ゆっくりゆっくり、ごとごとと、キャベツ畑の向こうを走るローカル列車。小さな旅に相応しい光景からこの日の猫散歩は始まった。
畑仕事に出てきた爺さんに挨拶して、アップの写真を撮らせてもらった。近所の野良が住みついただけと言っていたが、撮った写真を見せたら顔を綻ばせていたので、それなりに可愛がっているのだろう。散歩開始から間もないころの嬉しい出会い。
14日と15日は勤務シフト上の二連休で、関東近県へ小さな猫旅に出ることは事前に決めていたが、いくつかの候補地から行き先を絞り込めずにいた。コロナ禍でどこへも出かけられなかったころ、時刻表で机上の旅をして作った旅程表の中には、1泊2日で小湊鉄道と三浦半島をかけ持ちするというプランがあったが、小湊鉄道はIWGさんの猫番組で取り上げられたばかりだったはずで、他人の真似のように思われるのも嫌なので早々に候補から外した。そうこうしているうちに初日(14日)の天気予報は前線通過に伴う雨となり、この冬いちばんというレベルで気温も低かったので、一日中どこへも出かけずに家の中で猫を抱いて過ごした。ただ前線通過後は広く晴れ渡ることが予想されたので、小さな猫旅は15日だけの日帰りに変更して行き先は海にした。三浦はあと2〜3ヶ月もすればハマダイコンの花を見に行くことになるので除外し、それと似たような風情の街で思いついたのが銚子の犬吠や外川だった。
鉄道を利用する場合、分倍河原を出発して最も早く現地に着けるスジは、分倍河原5:38発〜外川9:38着というものだったが、途中で4回も乗り換えなければならない上に、朝ラッシュ時に都心や千葉を横断することになり、非常に気が重い。一方、東京駅八重洲口からは犬吠埼行きという高速バスが出ていて、こちらは新宿と東京で乗り換えるだけで済み、リクライニングシートを備え座席定員制で着席が必須なことから、快適性の面で比べるべくもない。「犬吠埼太陽の里」という名の終点には9:24着というダイヤだったが、朝の渋滞に遭遇したため10分ほど遅延して、散歩をスタートしたのは9:35だった。
猫の方は2匹目を発見。時刻は10時ちょうどで、踏切は見えているが電車は当分来ない。
不審者に気づいて固まる白。サファイアのような青い目がきれいな子。
古びた団地を縫うようにして歩いていると、建物の陰から白い物体が現れた。
警戒して身を低くしている。私は旅の猫好きですから怖がらないでくださいな。
説得の甲斐なく身を翻す白。ここへ来てようやくオッドアイということに気がついた。
団地の中をさらに行くと、前方にいたずら者を発見。そおっと近寄ってみよう。
まだ若いキジトラ。お腹が空いて漁っていたのではなく、ビニール袋のがさがさ音に反応していたみたい。
一方こちらはこの日3匹目の白。白を発現する優性のW遺伝子は、ほかの毛色の遺伝子を凌駕する最上位の遺伝子なので、放っておいても増えていく理屈ではあるのだが、実際に街なかで白を高頻度に見かけるかというとそうではない。これには恐らく紫外線に弱いとか、目立つ毛色で外敵に襲われやすいなどの理由があるはずで、狭い範囲に白が多いのは割と珍しいと思う。
外川の駅を過ぎれば2013年9月にも訪れたエリアとなる。記憶を頼りに漁村の細い路地を行き来していると、建物の隙間でお昼寝中の猫が見えてきた。
「体に触るなんて、とんでもない」というように身を起こしたポイントさん。次回も引き続き外川の街なかで見かけた猫たちを紹介していくので、どうぞお楽しみに。