チケットソルジャー


甲府市の猫

「取れましたよ! ご希望のシングルデラックス、喫煙室になりますけど取れました」
「うおー」
「次候補のシングルツインやシングルも取れてますけど、どうなさいます?」
「いやもうシングルデラックスで! 喫煙でも何でもいいです!」
「私もマルスでシングルデラックスを取ったのは初めてですよ。いやー良かった」
「10時打ち、受けてくれてありがとうございます。ホント嬉しい!」
 今日の散歩は中央本線の酒折をスタートし、身延線の南甲府を目指して6.1km歩いたのが前半戦となった。酒折というのは甲府市内にあるJR東日本に属する駅で、一方の南甲府は同じ甲府市内でもJR東海に属している。なぜ唐突にそんなところへ行ったのかというと、端的には3月に使う予定の切符を買うため。今度の台湾猫旅は時間と費用を圧縮するため、もともと別企画だった四国猫旅(の一部)をくっつけていて、その旅程の最初に乗るのが高松行きの寝台特急「サンライズ瀬戸」というわけ。俺が寝台列車を利用するのは2007年2月以来で、帰省先の函館から上野まで「北斗星」に乗ったのが最後なので17年ぶりということになり、昨今の寝台列車の趨勢からすれば恐らく今度が乗り納めになる。猫探しが終われば大きな旅行をする機会もなくなるので、サンライズ瀬戸の寝台券は切実にゲットしたかった。
 あったことを全部書くと長くなるのでまずは猫を。8:10の散歩開始から7分で1匹目だから出だしはいい感じ。
甲府市の猫

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 きょとんとしてこちらを見つめるキジトラ。お鉢が空っぽなので朝ご飯待ちかな。
甲府市の猫

 日曜の朝の住宅街はまだ静かで、朝帰りと思しき猫を見かけるくらい。
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 きれいな毛並みの白さん、少しだけモデルになってくださいな。
甲府市の猫

「えー、どうしようかなー」
甲府市の猫

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 俺の指は辛うじて及第点?
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 曇って暗い朝だから寝坊助もいる。毛色も白と黒で対照的。
甲府市の猫

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「毛色は関係ないだろう」
甲府市の猫

 道路脇の塀の上で黒白がちょこなんとしていた。
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 ……しかし、瞬時に逃走。隣の路地からもう1枚撮ってみたけど少し遠かった。
甲府市の猫

 その隣の路地というのが猫たちのねぐらだったようで、見るからに偉そうなのが高みからこちらを見下ろしている。
甲府市の猫

甲府市の猫

 毛の長さと序列に相関はないと思うけど、ニンゲンの目には偉そうに映るんだよね。
甲府市の猫

 ティッピングの生じた特徴的な毛色。このレベルだとスモークというよりシェード(shaded silver and white)かなあ。
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 頭上の長毛を撮り終えて元来た方を振り向くと、濡れ縁の茶トラが一部始終を眺めていた。
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 この路地、ほかにもたくさんいそうだけど、そろそろ切符を買いに行かなきゃ。
甲府市の猫

 JRの指定券の発売日は乗車日の1ヶ月前(同日日付)の10時から。サンライズのような夜行列車は始発駅を発車する日が起算日となるが、10時ちょうどに対応してもらえるかは駅に行ってみないと分からない。少し早めに行ってこちらの意図を窓口に伝えておく必要もあるし、もし対応してくれるとなれば窓口側にも準備がある。当初の予定では30分前の到着を目処にしていたが、先ほどの猫路地で足止めを食ったので15分前ぐらいになりそうだった。
 こちらが慌てていると、猫はそれを敏感に察して警戒する。3匹目の長毛は近寄る素振りを見せただけで逃亡。
甲府市の猫

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 南甲府には9:49に到着。結果的には第一希望のシングルデラックスを買えたわけだが、10時ちょうどの申し込み対応はJRの正式なサービスではなく、あくまで現場駅員の厚意である点に注意しなければならない。
 人気のある列車は発売開始と同時に売り切れることも少なくなく、買える確率を上げるためには、117の時報を流しておくなどして、10時ちょうどに申し込みの操作をしてもらうことが効果的だ。しかしJR東日本はみどりの窓口の閉鎖を加速させていて、自宅から最も近かった府中本町も2022年に閉鎖されているし、青梅線や五日市線に至ってはすべての駅からなくなっている。立川や八王子には設置されているものの、総数が減っているので混雑がひどく、面倒な依頼ごとをするのは気が引ける。そもそもJR東日本というのは「みどりの窓口」を商標登録までしておきながら、相次ぐ閉鎖によって利用者に多大な負担をかけており、そのような会社に金を使いたくないという気持ちがある。すべての有人駅で指定券が買えるJR東海エリアまで出かけたのは正解だったし、親切に対応してくれた窓口氏には感謝しかない。
 散歩の方は後半戦の南甲府〜甲府(6.5km)に入ったが、切符で運を使い果たしたのか、見かけた猫は2匹に留まった。
甲府市の猫

 あらま、また長毛だ。武田信玄が長毛猫を好んだとか?
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 三角おにぎり然とした黒白は一歩前に出た途端、見えなくなるまで逃亡。
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 おーい、逃げるの早すぎー。
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 最後の白は目が合うなり逃走を図ったものの、呼びかけに応じて止まってくれて、何とかいい感じに散歩を終えることができた。そして今日対応してくれた窓口氏と俺は言わばチケットソルジャー、鉄道職員と想いを共有するのは初めての経験で面白かった。
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