5ヶ月ぶりの奥多摩(2)


奥多摩町の猫

 昨日は家のことを頑張りすぎたせいか、夜になってから頭が痛くなってきて、今日のお昼すぎまで布団の中で唸っていた。何とか夜勤には出勤して現在に至るが、散歩までは無理だったので、昨日に続いて8日の奥多摩猫散歩の後編を紹介しておく。とにかく今回感じたのは、年を取ってからの引っ越しがものすごくきついということ。業者が家に入るたびに、間違っても猫が脱走しないよう気をつけているので、疲労感が通常の何倍にもなる。老いて引っ越すということは、下手したらそのせいで死んでしまうくらい負担が重い。15年近く前、北海道の実家に一人で暮らす父親を東京へ呼び寄せた時、まだ若かった俺はそのことに注意を払わなかった。世の中、自ら経験しないと分からないことばかりで、その割に人生は短すぎるとつくづく思う。
 まあそんなことはどうでもいいんだが、庇の上からこちらを眺める3匹は、氷川集落の上の方(つまり標高の高い方)で見かけた猫たち。まだ1歳にも満たない若い猫は警戒心が強く、なだめてもすかしても下りて来てくれない。
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 こちらの三毛ちゃんは大白斑の超薄色。最劣性に近いca遺伝子あたりでカラーポイントを発現しているのかと思ったが、瞳の色はブルーではなかった。ティッピングが入っているのかも知れない。
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 ああなるほどね、ティップドシルバー(tipped silver tabby)がいるんだ。
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 この子の毛色の根元は白く抜けているはず。優性のI遺伝子を持っている点で、さっきの三毛とは血縁関係なのだと思う。
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「それはいいとしてお土産は?」
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 氷川の散歩を終えたのは10時ちょうど。あまり遅くなると猫たちがお昼寝タイムに入ってしまうので、次の目的地である猫集落へ向け、離合困難な山道を低めのギアで走り抜ける。眺望のよい高台に着いてみると、まだ間に合ったらしく、広場の隅に佇む2匹の猫が見えてきた。
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 あららー、君はここでいちばんフレンドリーな黒ちゃんじゃないの。元気にしてたかー。
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 初めて会ったのは2013年秋。こいつはまだ1歳にもならない子猫だった。恐らく今では最古参に入ると思う。
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 猫の集会場を引いて見ると、定位置で周囲を偵察する三毛発見。
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 すだれの内側にも黒がいた。前回来た時は冴えない天気だったせいか、あまり出ていなかったけど、今日は盛況のようで嬉しいな。
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 とことこ。
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 お散歩から戻ったのはさっきとは別の三毛。以前は上の段の縄張りに茶色のO遺伝子はなかったように思うが、ここ何年かは時々三毛を見かける。下の段から移住してきたんだろうな。
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 しかもこの子、おめでたっぽい。茶色を含まない父(oY)と三毛の母(Oo)から茶色(OOまたはOY)の子が産まれる確率は25%。この場合OOの子はあり得ないので、茶色の子はOYで必ずオスとなる。上の段に茶猫の現れる日は来るのだろうか。
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 お父さんは誰だろう。君かい?
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「それはゴクヒな秘密なのだ」
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 簾の内側にはほかにも猫が潜んでいて、カメラを構える俺の姿を興味深げに眺めている。臆病なのが多い中、この子は割と脈がありそう。
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 離れるとこうしてわらわら出てくる。
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 おめでた三毛は高みの見物。
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 脈ある2匹は最前線。
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 ……で、近寄ると脈なしの順に引っ込んでしまう。
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 不穏な空気を察したか、どこからか馴染の黒白も現れた。俺の知る中では、こいつが猫集落の最古参で、初めて会ったのは2013年10月に遡る。今はここのボスを務めているらしく、次位と思しき若手のキジトラと鳴き合ったりしていた(動画はこちら)。2013年の写真にはなかった耳朶のささくれが苦労を忍ばせるが、ここでは猿や猪、カモシカなどの野生動物と対峙する機会も多く、トップに立つのも命がけなのだろう。
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 鳴き合いにヘタレたキジトラは2階へ上がってしまった。
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 転がる妊婦を一撫でして、帰途につくため階段を下りていると、下の段で猫の面倒を見ている奥さんと久しぶりに行き会った。かつて夥しい数の猫が生息していた下の段だが、現在は1匹にまで減ったそうだ。淋しくなったと漏らしていたが、おめでた三毛の持つO遺伝子は、恐らく下で暮らしていた猫たちから受け継いだものだろう。究極的には、生き物の使命とは、そのようにして証を遺すことなのだろうと思う。
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