一青妙の「私の箱子」というエッセイを読んでいて、俺にも開けなければならない箱子が2階の書斎にあることを思い出した。その箱に入っているのは父が高校教員として赴任してから退職するまで使っていた何十冊もの手帳。そこには学校業務に関することはもちろん、父の性格からすれば日々の出来事や雑感が事細かに書かれているはずで、後年の父を非常に苦しめることになる母の病気や俺の素行に対する思いも恐らく含まれている。父が死んでから7年近くの間、怖くてその箱を開けることができずにいて、最近は存在すら忘れかけていたが、俺には自分の人生に決着をつけるためにやらなければならないことがまだたくさん残っている。もっと早いうちに向き合うべきことを先送りにしてきたので、これ以上猫散歩に時間を割くことも難しくなってきている。ちなみに一青妙・一青窈姉妹の母方の故郷は石川県中能登町で、そこには一青という名の集落(大字)が存在する。先日の地震が起きるまで、俺はこの集落を始め、穴水、七尾、輪島といったコースを旅したいと思っていたが、一青はともかく、それ以外の街はとてもそんな状況ではなくなってしまった。猫旅としてはこのまま行けずに終わることになるが、機会があればただ歩くだけでもいいから行ってみたい。
今日の散歩は近場の分倍河原~多摩霊園の6.3kmを1時間半あまりかけて歩いてみた。途中、府中競馬正門前~東府中は猫希薄地帯で、いつもは京王競馬場線の電車に1駅だけ乗っているが、今日はシェアサイクルを利用して移動した。小銭をケチるつもりはないが、この区間を電車に乗ると140円かかるのに対して、シェアサイクルは130円(最初の30分まで)。電車は日中20分毎の運転なのに対して自転車は即時利用可だから、とても使い勝手がいいのである。
分倍河原を正午に出発し、最初に遭遇したのはモノクロ姐さん。いつものアパートを覗いてみたものの最初は見当たらず、諦めて次へ行こうと思ったところで顔を出した。
あまり懐いてはいないので触るのは無理。なぜ鳴くのかよく分からない子でもある。
見かけるのは去年12月以来。天気が良ければしゃんとしている子だけど、今日は雨雲が近づいて暗くなる一方だからなあ。
こちらに気づいて逃走モードへ移行。いつでもフェンスをくぐれる態勢に。
たまに見かける手ぶら撮り逃げ野郎と気づいたのか、敷地の中で逃げ切らずに留まっていた。こいつは毛並みがいいので近所の飼い猫だと思う。
予報では15時ごろから降り始めるとのことで、やや急ぎ足で歩いていると、通りすがりの民家の庭で黒白を発見。いつものように性格の悪いアングルだけど、これは分かりやすいでしょう。
「僕たちには見つけてもらうという選択肢もあるんだ。どっちがいいかは交配を重ねて行けばいずれ分かるよ」
茶トラ白は落ち葉に紛れたりするから、見つかって欲しくない系?
警戒心の強い茶トラ白は近寄ると庭木の陰に隠れ、諦めて離れると出てくるを繰り返し、10分経って俺が先に音を上げた。
あれはここらでたまに見かける長毛黒。この距離ですでにかなり迷惑そう。
こいつに出会ったのはちょうど3年前の4月17日。そろそろ毛刈りしてもらってもいい時期だと思うが、面倒を見てくれる人がいるのかいないのか、まだ冬毛が伸びたままになっていた。今日の猫は以上。