台湾の東西南北の猫(9)


太麻里郷の猫

 ここのところ猫サーバの調子が悪く、毎日午前3時の定期再起動に失敗したり、バスエラーで固まることが頻発していたため、機械ごと交換することにした。明日は朝から晩まで移行作業のためサーバを止めるが、20時ぐらいには新しいマシンで稼働できると思うので一つよろしく。
 今日紹介するのは台湾猫旅の2日目。11月13日の午後から夕方にかけて、台東県太麻里郷で見かけた猫たちの後半編だ(前半はこちら)。台湾はちょうど統一選挙の真っ最中で、どこへ行っても大音量の音楽や演説が聞こえてくる。この国の選挙活動はとにかくド派手で、選挙カーが何台も連なって現れたかと思うと、ものすごい数の爆竹が鳴らされ、耳はキーンとするし煙がすごくて何も見えない。爆竹で得票数が増えるものなのか、外国人たる俺には分からないが、規制のないところで候補者同士が張り合った結果、エスカレートしてこうなったのではないかと想像している(檳榔売りのお姉ちゃんの露出度のように)。こんなんでは猫たちも隠れてしまって出てこないのではないかと心配したが、どれも平然としているから大したものだ。普段からスクーターなどの往来がうるさいので、騒音には慣れているのかも知れない。
太麻里郷の猫

「八九不離十(当たらずとも遠からずってところだな)」
太麻里郷の猫

 近寄ったら目が丸くなった。音より俺の方が怖いですか。
太麻里郷の猫

 道端で寛ぐキジ白の集団に遭遇した。まあきっと家族なのであろうな。
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 みんなスリムで顔の形が逆三角形。南方の血が流れている?
太麻里郷の猫

「お腹が空いているんだよ!」
太麻里郷の猫

「だから、その懐の美味しいものを早くちょうだい!」
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 台東から順次開業した南迴線が太麻里に達したのは1988年。山越えに備えて高度を稼ぐため、太麻里駅は集落よりもだいぶ高いところに作られた。駅へ向かうには再び坂を登らなければならず、疲れた体を引きずるようにして歩いていると、とある民家からか細い鳴き声が聞こえてきて、振り返ると猫がいた。
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 まだあどけない顔立ちの子。こういう毛色、本来は白に分類すべきなのだろうけど、小さなサバ色が見えちゃってるから、サバ白にしておく。
太麻里郷の猫

 駅まであと300mのところまで来て、ダメ押しの猫集団発見。小さいのばかりで分かりにくいので、マウスカーソルオンで位置を表示してみた。
太麻里郷の猫

 こんな感じ。みんなまだ幼いね。
太麻里郷の猫

「別把我們當小孩兒看(僕たちを子供扱いするな)」
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 民家の裏側から表側へ回ってみると、別のグループがまったりしていた。怪しい者ではないので逃げないでね……。
太麻里郷の猫

「……」
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 返事がないので勝手にやらせてもらいます。
太麻里郷の猫

 「遊ぼー!」と鳴きながら、小さいのが駆け寄ってきた。
太麻里郷の猫

 不意をついて現れたキジトラはめっちゃ人懐っこい子。夕方でかなり暗くなっていたことに加え、活発すぎて写真を撮るのが困難だったので、動画でお茶を濁すことにした。最後は家主と思しきおばちゃんがバイクに乗って現れて、猫たちがそちらへ駆け寄っていったところでお開きとなった。列車が発車する20分前の出来事だった。
太麻里郷の猫

 この日の猫は三毛で終了。とてもたくさんの猫に会えた日だった。
太麻里郷の猫

太麻里郷の猫

 枋寮行きの普快車は1分遅れの16:31に太麻里を発車。引退間近のオンボロ客車列車は休日にもなるとそれなりに混雑するそうだが、この日は火曜日で、俺のほかには台湾人夫婦二人と鐵路迷(鉄オタ)が一人だけ。最後尾に乗っていた若い女性車掌はよく働く人で、4人の乗客のためにいちいち次の停車駅を知らせて回り、それが終わると俺の席に来て、扇風機のスイッチ操作や、窓の開け方を事細かに教えてくれた。俺も誇り高き日本人鉄路迷であるから使い方は分かるんだが、台湾華語で「結構です」と伝えることもできず、教えられるに任せておいた。彼女の声を聞いていたくもあった。
 この日、南迴線のダイヤは乱れていたようで、それまで快調に飛ばしていた普快車は、枋野號誌站(枋野信号場)に停車したまま動かなくなった。とっぷりと日の暮れた山間の信号場はほとんど真っ暗に近く、無動力の客車内はことりとも音がしない。15分ほど経ったころ、隣の車両の鐵路迷がやって来て、俺の行き先を聞くと、拙い英語で何やら複雑なことを話し始めた。曰く、「この列車は当分動かない。後続の自強号を先に通すことになったので、もしあなたが高雄へ行くなら、ここで乗り換えた方がいい」。便宜を図るため自強号が臨時停車してくれるとのことだった。
 ほかの3人は早速降りる仕度に取りかかっている。俺はこの列車に残り、女性車掌と二人きりの旅を楽しみたいと思わないでもなかったが、今日中に高雄に着かないと困ったことになるので諦めた。普段は客扱いをしない枋野號誌站を見学する、またとないチャンスでもあった。ここには台鉄の職員が交替で詰めているほか、何匹かの野良犬や野良猫が暮らしているらしい。機会があればぜひ訪ねてみたいと思っていたものの、ここは台湾でも名だたる秘境駅。唯一のアプローチが大変な悪路で携帯の電波も届かず、途中でスクーターが故障でもしたら遭難しかねないので、挑戦しあぐねていたのである。
 不意に訪れたチャンスに台湾人鐵路迷も感慨深げだ。鉄道職員に「中も見ていけ」と手招きされると、最初は固辞していたものの、CTC運行表示盤の魔力には勝てず、やがておずおずと室内に入っていった。俺は施設の周囲を歩き回り、暗闇に目を凝らしてみたが、猫はどうやっても見つからない。建物の中から漏れ聞こえる「啊」とか「嗯」といった怪しい吐息とともに、山間の信号場の夜は更けていくのだった。
 この時の動画はこちら次回は朝の高雄から。
太麻里郷の猫

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