南武線の時と比べると遅々として進まない横浜線猫行脚。昨日の夜勤明けの時に歩こうかとも思ったが、坂や階段だらけで仕事帰りに行くようなコースではないので、大人しく別日程にして今日出かけてきた。
長津田~成瀬を歩くのは今日が2回目。2月に行った時は規定数の3匹に達せず、再挑戦することにしたまま放ったらかしになっていた。
沿線の大部分が丘陵地の横浜線にあって、この区間は田園都市線との交差地点であり、かつて東急が一括して開発を進めた多摩田園都市の一大拠点でもある。もともと恩田という単一の字名だったこの土地は、土地区画整理事業の進捗とともに分立が進み、ナントカ台とかウンタラ丘といった「台丘」オンパレードの地名へと変わっていった。山林を切り開いて造成したため急坂が多く、ベッドタウンとして開発されたため商店がない。自販機すらない。奥多摩の猫集落と似た環境だが、こちらは整然とした街区に良質な住民が集まる住宅街ということらしく、猫さえ歩いていない。
こうした街がお洒落と思われていたのはバブルまでで、今はむしろ忌避されるようになったが、それは猫探しにおいても同じことが言える。坂ばかりで疲れる割に実入りがないことはもちろん、散歩コースとしてもまったく面白くないからだ。今日会った猫は2月と被っているのがいたり、窓辺の室内猫がいたりして微妙だったが、規定数は満たしたのでさっさと次の区間へ進むことにする。
最初の猫は民家の壁にくっついていた。
ドサッ、ガラガッシャ、ニャーなどと賑やかな音を立てて去って行った。
時刻は8時を少し回ったところ。2匹のキジ白が薄日に当たっていた。
キジ色にしてはだいぶ赤茶けた毛色。さっきの出窓のキジトラと親戚かな。
2匹と別れて路地に入り、少し歩いて振り返ると、新たな展開になっていた。
「逃げたでしょ」
「逃げましたね」
「あの子は逃げるのよ」
家の人に挨拶して敷地に入らせてもらったが、やっぱりこうなった。台詞は取り残されたニンゲン二人が慨嘆しているところ。
とあるアパートの窓辺に猫がいた。貴重な1匹なので撮っておこうっと。
網戸の向こうで驚いた様子のキジトラ。この街は君の仲間が少なくて困っちゃうよ。
13km、4時間に及んだ散歩で出会った猫は、すべて出発地の長津田駅周辺にいた子たち。山の上の住宅街にも行ってみたが、その後の3時間あまりでただの1匹も見かけなかった。あまりにもバランスの悪い散歩で、気持ち悪くなって家に向かっていると、以前見かけたシルバー渦巻きが屋根の上にいた。
徒労感の強い散歩だったが、最後にこの子に会えて少しほっこりした。