「ここから川に降りられるのかな」
「すぐそこだ。そこの山道を下りて行けばいいのさ」
野良仕事の父っつぁんに教えてもらって軽い気持ちで入った山道は道と呼べる代物ではなかった。朝露に濡れた地面は滑りやすく、生命の危険を感じながら崖のような斜面を数十m降りて登って、バスが来るまでの1時間半のうち50分近くを費やした上に、脚力も大方使い果たしてしまった。杣人の言う「ちょっとそこまで」が、一般人とっては大変過酷なことだということを学んだ。
今日の猫関係業務は散歩などという生やさしいものではなく、あまりに疲れたので帰って来てからしばらく寝込むほどだった。行き先は奥多摩のさらに奥の二つの集落。朝5時半に家を出て現地に着いたのは7時前。山間に位置するためまだ日の差さない駅前には何匹かの猫が出ていた。
道路の反対側で三毛を見つめる茶トラ白。ほかにも何匹か見かけたが、バスの発車時刻になったので断念。
バスに揺られること約30分。最初に訪れたのは某巨大鍾乳洞で有名なとある集落。初めてとなるこの集落で、物見遊山のつもりで遥か崖下の川まで降りたのが失敗だった。降りる時は膝が笑い、登る時はケツが笑い、全身ヨレヨレで見つけたのがこの1匹。
最初の集落には1時間半ほど滞在し、バスに乗って次に訪れたのは4ヶ月ぶりとなる猫集落。下界ではついに真夏日となった今日、標高560mほどの山間もそれなりに暑く、いつもならたくさんの猫が出ている平場は閑散としていた。
隅っこからこちらを眺めているのは見覚えのある2匹。もう動きたくなかったので、動画でお茶を濁してみた。
丸太に腰かけてぼけっとしていると、ほかにも何匹かの猫が通りかかった。こいつは初めて見るかなあ。
次のバスまで2時間ほどあるので、しばらく休んだあと下の段に顔を出してみた。遠くて分かりにくいけど猫民家に1匹出ている。
とても驚いている風な茶トラ白。ほかにもたくさんいるはずの猫たちは、暑いせいかどこかへ隠れてしまって出てこない。
猫にとってはこんな坂どうってことないと思うんだけど、暑いせいか休み休み登ってる。
今日は農協さんの移動販売の日。平場に集まる人たちから少し離れて、終わるのを待っているキジ白。
時刻は間もなく11時。今日は来るのが遅かったせいか、あんまり会えなかったなー。紅葉の季節になったらまた来てみようっと。
再びバスに乗って氷川へ下りてきた。駅の手前で途中下車して街なかをぶらぶらしていると、日陰に佇む茶トラを発見。
こいつもたぶん会ったことある。去年の秋に2匹でつるんでいた片割れだと思う。
紙幅が尽きたので、人懐っこいはなちゃんの様子は動画でどうぞ。それと、体がガタガタなので、たぶん明日はお休みすると思う。