西武新宿線の南大塚駅から分岐し、入間川左岸の安比奈新田に至る、延長3.2kmの貨物線がある。西武安比奈線という名のこの路線は、もともと入間川の川砂利を搬出するために敷設されたものだが、環境破壊が問題になり川砂利採取が禁止されたため、1967年ごろ運転を休止し、レールや架線柱などが放置されたまま現在に至る。かつて西武鉄道にはこの路線を使って車両基地を増強する計画があり、地元でも旅客線としての復活を期待していたようだが、経済の低迷や少子化で車両基地計画が白紙になり、50年もの間休止状態だった安比奈線は、今年11月末をもって正式に廃止されることになった。
廃線歩きが好きな俺は、7年前にこの路線を歩いたことがあって、道中2匹の猫に遭遇した(興味のある方はこちら)。猫が目的じゃなくても遭遇するくらいだから、集中して探せばもっと会えるかも知れないと思い、夜勤明けに寄り道してみることにしたのだった。
仕事を終えたのは少し早めの8:15。最初は入間川を渡って川越線の笠幡まで歩くつもりでいたが、予報に反して天気は曇りで気温も低く、恐らく10km以上ある道のりを歩き通す自信がなくなった。入間川街道の先は原野のようなもので、スーツと革靴では難儀するのが目に見えているし、途中でヘタレても交通機関がない。全線踏破は次の宿題にすることにして、市街地を少しだけ歩いて帰途についた。
しかし、俺は猫に関しては割とツイているらしい。ごく短い散歩にもかかわらず、沿線で何匹かの猫に会うことができた。
歓迎されていないことがひしひしと伝わってくる。ここから先は原野だし、今日は撤収しようかな……。
くぐもった声でごろごろ鳴いている。もう立春を過ぎて、恋の季節だもんなあ。
最後に会った子の毛色が微妙で、悩みながら帰ってきた。たぶん灰白のスモークあたりだろうと目星をつけたところで、トラ子さんに遭遇。
いつも似たような写真ばかりだが、表情はその時々で違う。ある学説によれば、猫には21種類の表情があるそうだが、耳、髭、瞳の組み合わせから考えれば、そんなものではないはずだ。
値踏みするかのような目で見ているな。このケモノチックな目つきがたまらない。
安比奈線は天気のいい日を選んで再訪してみる。なお、路線名の安比奈線は「あひなせん」、地名の安比奈新田は「あいなしんでん」と読むので念のため。