二日間の休暇はリビングの座椅子に座ったまま、ほとんど何もせず呆けたように過ごした。明日の夜から再び天気が崩れることを考えると、猫を探しに行っておいた方が良かったかも知れないが、弱い偏頭痛が続いていて、どうしてもその気になれなかった。
今日になって体調はほぼ回復したが、あいにく仕事も始まってしまい、猫探しの散歩は夜勤前の真っ昼間。天気も上々で、ウッドデッキに出たサチコやマコちゃんが日陰で伸びているのを見ると、恐らく気温は楽勝で20℃を超えているものと思われた(あとで調べたらアメダス府中の正午の気温は23.8℃、最高気温は24.9℃だった)。
散歩コースに選んだのは北野から八王子まで。起伏の多い住宅街を5.9km歩いたが、天気が良すぎたせいか、見かけた猫の数はそれほどでもなかった。特に北野駅付近はからっきしで、目的地はともかく、出発地は片倉あたりにしておけば良かった。
家を出てすぐ、はっちゃんと黒煙ちゃんを見かけてカメラにも収めたが、SDカード異常のため記録されておらず、最初に紹介するのは八王子市内の高台で見かけた黒白から。
コントラストが高くて日陰の猫が見えない。空気が澄んでいるのは台風20号が通過していったからかな。19号と違って印象に残らない子だったな。
日陰で伸びるキジトラは顔馴染のカイトさん。眠いのでとても反応が悪い。
機嫌が良ければごろごろすりすりなんだけれども、それは次の機会に。
線路を渡って柳の花街へやって来た。猫置屋の敷地で涼んでいるのが3匹。
茶トラ白は臆病なので、距離を置いてこちらを見ている。以前より毛艶が良くなったようだ。
俺の故郷である函館の大門にも、ここによく似た柳小路という名の横丁があった。俺が高校生のころは飲食店や屋台がたくさん並んでいて、仕事帰りのサラリーマンなどで賑わっていた。俺はその横丁にあった王さんという中華料理店が気に入っていて、部活やデートの帰りによく寄ったものだった。一方、俺の父親も同じ横丁のおでん屋台が行きつけだったようで、仕事帰りに同僚と一杯やっている姿を見かけることがあった。高校の教員だった父に見つかると、俺たち親子だけでなく、同僚の教員を含めかなり気まずいことになるので、柳小路を歩く時は細心の注意を払ったものだった。とはいえ田舎のことなので帰りの汽車はみな一緒で、23:51発の札幌行き41列車では、下車駅の七飯までトイレに隠れていることが多かった。七飯に着いたら列車が止まらないうちにホームに飛び降りて、ダッシュで家へ先回りするのだった。あれから30年以上が経ち、父は死んだし柳小路の店も41列車もすべてなくなってしまった。
話が逸れてしまった。定点の猫駐車場を覗いてみると、車の隙間から大白斑のキジ白がこちらを見つめていた。
真ん中分けの大白斑は2匹知っているが、散切り頭は記憶にない。初めての子かなあ。
キジ白の記憶を引き出そうとして唸っていると、車の下から呼ぶ声が聞こえた。
奥まった目が憐れみを誘っているようで、こいつに鳴かれると、数粒のお土産を置いていかないわけには行かない気にさせられる。普段は割とたらふく食べているらしいんだけれども。