猫実と聞くと、その筋の人はすぐに浦安市の猫実を思い浮かべるだろうし、実際に知名度も高いわけだが、わざわざ前泊してまで行くほどの場所ではない。そちらは年明けの1月下旬か2月上旬に行くつもりなので、今はまだステイなのである。
一昨日の午後から出かけたのは茨城県坂東市の猫実。坂東市は2005年に岩井市と猿島町が合併してできた市だそうだが、茨城県の内陸というのは俺の中で最も知名度の低いエリアの一つで、名前を聞いただけで位置の分かる自治体がほとんどない。これは何も田舎だからバカにしているのではなく、坂東市は鉄道のない市なので、駅名から連想するということができないのである。坂東市が発足した翌年には水海道市と石下町が合併して常総市が発足しており、こちらは常総市という名前でおおまかに絞り込めるし、水海道と聞けば「ああ、あそこか!」とすぐに分かる。関東鉄道に水海道という駅が存在することは幼少のころから知っていて、北海道と似た名前なので何となく親近感を持っている。
今回の散歩はそんな坂東市内から関東鉄道常総線の三妻駅に至る15.2km。前泊したのは旧岩井市の中心街に建つホテルグリーンコア坂東という宿で、ここへ至るのも府中本町から武蔵野線で南流山、つくばエクスプレスで守谷と進み、守谷駅からは「急行坂東号」と称する路線バスで40分もかかった。前泊などせずとも始発に乗れば7時すぎに三妻に着くことはできるのだが、猫実へはさらに徒歩1時間半もかかるので、真夏の今はそれだと遅すぎる(三妻からの公共交通機関は存在しない)。できる限り公共交通機関を利用して猫実に近づくには、守谷駅〜岩井バスターミナルを結ぶ路線バスに乗る必要があるが、猫実に最も近い神田山バス停は平日1.5往復のみの「直行坂東号」しか止まらず、しかもこの便は守谷駅前のみ乗降可能で、途中の停留所は上り乗車のみ・下り降車のみという通勤通学向け運用なので使えない。その点、前述の「急行坂東号」ならどのバス停でも乗降できる反面、肝腎の神田山を経由しないので、利用するバス停は猫実から遠い辺田三差路となり、早朝のうちにとなると岩井バスターミナル6:15発の一択。しかしこの便は平日のみ運行という条件つきなのである(時刻表はこちら)。坂東市猫実、なんて行きにくいんだろう!
というわけで、2024年10月の京都府京都市西京区山田猫塚町から約2年ぶりとなった「猫のつく地名シリーズ」の始まりー。

辺田三差路が最寄りのバス停とはいうものの、猫実の端まで1.6kmもある。猫の方は歩き出して間もなく見つけたのがダッシュで逃亡し、ようやくカメラに収まったのはスタートから20分近く経った6:44。この季節としてはやや鈍い出足だ。

茨城版・猫実猫の1匹目は畑を巡回中のキジ白。しかしこれ以上は接近不能。

民家の敷地の奥には若い黒もいた。たまたま外に出ていた奥さんに声をかけ、立ち入りを許してもらったものの、秒で逃亡。しかし観光客など絶対に来ない集落をうろつくのだから、地元民への声かけは大切なのである。

同じ区画を2周して諦めようと思っていたら、1周目では見なかった猫が道端に座っていた。こういうことがあるから、次へ向かう踏ん切りがつかないんだよな。

この子も毛並みは悪くないね。やっぱり農村ならではのネズミ要員なのかな。

日陰に入ったまま出てこなくなった。天気予報と睨めっこして、あまり気温の上がらない曇りがちな日を狙ってきたつもりだが、想定よりも雲が少なく、日なたになるとあっという間に体力が削られていく。

しかし、猫散歩というのは予想外の出来事があるからやめられない。「暑くてもう無理ー」と一人ごちながら歩いていると、とある施設の敷地の奥に怪しげな塊を発見。

施設の人に挨拶したら、「こっちにもいますよー」と裏手へ案内してくれた。すごい!

家族関係を教えてくれたけど、有頂天になってしまってまったく覚えていない。子猫は大方里子に出したが、この子はまだ引き取り手が見つからないと言っていたような気がする。

君のもらい手がないなんて、みんな見る目がないね。こんなに可愛いのにねえ。

みんな穏やかな性格で人懐っこく、大切にされていることが見て取れた。猫実で見かけた猫ファミリー、また会う機会はあるかなあ……。

坂東市内には猫実のほかにも猫実新田という大規模圃場エリアがあって、当然そちらも探索してみたが、新田というくらいなので人間や猫の居住エリアはごく小さく、念のため3周ぐらいしてみたものの見事に撃沈。それよりもキツかったのは猫実新田から美妻橋へ至る「日陰なし区間」で、悪いことにちょうど雲が途切れてしまって逃げ場がなく、五郎兵衛新田町の先に雑貨屋を見つけた時は天にも昇るような気分だった。店の前には日除けとベンチと自販機が並んでおり、まさに砂漠のオアシス。この店がなかったら三妻駅へ辿り着く前に熱中症でダウンしていた可能性が高い。最悪の場合はタクシーを呼ぶ心積もりもしていたが、地方のタクシー不足が深刻なことはこの辺りも例外ではなく、昨夜泊まった宿も「タクシーを利用する場合は必ず前日までに予約を」と呼びかけていたくらいだ。こういう場所ではGOアプリなど何の役に立たないし、タクシー会社に電話したところで来てもらえるかは運次第だ。
猫を見つけた時に限って日が翳るのも猫散歩あるある。

近寄ってみたらもう1匹いた。三毛はブラックスモーク三毛だね。

キジトラは問答無用で逃げてしまい、取り残された三毛も腰が浮いている。これはダメかも分からんね。

そんな俺たちの様子を母屋の向こうから眺めているのもいた。この時はオッドアイの白猫と思っていたのだけど……、

よくよく見てみると、右目の真ん中でブルーとイエローに分かれている。そう、この子はダイクロイックアイなのだった!
オッドアイに遭遇することはたまにあって、白猫や大白斑ならさほど珍しくはないが、ダイクロイックアイとなると次元が違う。もちろん生で見るのは初めてだし、そもそも偶然頼りの猫散歩で会うのは一生かかっても無理だと思っていた。Geminiによると「数万匹に1匹レベル」、GoogleのAIモードだと「数万匹〜数十万匹に1匹レベル」だというから、こうして会うのもきっとこの子が最初で最後だろう。もう少し近寄りたかったが、警戒心の強い子で、この直後に家の裏へ逃げてしまった。
散歩自体はさらに美妻橋で鬼怒川を渡り、ゴール地点の三妻駅に辿り着いたのは10時半すぎ。せっかくここまで来たので乗り鉄として関東鉄道の気動車を堪能してから帰途についた。
ちなみに茨城県にはもう1箇所、筑西市に猫島という大字が存在するが、こちらは猫実以上に不便で人家もまばらなことから、猫を見つけるのはなかなか困難だろうと思っている。猫のつく地名にはこうした農地や山林が多く、浦安の猫実や名古屋の猫洞通のような都市部はむしろ例外なのである。


























