俺が育った北海道の秋は暗く短く、雪虫が飛んだあとは鉛色の空から冷たい雨が降り続き、やがてそれが霙になり、初雪そして根雪と変わって、翌年3月ごろまでモノトーンな世界に閉ざされる。だから東京に来た時は、秋の色彩の豊かさにものすごく感動したものだった。
その時の感動はずっと変わらない。子供のころからゆっくり車窓を眺められる鉄道の旅が好きで、中学2年生の時には一人で北海道を一周するぐらいだったが、上京してからはその対象は沖縄と九州南部を除くすべての県へと広がった。北海道に住んでいた時は道外のことにはまったく関心がなかったのに、東京に来てからは遅れを取り戻すかのように一人旅ばかりしていた。
加えて1990年代後半からは夏の暑さが尋常ではなくなっているので、別の意味でも秋になるのが待ち遠しい。そんなわけで、今日も朝からいい天気だったのが嬉しくて、また10km以上歩いてしまった。
家を出たのは8時ごろといつもよりやや遅めだったが、これは某巨大公園へ赴くつもりで散歩の前半終了を9時半の開園時刻にぶつけるためだ。ほど良い時間だったのか、久しぶりに庇の上でシャム混1号が日なたぼっこしていた。
ご機嫌斜めなシャム混1号。ここのところ我が家の近所では猫の戦いが勃発しているので、緊張状態にあるのかも知れない。
散歩の前半は武蔵砂川からスタート。先日も書いたように、立川市内で猫を見つけていない町丁は上砂町だけとなったので、空隙を埋めるため再チャレンジすることにしたのだった。前回は夜勤明けで難儀したけど、今日は15分ほどでつつがなく発見。おめでとうございます。
1匹見つければそのあとは意外にたやすかったりする。上砂町の2匹目はご飯待ちと思しきキジ白。
とある団地の裏庭にキジトラが張り付いていた。ここでもご飯待ちかな。
秋晴れの日はコントラストが高くて日陰が真っ暗。道路標識のところにいるのは巡回中の茶トラ。
どこかの飼い猫らしく、割と人慣れした子。背中に回った鈴をからから言わせながら、しばらくの間すりすりしてくれた。
上砂町の制覇が完了して、次の目的地である某巨大公園へと移動。開園とともに入園して人の気配のない木立を歩いていると、池のほとりに白いのが佇んでいた。
近寄ったら茂みに隠れてしまったので、池を一回りして戻ったら、いつの間にか地面で長くなっていた。この子は6月にも会っていて、その時の写真でキジ白か黒白と判定している(尻尾に色斑があるから)。今日改めて確認したら、尻尾はキジ色のようなのでキジ白に分類したが、白斑の大きな猫はその下にどんな毛色が隠されているのか、見た目だけでは結局分からない。
広い園内をさらに行くと、熊笹の茂みに潜む黒白発見。景観にまったく溶け込んでいないな。
枯れ野となった湿地をしばらく眺めていた茶トラ白。ここには仲間がいるんだから、くっついていれば暖かく過ごせるよ。
「……おお、私としたことが、うたた寝してしまった。年を取るとまぶたが重くていかんな」
散歩の終わりにスーダラ君と茶トラ係長の職場を覗いてみた。完璧な保護色モードで寝ていた係長は人の気配で目を覚ましたようだ。
一方のスーダラ君は業務中。紅葉シーズンでお客さんが多く、忙しそうにしている。
「係長は疲れているんだよ。僕一人で大丈夫だから、寝かせといてあげて」
「どうだ、忙しくないか?」
「へーきへーき。係長は休んでいてよ」