眼鏡が合わなくなってきたせいか、遠くにあるものが見えにくくなっている。年を取って老眼になったせいか、近くにあるものも見えにくくなっている。要するに見えやすいものが何もない。
そんな状況で猫を探しているため、遠くにある物体を猫と勘違いして糠喜びする事例が増えている。代表的なところでは、草むらに打ち捨てられたコンビニ袋が白猫に見えてしまうなどだが、これは何度もやられているからもう騙されない。同様に注意すべきものとして、木の切り株、土嚢、雑巾、漬物石などが挙げられる。先日などは八百屋の店先に並んだパイナップルがキジトラに見えて、俺はノイローゼなのではないだろうかと悲嘆に暮れたこともあった。その一方、塀の上を移動する白い物体を見て、「動いているのだから間違いなく猫だろう」と近寄ったら、塀の向こうを歩く白髪の婆さんだったこともあった。背が低くて、頭だけが塀の上に出ていたのである。動いているものでさえ見間違えるなら、俺はいったい何を信じたらいいのだ。
……まあそんなことはどうでもいいんだが、今日は夜勤ということで、出勤前の散歩は13時半ごろのスタート。八王子から片倉までを1時間あまりかけて歩いてみた。割と頻繁に来るようになったコースなので、いつもとは少し違う道を通ってみたが、そんなことでたやすく見つかるほど猫道は甘くない。最初の1匹を発見したのは、諦めていつもの道に戻ってからだった。
もしかしたらトイレ中だったかも知れない、失礼なことしたなーと思いながら、登ってきた坂道を見下ろすと、向かいの家の屋根にもいた。ここでは8月にも猫を見かけた。
2匹の茶トラと別れてからもしばらく急な上り坂が続く。果たして俺は屋根の上でキスをしたことがあっただろうかと考え込んだまま分水嶺を越え、そういえば真夏のトタン屋根の上でそんなことがあって、二人して足の裏を火傷した若い日を思い出したところで次の猫発見。
かなりヨレてしまって気づかなかったけど、7月初めに会ったキジ白だった。ずいぶん痩せちゃったなあ。
近寄って来てしょんぼり。ごめんよ、今日は何も持っていないんだよ。
今日このコースを選んだのは、今月初めに見かけた駐車場の猫たちに会いたかったから。いるかなーと思って目隠しフェンスの下を覗くと、真正面で三毛がお饅頭的に寛いでいた。
前回は爪でやられたけど、子猫なら大丈夫。しばらく指をおもちゃにして遊んだ。
山田川の河岸段丘を少し降りると、民家の敷地に茶トラがいた。今日は茶猫率が高いな。
いつもならこのあとは片倉駅へ直行するところ、今日は時間に余裕があったので、川沿いに少し遠回りしてみた。とあるアパートでキジトラ発見。
コンクリートブロックが積まれているのは、もしかして猫ハウスかな。
今日は一日中薄曇りが続いて、夕方の街並みは霞んだような色合い。三連休が終わりに近づき、家路につく人々に交じって川沿いを歩いていると、民家の裏庭に茶トラ白がいた。
こいつは4月にも会った子。その時とまったく同じパターンで近寄ってきた。
薄日が気に入ったのか、その場に佇んだまま。今日はごろーんはなかった。
片倉駅に着いたのは14:40。いつもチェックする川べりの猫拠点には黒白がいて、道行く人を眺めていた。