24日夜から昨日にかけて「三度目の正直」を信じて御蔵島にチャレンジしてきたが、今回も軽く弾き返されてすごすごと舞い戻ってきた。
最初のチャレンジは去年10月。伊豆諸島を巡る2泊3日の猫旅初日、羽田から全日空で八丈島へ飛び、竹芝行きの客船に乗り換えてまんまと上陸には成功したものの、滞在時間が真っ昼間の2時間しかなく、肝腎の猫を見つけられずに玉砕。二度目はその2ヶ月後、事前に宿も押さえて21時間の滞在時間を確保し、万全の態勢で臨んだにもかかわらず、寒冷前線通過に伴う暴風雨の直撃を受け、大島まで行っておきながら上陸を果たせなかった。そして今回は竹芝から東海汽船で直接御蔵島を目指したが、海況が悪く港自体が閉鎖されており、目の前に見えている島影を無常にスルー。船はそのまま八丈島まで行って折り返したが、復路もやはり寄港できずにスルー。結局その日は8ヶ月ぶりの三宅島で猫を探すことになった。今回は最後のチャンスということもあり、度重なる欠航にもめげずにプラン変更で何とか対応しようとしたが、翌朝の東海汽船も3時半には御蔵島欠航が決まっていて万策尽きた。行きにくいことで有名な青ヶ島には何の苦労もなく一発で行けたのに、一次離島の御蔵島でこれほど苦労するとは思ってもみなかった。こんなことなら最初のチャレンジで上陸できた時にもっと粘っておけば良かった。
そんなわけで24日22:30、竹芝桟橋を出港した東海汽船「さるびあ丸」は途中、三宅島に寄港したあとは時化で大きく船体を揺らしながら八丈島へ直行。船酔いでげっそりした体を休めたくても、御蔵島を乗り越した客は下船が認められず、そのまま折り返して三宅島へ戻り、そこでようやく陸に上がることができたのだった。時刻は25日13:20、竹芝で乗船してから15時間近くが経過していた。
この日は三池港に着いたので土地勘のある坪田集落までは歩いて行ける。もともとこの日は早朝から御蔵島に滞在し、お昼前のヘリコプターで三宅島に来る予定だったので、午前中の予定が崩壊したこと以外に影響はない。小ぢんまりした空港を通りすぎ、去年10月以来の懐かしい風景を眺めながら集落へ向かったが、風がかなり強いせいか前回見かけた猫はことごとく不在。ようやく1匹目に遭遇したのは船を降りてから1時間後のことだった。
道路を横断しに出てきた黒。俺と目が合って固まっちゃったところ。
めっちゃ警戒しているけど逃げはしない。たぶん道路向かいの家の子だから人慣れはしているはず。
ここは三宅島でいちばん印象に残っている猫拠点。去年来た時にフォーン白というとても珍しい毛色の人懐っこい子に会ったんだけど(こちら)、今日はどこかへお出かけかな。
今夜は近くの民宿に泊まるので、もう少し近所を散歩してからまた覗いてみようかな。
……というわけで散歩続行。2000年の全島避難から2005年の帰島を経て、人口が半減した島内には空き家や空き地が多いと聞くが、今はその多くが緑に飲まれていて、意識せずに歩いているとなかなか気づかない。ただ猫に関しては式根島のように野猫然としたのは多くなく、彼らの傍らにはたいてい人の住む家がある。
案の定、道路脇に民家があって、野良仕事の婆さんに「こんにちは」と挨拶を交わすも、猫は警戒を緩めない。
怖がっているというより、純粋にびっくりしているような顔つき。まあ他所者はこんなところまで来ないだろうからな。
沿岸は強風が吹きつけているが、古い路地は防風林が風を遮ってくれるので、人は歩きやすいし猫も高みで涼しい顔をしている。山がちな離島の民家は敷地の山側を擁壁に、海側を植え込みにして風を防いでいるケースが多いようだ。
そして平屋で寄棟屋根が多いのも風をいなすためだろうか。玄関先では2匹の猫が寛いでいる。
いくら呼んでも近寄ってこないので、諦めて立ち去りかけたら、庭で寛いでいるのがもう1匹いた。
この子は以心伝心が通じるみたい。お腹の膨らみはおめでたかな。
そうこうしているうちに黒白も少しだけ近寄ってきていた。猫って基本的に好奇心が強いよな。
ここは去年10月にも猫を見かけた草むら。もしかしてと思って覗いたら3匹の猫がいた。
答え合わせは左から順に。これは俺もいちばん最初に気づいたけど、去年同じ場所で見たのとは別猫だった。
真ん中がいちばんムズい。毛色をちゃんと確認したかったけど、一歩前に出たら逃げてしまった。灰白かな。
そして右端の三毛はちょっと変わった毛色。もう少し近寄りたいなー。
階段を駆け下りて逃げかかったところ、プスプス言って何とか思い留まってもらった。この三毛は恐らく茶トラ+チョコレートタビー+白という組み合わせで、去年6月に下板橋で見かけたチョコレート二毛と双璧をなす激レアな毛色。これは普通のキジ三毛(茶トラ+キジトラ+白)の遺伝子型のうち、黒の色調に影響するB遺伝子座の遺伝子型が野生型のB-からbbまたはbblに変異したもので、被毛の黒い部分がチョコレート色に変わる。ただ、ソリッド(単色)のチョコレートならぱっと見ですぐに分かるとはいえ、タビー(模様)となると一本一本の毛に濃淡を伴うし、珍しすぎて比較対象がないので判定が難しい。もしかしたらチョコレートタビーではなく、もう少し色の薄いシナモンタビー(B遺伝子座が最劣性のblbl)かも知れないし、もしそうならこの近所にフォーン色の猫が存在することを説明しやすい。というのも、フォーンはシナモンに希釈遺伝子ddが作用してより薄まった毛色であり、三宅島に希釈遺伝子が濃厚に存在することは去年すでに分かっているからだ。
紙幅が尽きたので今日のところはここまで。次回の記事ではそのフォーン猫に再会すべく、先ほど立ち寄った猫拠点へ戻る道すがらに見かけた猫たちを紹介する。
ちなみに今回の猫旅は2022年7月にスタートした「東京都島嶼部猫散歩」の続編であり、伊豆諸島の自治体のうち神津島村、新島村(新島、式根島)、利島村、八丈町、青ヶ島村、三宅村、大島町の順に制覇したあと、今回は最後まで残った御蔵島村でみたびの敗退を喫したという経緯である。東京都にはほかにも小笠原村というラスボスも存在するがもう諦めた。シリーズ前回の記事はこちら。