今日は長い前置きから。
知っている人は知っていると思うが、市井で一般的に猫と呼ばれているのは、ネコ科ネコ属ヤマネコ種イエネコ亜種に分類される動物で、ルーツとなるのは野生のリビアヤマネコだ。ただし、リビアヤマネコが進化したのではなく、家畜化したものがイエネコだ。
紀元前7,000年ごろ中近東から始まった農耕革命によって、人類は「そこにあるものを獲って食べる」だけの不安定な狩猟採集型の生活から、計画的に穀物を栽培することで食料を賄う農耕型へとシフトした。人類と猫との生活はそれに近い時期から始まっていて、約9,500年前のものと思われる墓から、人間と一緒に埋葬された猫の骨が見つかっている。鼠を捕って農作物を守るだけでなく、疫病の抑止にも役立った猫は、古代エジプトなどで早くから神格化されていたようだ。
恐らくリビアヤマネコは、最初、ただそこに鼠がいるから里に下りたのだろう。しかしそのうちに、鼠害に悩む人間の方から猫を招くようになり、餌を与えられ、次第に距離を縮めていったのではないかと思う。
ところで、多くの野生哺乳類の被毛は一本一本が黒と褐色の層になっていて、これをアグチパターンと呼ぶ。リビアヤマネコもアグチパターンの毛色を持っていて、これはイエネコで言うところのキジトラだ。キジトラの毛色は「野生型」と呼ばれていて、その遺伝子型はすべてのイエネコの毛色の基本型になっている。すなわち、キジトラ以外の猫は、毛色に関する遺伝子のどこかが変異しているということだ。突然変異で生じた風変わりな毛色は、野生であれば不利になって淘汰されただろうが、人間との生活を始めたイエネコにおいては、特に不利益を被ることもなく生き残ったものと思われる。あるいは、むしろ人間の方で、そうした毛色を稀少なものとして珍重したかも知れない。
前置きが長くなってしまったが、俺は猫の毛色の遺伝に興味があるので、本物のリビアヤマネコを一目見てみたかった。ネットで色々な動物園を当たってみたが、なにしろ見た目がキジトラだから客寄せにもならず、展示しているところが見つからない。色々探し回った末、ようやく横浜のとあるペットショップで飼育展示していることを知ったので、早速行ってみることにした。見学と撮影の許可は事前に取っておいた。
家を出て2時間後、まずは金沢文庫の駅から散歩スタート。この辺りは何度も来ていて土地鑑があるので、駅の周りを適当に歩いていると、広い駐車場で寛いでいるのがいた。
「今日は君のルーツを訪ねて来たんだよ」と一歩前に出たら逃げた。何だよー。
通勤時間帯を避けて来たので、散歩開始は11時近く。もうお昼寝タイムに入っちゃったかな。
早朝降っていた雨が止んで曇っていたが、しばらく歩いているうちに青空が見えてきた。車の下に1匹いるね。
ちょっとヨレ気味のお婆ちゃん猫。一通り遊んで車の下に戻って行った。
本来はもっと広い部屋にいるそうだが、体調があまり良くないとのことで、今日は療養部屋に入っていた。店長さんと思しき人がついてくれて、その間ガラス窓を開放して写真を撮らせてくれた。見た目はただのキジトラだから、普通の動物園じゃ客受けが悪いのだろうが、イエネコを知る上で欠かせない存在ということで飼育展示しているそうだ。ちなみにここは「購入できる動物園」がコンセプトのペットショップだが、リビアヤマネコは展示のみで販売はしていない。もし飼えたとしても、一緒に寝たりなんかしたら、食べられちゃって翌朝骨だけになってたりして。
かなり暗い場所だったので、写真はみんなブレまくり。資料としても不十分なので、体調が良くなったころを見計らってもう一度行ってみる(こちら)。
親切な店長さんにお礼を言って店を出て、帰りは南武線を回って西国立で途中下車。いつもの猫路地に寄ってみると、塀の上で怒りんぼの三毛が寛いでいた。
七三ロードにも寄ってみた。アパートの敷地で寝ているのは母だな。
蒸し暑くてだるいねえ。動画はこちら。