子供連れで旅行する際、同伴する幼児(未就学児)二人までは運賃を無料にしている交通機関が多いが、幼児だけで旅行する場合には適用されず、小児運賃を払わなければならない。俺が初めて一人で国鉄を利用した5歳のころ、小児の初乗り運賃は10円で、家捜しして見つけた硬貨を旅行費用に充てれば、小遣いのない身でも一人旅が楽しめた。もっとも10円で乗れるのは2駅先までだったので、わずか10分ほどのささやかな旅だが、横スクロールの車窓はいつまで眺めていても飽きなかった。10分間の冒険は小学校に上がって10時間になり、中学校で10日間になり、成人してからは体とお金が持つ限りどこまでも乗り続けるようになった。今は年を取って衰退したため、座席に座ってじっとしていられるのは数時間が限度で、飛行機に乗ってもせいぜい台湾ぐらいまでしか行けない。それでもLCCの狭い座席ではかなり辛いが、猫を探すためだけの海外旅行に、それ以上のお金はかけられない(というか、かけてはいけない気がする)。
まあそんなことはどうでもいいんだが、今日は4日続いた休暇の最終日ということで、社会復帰するのが嫌すぎてナーバスになっているため、猫関係業務は軽めにしておいた。
自宅を出て数軒隣の家の前を通りかかると、梨販売所の傍らで猫が番をしていた。
「長年の経験で私には分かるんだ。果物を買おうなんてヤツは、もっと明るい顔をしているもんだ」
灰色の熟女は元気かなと思って、住み処の路地を覗くと、熟女の代わりに猫の家族がこちらを眺めていた。先月来、たまに見かけるキジ色の親子だと思うけど、1匹増えているね。
お母さんは子猫を2匹産んだのかな。それとも、真っ赤な朝に見かけたのも入れて、3匹産んだのかな。
こちらが初めましての子。子猫といっても、生後4ヶ月ぐらいになっているようだ。
「せっかく遊んでいたのに、何回も邪魔しに来て、しつこいヤツめ」
先月から何度か見かけているのはこちらの子。その辺の葉っぱを使って気を引いてみたが、懐く気配まったくなし。まあそのぐらいの方が安全でいいのかも知れんな。
その後バスで移動し、柴崎町界隈をぶらぶらしてみた。とある路地で2匹の猫が対峙中。
三毛はさっさと逃げてしまい、残った白は人懐っこいのか懐っこくないのか微妙な表情。
近寄ったら民家の庭に退避した。呼ぶと返事するので、時間をかければ何とかなるかも。
ゆっくり1号の拠点にやって来た。塀にもたれて寝ているのがゆっくりちゃんだな。
「おいおい、挨拶もなしに行くのかよ。せっかくだから1枚頼むよ」
……などと、うだうだしているうちに、気配を察してゆっくりちゃん出動。
最近ごろーんが拝めない。今日は2秒ぐらい見せてくれたが、短すぎて写真は撮れなかった。
この子は本当に大人しい子。七三ファミリーが元気だったころも、少し離れたところに佇んで、黙って眺めているような子だった。調べてみたら、前回動いているところを見たのは2年前。その性格が身の安全を守ったのかも知れないな。