一昨日の夜から昨日にかけて、気紛れを起こして山形に行ってきた。なぜ山形なのかは自分でもよく分からない。できれば岩手か秋田に行きたかったが、遠すぎて時間とお金がかかるし、仙台だと都会すぎて散歩コースを絞り込めない。少し歩けば知った気になれる程度の都市ということで、何となく選んだのが山形だった。
かつてなら上野から急行「津軽」に乗って行くところ、今となっては夜行列車は風前の灯で、早朝から現地入りできる交通機関はバスしかない。だいぶ前、妻と青森行きの夜行バスに乗って、体がガタガタになったことがあるので、着くなり疲れたんじゃイヤだなと思ったが、今回は3列シートで、前や隣の席が空いていたので、予想していたよりは快適だった。
新宿を出発したのは23:30。平日前夜だったせいか道路事情が良く、途中で何度も時間調整の停車をしながら、山形駅前に着いたのは定刻の5時半ちょうどだった。
コンビニでお握りを買って食べたあと、まずは駅前の繁華街をぶらぶらしてみた。朝帰りと思しき酔っ払いが大声で談笑していて、久しぶりに聞く山形弁を懐かしく思ったりもしたが、本気で話されると、何を言っているのかさっぱり分からない。台湾で感じた心細さを思い出しつつ、日陰の路地に差しかかると、暗いところでキジトラがシャカシャカしていた。
近寄ってよく見たら、イエローとゴールドのオッドアイだった。このパターンは割と珍しい。
俺が近寄ったせいで小鳥は逃げてしまい、誰もいなくなった原っぱを名残り惜しげに見つめる黒。
茶トラはのほほん顔。山形は盆地だから、日中はかなり暑くなると思うけど、まだ6時半すぎなので日差しが心地良いレベル。
サバトラは毛繕いに忙しい。ここの猫たちは逃げるでもなく、そう人懐っこいでもなく、要するに無関心な感じ。
……と張り切って歩いてみたものの、地方都市の通勤時間帯は、街の規模に対して車がやたら多く、落ち着いて歩いていられない上に猫も出てこない。予定では山形駅から北へ2駅歩いて羽前千歳まで行くつもりだったが、歩けば歩くほど住宅がまばらになって、ドツボにはまりそうな気がしてきたので、途中の北山形から仙山線に乗って、某有名山岳寺院に行ってみることにした。仙山線には何度も乗ったことがあり、車窓からお寺を見るたびに一度登ってみたいと思っていたので、この機会にチャレンジすることにしたのだった。最初の散歩で10km以上歩いたこともあり、1,000段以上ある階段を上り下りできるか不安だったが、思っていたほどきつくなく、20分ほどで奥の院に到着。売店のお姉さんに「こごらにねごいねすか(山形弁チック)」と尋ねたら、下に何匹かいるというので、急ぎ足で下りてきた。そして見つけた。
かの松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蟬の声」と詠んだこの地だが、その後、芭蕉は猫を題材にした句をいくつか残している。今から300年以上前、ここに猫はいたのであろうか。
視線を追ってみたけど、何を狙っているのか判然としない。時折飛び跳ねる池の鯉なのか、それとも……、
よく分からないまま、ほとりから離れて歩き出した直後、背後から「にゃー、どぼーん」と派手な音が聞こえた。夢中になりすぎて池に飛び込んだらしい。
それでも視線は対岸に向いている。よほど気になっているんだな。一通り毛繕いを終えたあとは、再びほとりに戻って探検していた(動画あり)。