最高気温34.1℃と猛暑だった今日、夜勤の前に猫物流に寄ることにしたのは、虫の知らせだったのかも知れない。
汗だくになって現地に着いてみると、廃品回収業者がオフィスの什器を運び出しているところだった。4月下旬に来た時は普通に営業していたが、いつの間にか廃業していたのだった。「猫ちゃんなら床下にいますよ」とのことだったが、この暑さでは出て来る見込みは薄い。日を改めようかとも思ったが、夜勤明けの明日またここへ来るにしても、到着するのはお昼近くになるし、明後日も夜勤なので、涼しい朝のうちに来られるのは最短でも6月5日になってしまう。下手すれば明日にも社屋の解体が始まろうという時に、そんな先まで待っていられないので、日が傾いて涼しくなるまでその場で粘ることにした。
日陰の少ない住宅街で、暑さにやられて死にそうになりながら待つこと70分。什器の搬出が終わって人気の失せた玄関先に、茶トラ白の子供が出てきた。
16時を過ぎてやや涼しくなった気がするけど、まだ日なたには出てこない。
「今年は冷夏になるって言ってたじゃないの。誰よ、そんなウソ言うの」
とはいえ日が傾くにつれて気温は下がり、風も涼しくなってくる。三毛は向かいの苗畑へ遊びに行った。
虫が増えるこの季節、様々な飛翔物にいちいち反応して落ち着かない三毛。
猫物流の2匹の子供たちは両親がデートしているころから知ってるから、最後に一目会っておきたかった。元気そうで良かった。
三毛の寛ぐうしろの隙間には父がいた。いつもなら騒ぎを聞きつけて出て来るが、今日は引っ込んだまま動かない。色々と風雲急を告げているのが分かっているのかもなあ。
利発そうな茶トラ白。もう会えないと思うけど、元気で頑張れよ。
猫たちと別れを惜しんでいるところへ猫物流の社長さんが現れた。社屋を撤去するまでの間、ここでご飯を食べさせているそうだ。
美味しい猫缶をたらふく食べて、満足そうな娘。いいオス見つけなよ。
重い病気を抱えながら猫物流に流れ着いたヨレヨレ君は、社長室で看取られて最期を迎えた。あいつはここの猫たちの象徴だったような気がしている。ここで死んだ猫たちの墓には、いつも新鮮な生花と猫缶が供えられていた。猫のパラダイスだったこの場所は、あと1週間ほどで更地になり、茶トラ白と三毛の家族は新しい土地で生活が始まる。さよなら、猫物流。さよなら、猫たち。