キジ白3号が旅立ったようだ。
春先から衰えが目立つようになり、耳も遠くなっていて、舌を鳴らして呼んでも気づいてもらえないことが増えていた。毛質が細くて厚い子なので、それほど痩せたようには見えなかったが、後ろ足が覚束なくなっていて、そろそろお迎えが近いのかも知れないと覚悟はしていた。最後に会ったのは先週の日曜日だから11日前。いつもならこちらに気づくなり駆け寄ってくる子が、よたよたと5mほど歩いては休み、歩き出してはまた休むということを繰り返して、最後はその場で動けなくなっていた。
キジ白3号を知るSNSのフォロワーさんから姿が見えないとDMがあったのは先週の土曜日で、明くる日曜日の午前中に赴いて近所を探し回ったもののやはり不在。キジ白3号邸はチャイムを鳴らしても応答がなく、隣の家を訪ねたところ、70代前半と思しき主人が出てきて、「白い猫」なら4〜5日前から見ていないと教えてくれた。最終的にはキジ白3号邸の主人も現れたが、やはりここ数日は姿を見ていないとのことだった。
冒頭で「旅立ったようだ」と表現したのは上記のような経緯で、誰かが看取ったり亡骸を見つけたわけではないからだ。22歳という老齢のサチコでさえ、最後に体調を崩してから死亡するまで11日だった。これを書いている今も、死期を悟ったキジ白3号が茂みや民家の床下に身を隠し、じっとその時を待っているかも知れないと思うと、胸が抉られるようでいたたまれない。
今日の猫関係業務は調布から東府中。予備機として保管してあるK-5を久しぶりに持ち出したが、日の出が遅くなってきたこの季節、暗い路地の撮影では性能不足を感じることが多く、年末〜来春の発売が噂されているPENTAX次期フラッグシップ機への物欲を刺激するだけに終わった。1匹目からして暗がりだからISO6400に設定したけど画質がざらざら。
先月下旬にも見かけたばかりの黒白。ここでご飯を待っているのかな。
調布駅前から自転車を漕ぎ出して、いつもの猫拠点に差しかかると、視界の向こうに更地が見えてきて、思わず「マジかー」と叫んでしまった。
人懐っこい茶トラ白の暮らす農家。解体されたのかと思って一瞬背筋が凍ったけど、分筆して東半分を空けたのね……。
いつもならもう少し親睦を深めるところ、今朝はちょうど家の主人が雨戸を開けているところで気もそぞろ。君は食欲旺盛だものね。
道路向かいの長毛サバ白は少し疲れたような佇まい。例の2匹のお友達。
秋らしくなったといっても、まだ30℃を超える日があるから、長毛には辛い日々だよなあ。
間合いを詰めると茂みに隠れ、引くと出てくるという膠着状態。初めての子だからしゃーない。
カメラを向けるとぷいと逃げてしまう子だけど、お日様の魔力には勝てないみたい。
最近ようやく明け方に20℃を割り込むようになって、朝が待ち遠しい季節。
キジ白3号の話をもう少し。
日曜日にキジ白3号邸の隣家を訪ねた時、最初は不審そうにしていた主人だったが、俺がかつて4軒隣で猫と暮らしていたことを知ると、急に饒舌になって近所の猫事情を教えてくれた。それによるとキジ白3号はもともと崖下の猫好き一家が面倒を見ており、この辺りではシロという呼び名で認識されていた。ところが2016年ごろになってその家が飼い猫とともに引っ越してしまい、身を寄せていただけのキジ白3号は取り残され、お隣さんが面倒を見るようになった。その猫好き一家とともに引っ越していった「白っぽい子」がキジ白3号の母親だそうで、当時あの家で白っぽい猫というと、うちの敷地や屋根の上まで遊びに来ていたあいつしか思い当たらない。大白斑という特徴は共通しているものの、魚屋のオヤジみたいなダミ声で鳴くあの猫がそもそもメスだったとは信じ難いが、猫も人もみんないなくなった今、それを確かめる術はなくなってしまった。
キジ白3号は恐らく17年かそれ以上という長い年月を外猫として生き、子孫も残した。天晴れな人生だったと思う。最後に撫でた動画はこちら。