台湾猫旅は高雄へコマを進め、3日目(11月14日)の朝を迎えた。
前日は枋野號誌站で列車が動かなくなり、山の中で30分ほど足止めを食ったが、最終的には定刻より6分遅れただけで高雄駅に到着した。同じ列車に乗り合わせた鐵路迷はとても親切な人で、枋野號誌站で自強号に乗り換えたあとも、わざわざ俺の席までやって来て、高雄までの停車駅を一つ一つ諳んじてくれた。俺が高雄で降り損ねないよう慮ってのことだったが、残念なことに聞き取れたのは枋寮(Fāngliáo)と屏東(Píngdōng)だけ。目的地の地名くらい現地の発音で理解しておかないと、こういう時にとても困るということを、身をもって学んだのだった。
この日泊まったのは高雄駅近くの康橋商旅というチェーンホテルで、料金はAgodaで2ヶ月前に予約して1泊4,724円。無料ランドリーコーナーありとの触れ込みだったが、備え付けの衣類乾燥機が電気式で、いくら回しても生地が痛むばかりで乾きゃしない。仕方なしに部屋に干したが、朝になっても乾き切らず、湿ったパンツで出発する羽目になった。
猫旅3日目の最初の散歩は、ホテルからスタートして、高雄捷運の西子灣駅までの約8.5km。まだ路地に日が差さない7:20、道路向かいに猫発見。
いちごのアクセサリーをぶら下げた黒白。大都会の高雄市は交通量も半端ないので、繋いでおかないと心配なんだろうな。
暗い上に落ち着かないのでなかなか写真が撮れない。何に注目しているのかというと……、
キジ白の毛色はずいぶん赤茶けていて、美人さんの一族を思い出させる。キジ色にも薄いのから濃いのまで色々あるが、この赤茶けた毛色については、ノルウェージャンフォレストキャットに見られるアンバー(E遺伝子座)ではないかと疑っている。カリフォルニア大学の獣医遺伝学研究所では、所定の費用を払うと猫の遺伝子検査をしてくれて、それによりルーツとなる出身地域や、E遺伝子座を含むいくつかの遺伝子型が分かるそうだ。美人さんの妹あたりから検体を採取して、本当にアンバーの遺伝子が混じっているのか確認してみたいところだが、費用もさることながら、検体採取用のブラシを口の中に突っ込んでゴシゴシやらなければならず、特に親しくもない外猫にそれをするのは至難の業だ。俺は端から諦めているが、興味のある方はこちらからどうぞ。毛色や体つきへの興味を満たすだけでなく、遺伝子疾患のリスクを把握することにも役立つはずだ。
「あら、それじゃお願いしようかしら。私のルーツは中国南部だと思うのよね」
台湾の朝は勤め人も学生も日本より30分~1時間ほど早く動き出す。スクーターが増え始めた大通りを避け、細い路地を見つけては覗いていると、やがて黒い物体がちょこんとしているのに行き当たった。
呼ぶと大きな声で返事する。みんな朝早くから活動しているのに、ご飯はまだ来ないのね。
あとをついて行くと、小さいのが2匹、黒の帰りを待っていた。どうやらお母さん猫だったようだ。
そうこうしているうちに、1匹はとっとと逃亡。君の弟は逃げ足が速いね。
キジトラの子は物怖じしないというか、無関心。カメラを構える俺を、きょとんとした表情で眺めている。
まっくろくろすけはこの通り。台湾では灰塵精靈って言うんだって。