコンクリートを塗りたくっただけだと思う。

ワイルドな顔貌にも人懐っこさが窺えるキジトラで今回はおしまい。バスの時間まで残り50分であと何匹の猫に会えるのか、次回「白沙〜東衛」編をお楽しみに!





























