台湾田舎巡り(19)


蘭嶼郷の猫

 さすがに今日は雨から逃れることはできず、端から寝坊するつもりで布団に潜っていたところ、何となく違和感を感じて勤務表を確認したら日勤だった。危なく天然バックレかますところだったが、気づいたのが7時前だったので何とか間に合った。
 今日紹介するのは台湾猫旅4日目の3月22日午後、台湾南東沖に浮かぶ孤島・蘭嶼で見かけた猫たち。東海岸の東清と野銀という二つの集落を急ぎ足で回ってきたが、自転車を借りるのに時間がかかったり、山越えに難渋したりで時間が押してしまい、ついに太陽が稜線に隠れてしまった。猫としてはこれからが活発になる時間帯なのだろうが、そろそろ宿へ戻らないと真っ暗になってしまう(前回の記事はこちら)。
蘭嶼郷の猫

 穴から顔を出していたキジ白。遊んで行きたいけど時間がなあ。
蘭嶼郷の猫

「せっかく来たのにもう帰るの」
蘭嶼郷の猫

「今から楽しい時間が始まるのにね!」
蘭嶼郷の猫

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 2匹で煽るキジ白とキジトラ。どちらもきれいな毛並み。
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 野銀に残る半地下式住居エリアにも猫はいた。
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 きょとんとしている。念のためákokay(こんにちは)などと達悟タオ語で挨拶してみたけど微動だにしない。
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 一段下の家には小さいのもいた。ここにはもう少し早く来たかったな。
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 ちなみに蘭嶼は動物王国でもあり、猫のほかにも犬、豚(蘭嶼豬と呼ばれる独自の品種)や山羊、鶏など多数が街のあちこちを闊歩していて、ふんを避けて歩くのが困難なほどだし野生生物にも蘭嶼固有種は多い。
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 この日最後の猫は野銀の外れで見かけたキジ白だった。
蘭嶼郷の猫

 蘭嶼には野銀を含め6つの集落が海沿いに展開し、蘭嶼郷公所(村役場)のある紅頭から時計回りに漁人、椰油、朗島、東清、野銀という順で、これらは日本統治時代の小字に一致する。かつては伊瓦達斯という集落もあったそうだが現在は無住地帯となって椰油に統合されている。蘭嶼中橫公路(この日俺が一度目の体力的な死を遂げた山越えの短絡ルート)を使わず海沿いの環島公路を通った場合、野銀~紅頭の11kmが最も遠くその間に人里はない。猫探しの散歩を終えた宿への帰り道、あんな山越えの坂道はもう見たくもないと思い、この長い海岸沿いの環状ルートを選んだのは当然のことだった。山越えの倍以上の距離になるとはいえ、エメラルドグリーンの海を眺めながら平坦な道をまったり漕いでいけば、失った体力を回復し、どこか気の利いた料理店で蘭嶼名物の飛び魚料理を食べる余裕もありそうだった。ここへ来てようやく俺は猫以外の観光を楽しむ気持ちになっていた。少なくとも帰途についてから15分ほどの間は。
蘭嶼郷の猫

 16:55に野銀を出発。自転車というのはこんなに軽やかに走るものなのかと驚いたが、それが追い風のお陰と気づくのに時間はかからなかった。蘭嶼東端の鋼盔岩へたどり着くころには風向きが変わり、その後宿に帰着するまではただひたすら猛烈な向かい風そして向かい風。環島公路は平坦どころか切り立った岬を高巻きするためいちいち起伏があり、時には10%にもなろうかという勾配が現れる。島を周回するにつれて方角が変わるからいずれ風は味方になるだろうと思っていたが、そんな期待を嘲笑うかのように風は常に俺の真正面に吹き付ける。この日の蘭嶼の最大瞬間風速は22.0m/sと記録されているが、沿岸の風はそんなものではなかった。必死に立ち漕ぎしても1km/hぐらいしか出せず、もはや飛び魚どころではなく宿にたどり着けるかどうかも自信がなかった。こんな日でも自転車(ママチャリではなくロードバイク)やスクーターで島を一周している人がいて、すれ違いざまに「環島快到了、加油!」などと叫んでいくが、脆弱で虚弱な俺はそれに笑顔で応える余裕もない。そりゃあんたら追い風でしょうよ。
 すべての体力と魂を失って宿にたどり着いたのは19時。もはや立っているのもやっとの状態で、近くの食堂で作ってもらった炒飯は胃袋が受け付けず3口食べて布団にくずおれた。これが蘭嶼における俺の二度目の体力的な死であり、ダメージは一度目よりさらに深くて大きく、完全に回復するには帰国してから1週間が必要だった。
 翌3月23日は重い体を引きずりつつ6時半に宿を出発。蘭嶼最後の猫散歩は宿と空港の位置関係から紅頭と漁人だけにしており、果たして見つけられるかと心配していたが、紅頭ではほどなく1匹目に遭遇した。
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 チヌリクランの横で休むキジトラの向こうでは朝の宴会が始まっている。
蘭嶼郷の猫

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「ここにはたくさんの猫がいるから、君の分はないと思うよ」
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 ホントだ。盛況だね。
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 チヌリクランの奥を覗いてみるとさらに発見。小さいのもいるね。
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 突然現れた外国人に驚いておるな。
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 最初のキジトラは黒子猫のお母さんだったようだ。
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 食後の猫は三々五々散っていく。朝から猫の団体さんに会えて昨日の疲れが取れた、……と言いたいところだけど、そんなレベルの疲労じゃなかったんだなこれが。
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 ステージのようなこの施設は涼亭と呼ばれる東屋の一種で、もともと半地下式住居に住む人が自宅の一部として使っていたものだ。つまり本来これは他所の家であり、現在は観光客などに開放されているものの、「請脱鞋」と書かれているように靴を脱いで上がるのが礼儀とされている。海を眺めたりお昼寝するには最高の場所だが、まだ朝早いので利用しているのは猫だけだった。
蘭嶼郷の猫

 半地下式住居が存在するのは野銀だけというわけではなく、紅頭にもわずかに残されているが、さすがに今も住居として使っている人はいないようだ、写真左下の建物も納屋か何かのようで人の気配はなく、猫だけが細い通路の奥でちょこなんとしている。
蘭嶼郷の猫

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 上の写真に下半分だけ写っていた茶トラ。地面の茶トラ白に釘付けになってしまい、最初は茶トラどころかその後ろのキジ白にも気づいていなかった。
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 生ける屍のままスタートした蘭嶼二日目の猫散歩。残り3時間あまりとなった飛行機の出発までどれだけの猫に会えるかな(続く)。
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