今回の台湾猫旅は4泊5日のうち前半の2日半が雨で、しかも旅行中を通じて気温が8~15℃程度と低く、インフルエンザが治ったばかりの身には辛いものがあった。特に初日(8日)は台湾全島が雨雲に覆われていたため、当初予定していた瑞芳や基隆を諦め、多少雲の薄そうな南投県を訪ねてみたものの、雨は依然として強く、雲は厚くなるばかり。台北から台中まで高鉄で移動し、乗換駅の新烏日から台鉄の区間車で二水を経由し、目的地の車埕に着いた時には15時半。もはや写真を撮ろうというような明るさではなくなっていた。
車埕というのは南投県水里郷(郷は日本の村に相当)の山中にある集集線の終着駅で、有名観光地の一つである日月潭からも近い。もともとここは翌9日に時間があれば立ち寄るかも、といったレベルで考えていた場所だった。駅の周囲には極めて小さな集落しかなく、猫を探すというより、支線を走る古い気動車に乗りたいという、鉄オタとしての欲求を満たすためだった。土砂降りも厭わない台湾人観光客に混じって集落を散策してみたが、どこもかしこもずぶ濡れで、猫なんか出てきそうな雰囲気ではない。もし俺が猫だったら、こういう場所で雨宿りするかなと思い、とあるレストランのオープンテラスを覗くと、果たして2匹の猫が所在なげにしていた。
呆れたようにこちらを見つめるキジ白。真不巧、今天下雨(今日はあいにくの雨だね)。
もう1匹は壁に張り付いたまま出てこない。暗いから目がまん丸。
初日に会えた猫は以上の2匹のみ。その日は虎尾という雲林県中央部の鎮(鎮は日本の町に相当)に泊まった。
翌9日も雨の勢いは衰えず、ずぶ濡れになりながら虎尾の街なかを一回りしてみたが、1匹の猫も見かけなかった。虎尾というのは鉄道すら通っていない旅行者にとっては不便な街で、にもかかわらずここを猫探しポイントに選んだのは、人を乗せない鉄道なら通っているからだ。つまり虎尾には台湾糖業の精糖工場があって、今や台湾でも唯一となったシュガートレイン(サトウキビを運ぶ軽便鉄道)が現役で活躍している。列車が運転されるのは収穫期の12月~3月とのことで、あわよくばサトウキビを満載した列車と猫を一度にカメラに収めようと目論んだわけだが、激しい雨のため、そのような場面を拝める可能性はなかった。
旅先で天気に恵まれないことはままあるが、徐々に下がっていくモチベーションを何とかしないと、残りの4日間も持たずに途中でイヤになりそうだった。雨雲レーダーと睨めっこしつつ、斗六から高雄行きの自強号(特急列車)に乗って南下し、車窓から見える道路の路面が乾いてきたところで途中下車。そこはすでに高雄市内で、駅名標には岡山と書かれていた。
駅の行李房で30元を払い、リュックを預けて、散歩を開始したのは正午すぎ。時折わずかにぱらつく雨粒がいちいち気に障ったが、猫の方はほどなく見つかった。
水飲み中のキジトラ。ほかにも何匹か見かけたが、どれも警戒心が強くてダメだった。
逃げた先には仲間がいたが、一歩踏み出したら逃散霧消。この辺を根城にする悪のグループだなきっと。
黒はめっちゃ警戒モード。すでにだいぶ逃げられている。なお、何気に1匹増えている点に注意。
のほほん顔のキジトラがモデルになってくれた。お礼に日本製高級カリカリを進呈するよ。
川べりの猫たちと別れ、街なかを行く。曇りの日は猫の行動が拡散しがちだが、台湾は亭子脚(アーケード)があるお陰で割と見つけやすい。廃品回収業と思しき店先にキジトラ模様の猫がいた。
しばらく眺めているうちに、それぞれ違う方向へ巡回に出て行った。
岡山散歩はもう少し続くが、紙幅が尽きたので今日はここまで。明日から仕事に復帰するので、台湾の猫たちは普段の猫散歩の合間を縫って紹介することになる。5日間の旅で出会った猫は114匹で、12回ぐらいに分けないと全部載せられないと思うので、終わるまで2ヶ月かそれ以上かかるかも知れない。まあ一つ気長にお付き合いください。