小学生のころ、俺は北海道上磯町(現在の北斗市)中野通の大野川近くに住んでいた。この川はかつて大変な暴れ川で、古い航空写真を見ると、ある時はくねくねと蛇行し、またある時は多くの三日月湖を従えた直線的な流路に変わり、年度の異なる数葉の写真を見るだけで、堆積、蛇行そして氾濫を繰り返していたことがよく分かる。なぜそのような危険な場所に住んだのかというと、親の勤め先の職員住宅がそこにあったからで、河川改修が未整備だった当時、台風などで増水すると生きた心地がしなかった。近所には国鉄江差線(現在の道南いさりび鉄道線)の大野川橋梁と並行して歩行者用の簡素な木橋が架かっていて、川が増水するといとも簡単に流された。小学校高学年の時に一度流されたことは覚えていて、その時さして驚きもせずに「またか」と思ったので、6年間で3回くらいは流されたのだと思う。この時代、ひとたび自然災害が起こると多くの犠牲者が出たが、時が経つにつれてその数は急速に減っていった。もちろんそれは各種防災工事が進んだからであろうが、加えて通信技術の発達によって情報連携が迅速化したからでもあるし、人々の防災意識が高まったことも大きい。今回の台風で犠牲になった人は気の毒だったが、あの大都会であれだけの猛威を振るって死者11人というのは、奇跡的なのではないかと個人的には思う。
一方、東京ではそれなりに風雨が強かったものの、街の猫たちは吹き飛ばされもせず元気にしていた。今日は久しぶりの夜勤だったので、台風一過の南風により33.6℃という高い気温に晒されることになったが、湿度が低かったのであまり辛く感じこともなく、4.3kmの散歩道を踏破できた。最初の猫は猫ヶ丘から。
湿度が低くて助かるのは、汗をかいて体温を下げるニンゲンだから。猫はやっぱり日陰だね。
歩いたコースは西八王子から八王子までの1駅。こう暑いと出歩いている猫など皆無で、散歩終盤の花街に至ってようやく1匹目に遭遇したのだった。
柳の小路で惰眠を貪るキジ白。こういう場所でお昼寝できるのだから、多少は秋めいてきたということなのかな。
キジ白のご近所さんの三毛ちゃん。お腹を敷石にくっつけて涼を取っていた。
そこへ同居人の茶トラ白が現れた。こいつは猫風邪がひどくて、近寄ってくるとダースベイダー的に鼻息が聞こえるので、背後からでもすぐに分かる。
とても人懐っこい子で、軽く体に触れると、「もっと、もっと」というように、すりすりと擦りつけてくる。リクエストに応えて撫でてやると、痩せて骨ばった感触が手のひらに伝わってきて、切なくなる。
茶トラ白を撫でて柳の小路に戻ると、今度は黒いシルエットが見えていた。
ほかの猫ほどフレンドリーではなくて、民家の敷地に引っ込んでしまった。
さっきのキジ白もふらりとやってきて、2匹揃ってカメラに収まった。
最後に立ち寄ったのは定点の駐車場。昨日あれだけ風が吹いたのに、どれだけしっかり据え付けているんだ、あの傘は。
車の下でちんまりしていたのは常駐の三毛。穏やかな顔つきで「にゃ」と言ってくれたので、今日の散歩は前向きな気持ちで終えることができた。サンキュー三毛。