台湾の山から海から・その19(嘉義)


嘉義市の猫

 過貓という山菜の存在は以前から知っていたが、実際に食べたのは今回の猫旅が初めてだった。台湾のローカル市場で時々見かけるこの山菜はワラビやコゴミに似ていて、アクがないのでさっと茹でるだけで気軽に食べられる反面、鮮度が落ちやすいので流通には乗りにくく、大手スーパーや百貨店の野菜コーナーに並ぶことはまずない。以前から一度食べてみたいと思っていたところ、北回帰線標を見物したあと、嘉義市内で立ち寄った食堂のメニューに載っているのを見つけて、思わず「過貓あるんじゃん!」と声が出てしまった。マタタビやキャットニップのように猫が寄ってきそうな名前だが、猫とはまったく関係がなく、寄ってきたのは日本人のオッサンだったという次第で大変申し訳ない。台湾語ではkuè-niauと呼ばれており、漢字表記は蕨苭や蕨貓などいくつかの当て字があるようだが、現在はどこの市場でも過貓と書いて売られている。涼やかで上品な味は添えられた大根おろしにもよく合って、ビールが欲しくて堪らなくなったが、それはホテルに着くまで我慢した(食堂で食べた過貓の写真はこちら)。
 この夜は久しぶりにちゃんとした食堂でちゃんとした食事を取り、嘉義市内は文化路沿いに建つ福泰桔子商旅に投宿。開け放った窓から聞こえてくる猫の咆哮に期待を膨らませつつ、長い長い猫旅4日目を終えたのだった。嘉義空港から北回帰線標に至る前回の記事はこちらからどうぞ。
 明くる5日目(3月26日)の散歩は早朝の嘉義市内から始まった。この日の旅程は移動が長く、朝の嘉義散歩を終えたら次は午後の甲仙まで電車とバスを乗り継ぐ旅になるので、今のうちにたくさんの猫に会っておきたい。昨夜の咆哮の主はどこかなーと思いながら環状の路地を歩いていると、果たして朝ご飯待ちと思しき1匹目を発見した。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 建物が密集していて暗い路地。明るい単焦点レンズに交換してもう1枚撮っておく。
嘉義市の猫

 日本時代の都市計画の名残なのか、この辺りには大小の環状道路がいくつもある。それぞれに居ついている猫がいるようだ。
嘉義市の猫

 スクーターのシートで寝ていたキジトラ。呼びかけに応じて振り向いてくれた。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 待ちくたびれたような顔つきだね。今ちょうど7時だからもう少しなんじゃない?
嘉義市の猫

 嘉義市内を散歩するのは初めてではないが、ほぼ後站(駅裏)ばかりだったので朝の市街地が新鮮に映る。行き交うスクーターを眺める猫はいかにも野良猫然としている。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 近寄ると屋台の下に引っ込むが、逃げ切らないのは空腹だからだろう。手持ちの高級カリカリを一握り与えたら喜んだようだった。
嘉義市の猫

 東京ではこういう子を見なくなった。今は猫の代わりにネズミが跳梁跋扈している。
嘉義市の猫

 街路の隅っこにはほかにもぽつぽつと猫の姿がある。日中は車やスクーターの往来で賑やかになるが、朝の散歩はこういう風景をゆっくり見られるのがいい。嘉義という街自体、路地に突き出た看板なんかが80〜90年代の台北を彷彿とさせて、何となくノスタルジックに感じる(動画でしか見たことないけど)。
嘉義市の猫

 大きなお尻をこちらに向けたサビ。独り言だから気にしないでね。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 ついでに写真も撮っていくけど、気にしないでね。
嘉義市の猫

 阿里山森林鐵路の広大な操車場を横断し、間もなく高架化される縦貫線を踏切で渡って嘉義の後站へとやって来た。大きなガラ袋を嗅ぎ回り中の黒発見。
嘉義市の猫

 固執しておるな。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 カラフルなのは米袋に砂糖袋。興味深いのはオレンジ色の字で台糖と書かれた真ん中の袋で、品名に「本土二砂」とあるのは、台湾産のサトウキビが100%使われている二号砂糖(ザラメ糖)のことだそう。これはきっと日本では見られないものだし、食べてみたくても入手するのはなかなか難しいのではないかなあ。台灣糖業公司の日本語による紹介動画はこちら(YouTube)。
嘉義市の猫

 行っちゃった。
嘉義市の猫

 黒の棲み処と思しき民家の軒下にもう1匹いた。背後に見えている高架橋は建設中の縦貫線。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 目つきは悪いけどたぶん人懐っこい子。
嘉義市の猫

 ほら、やっぱり! この家の猫がフレンドリーなことは、一昨年来た時に認識済みなのだ。
嘉義市の猫

 ちなみにさっきの黒、実は2匹いて途中で入れ替わっている。最初にガラ袋を嗅ぎ回っていたのはこちらの右耳に切り欠きがある方で、砂糖袋のところにいたのは一昨年も見かけた子。この家にはほかにも何匹かいるはずだけど、今日はこれから10:19発の普悠瑪号で高雄へ向かうので、このくらいにしておこうかな。
嘉義市の猫

 台湾の行政区分である「市」にはいくつかの種類があって、人口125万人以上という最も大規模なのが台北市や高雄市などの「直轄市」で6市ある。その次に規模が大きいのは50万人以上の「旧省轄市」で、そこに分類される基隆市、新竹市、嘉義市はいずれも要件を満たしていないが、法律施行前から存在することで遡及されず、また下位行政区分である区を伴うことが特徴。今回の猫旅で台湾の全県制覇したことは前に書いたが、市単位だと直轄市と旧省轄市もすでに制覇済みだ。そして人口10万人以上の自治体に適用される最も小規模なのが「県轄市」で、知名度の高いところでは花蓮市や台東市など全部で14市あり、その中には昨日まで滞在していた馬公市も含まれている。県轄市は読んで字の如く上位行政区分が県で、区はなく、人口要件の例外として10万人に満たない場合でも県庁所在地であれば県轄市にできる。
 話が長くなってしまったが、要するに嘉義市というのは区を伴うとはいえ西区と東区の二つしかなく、人口は26万人ほどと日本における中核市程度の規模だ。駅近といっても少し脇道に逸れれば野良犬、野良猫そしてドブネズミが闊歩しているし、上を向けば野鳥が華やかな声で囀っている。
嘉義市の猫

嘉義市の猫

 ここの猫はみんな狩猟が上手なのだろうね。
嘉義市の猫

 今日のところは紙幅が尽きたので、嘉義の猫は一旦ここでおしまい。続きはまた後日ということでお楽しみに。
 最後にマコちゃんの状況を簡単に記録しておく。6月27日の深夜に初めて起きた癲癇てんかん様の発作は、それ以降も毎日1~2回の頻度で起きていたが、今のところ7月6日の11時ごろを最後に止まっている。7月3日からは抗痙攣薬とステロイド剤を服用しており、それでも6日まで発作が続いたのは、抗痙攣薬の血中濃度が高まっていなかったか、あるいはそもそも効き目が弱かったからかも知れない。かかりつけ医に相談したところ、重度の貧血で群発発作となると一刻を争うレベルと教えられ、7日の終業後に動物病院に行ってより強い抗痙攣薬に変えてもらった。ステロイド剤については、もし本当にリンパ腫が再燃しているなら、当面は劇的に効いて貧血が改善する可能性があるが、効いたとしても効かなかったとしても心情的には複雑だ。効くということはリンパ腫が再燃している可能性が高いわけだし、かといって効かないことでリンパ腫を完全否定できるわけでもないからだ。不思議なことに食欲は相変わらず旺盛で、体重も最近稀に見るほどの増加率を示しているので、ステロイド剤の食欲増進作用でさらに増えてくれれば、免疫強化にもなって、もうしばらくは元気でいられるかも知れない。ステロイド剤というのは人間界では毀誉褒貶あるらしいが、猫にとっては使い勝手の良い夢のような薬なのである。
嘉義市の猫

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