我が家のサチコは20歳になった。
生後間もない子猫が玄関先に迷い込んで鳴いていたのは2003年8月29日の朝だった。そのころ俺たち夫婦は新秋津駅近くの一軒家に住んでいて、ちょうど何か生き物を飼おうと決めたところだったので、猫が現れたのは渡りに船だった。すでにウサギ用のケージを用意してあり、週末にでも本体を買いに行こうとしていた矢先だったが、2003年8月29日というのは金曜日だったので、結果的にぎりぎりで猫がウサギに先んじた形となった(干支の話ではない)。
母親に育児放棄されたと思しき華奢な子猫はオスの割にあまり動かない子で、ひ弱な印象だったが鳴き声だけはやたら大きかった。それがこの子の生きる術だったのかも知れず、老いてヨレた今も自己主張する時はとても大きな声で鳴く。夫婦ともに猫を飼った経験はあったものの子猫は初めてで、当初は「猫の飼い方」といったハウツー本を頼りに試行錯誤した。
サチコという名は昔フジテレビで放送されていた「やっぱり猫が好き」というシチュエーションドラマが由来で、もたいまさこ、室井滋、小林聡美とともに出演していた猫がサチコという名だった。当時の俺は猫の毛色に対する知識も関心もなかったが、今考えてみればやっぱり猫が好きのサチコはティッピングの生じたシルバー三毛(shaded tortie)で、性別はもちろんメスだった。
サチコの正確な誕生日は分からないので、迷い込んできた当時の体格と外見(キトゥンブルーは少し残っていたように思う)から6月1日生まれと見なしている。今日はおめでたい日ではあるが、人間換算96歳ともなると面倒ごとは嫌がるので、「何もしない」を贈り物にすることにして、一日中そばについて乞われるままに撫でるなどして過ごした。
今日の記事はサチコ特別号ということで、迎え入れてから今まで撮った写真を1年1枚で紹介してみる。ただ、俺が初めてコンデジを買ったのは2005年のことで、それまではガラケーのチャチいカメラしかなかったので、写真はほとんど撮らなかった。下記の写真は2003年大晦日にフィルムカメラで撮ったもの。サチコは0歳6ヶ月。
今のようにSNSが猫まみれの時代だったら、もっとたくさんの写真を撮っただろうにと悔やまれる。下の写真は2004年大晦日、東村山市秋津町の自宅にて撮影(1歳6ヶ月)。朧げな記憶だが、去勢手術を受けたのはこのころだったと思う。
2005年11月1日(2歳5ヶ月)。コンデジを買ってからはサチコの写真が増えたが、当時は勤務地が大宮と遠かった上に残業が多く、写真を撮るのも夜間が中心なので、ブレてばかりでほとんど使いものにならなかった。このころまでは外にも出していたが、近所の外猫たちとの体格に差が出てきたので、ケンカに負けて怪我でもしたら困ると思い室内飼いに移行した。
2006年9月14日、3歳3ヶ月。いたずらを企んでいる表情。
東村山市秋津町から昭島市緑町へ引っ越したのは2007年9月。新しい家は5SLDKという広さで快適だったが、国道16号に隣接していたため騒音が大きく、サチコが環境に慣れるまでかなり時間がかかった。あまりそうとは見えない写真だけど、撮影したのは2008年6月24日(5歳0ヶ月)で、引っ越しから9ヶ月が経過している。
妻の肩に乗ってご満悦。2009年1月31日撮影(5歳7ヶ月)
2009年9月に昭島市内の松原町へ転居。この前月にやんちゃ全開のマコちゃんが我が家の一員に加わったが、大人しく醒めた性格のサチコとは相性が悪く、マコちゃんが近寄ってくるとサチコが嫌がって逃げるほどだった。写真は2010年7月に撮ったもの(7歳1ヶ月)。この年の1月に妻と離婚しており、猫2匹との3人暮らしがしばらく続いた。仕事も転職して立川市内へ通うことになった。
東日本大震災を経験したのも松原町の家だった。このころは居室に猫監視用のネットワークカメラを設置していて、地震発生時に職場のPCから見たサチコとマコちゃんは俺のベッドで香箱を組んだまま揺れていた。
この写真を撮った2011年7月3日というと、一日一猫なるブログを開設した直後で、世の中ではテレビのアナログ放送が終了して地デジに移行したころでもある(8歳1ヶ月)。
2012年元旦。我が家の2匹は壁ガリガリや障子破りには興味を示さないが、対象が椅子となると人が変わり、このソファも数年後には悲惨なことになった。この年の12月に再び転職し、通勤先は東陽町(のちに勝どき)に変わった。
2013年6月1日。サチコ10歳0ヶ月、マコちゃん4歳0ヶ月。職場が現在の多摩センターへ異動になった。
2014年6月12日。サチコ11歳0ヶ月、マコちゃん5歳0ヶ月。
「拝島時代」と呼んだ昭島市緑町〜松原町の生活は2015年10月で終了。下の写真は西立川(昭島市郷地町)へ引っ越す直前、サチコと一緒に荷造りしているところ。2015年10月11日撮影(12歳4ヶ月)。
猫ちぐらですやすやと眠るサチコ(2016年3月10日、12歳9ヶ月)。大サイズを注文したが、届いてみると意外に小さくて、小柄なサチコは入れたけどマコちゃんは無理だった……。
西立川で暮らしたのは1年足らずで、2016年9月に妻と復縁し日野市平山へ引っ越した。写真は2017年6月1日撮影。サチコは14歳0ヶ月。
2018年5月6日。サチコ14歳11ヶ月、マコちゃん8歳11ヶ月。
現在の府中市南町へ引っ越してきたのは2019年2月12日。この写真はその翌日の2月13日、平山の旧居で待機していた猫たちを連れてきた直後に撮ったもの。新居を嗅ぎ回り中のサチコ(15歳8ヶ月)。
真夏の風体で寛ぐ俺たち。2021年8月8日(サチコ18歳2ヶ月、マコちゃん12歳2ヶ月)。
2022年7月28日。お風呂が大好きなサチコだったが、高齢のためこの日が最後の入浴になった。
高齢猫の例に漏れずサチコも慢性腎不全の状態だが、数値は低め安定で、食欲はあるし体の痛みも関節以外は恐らくないと思う。気になるのは運動不足で、特に後ろ足の筋力の衰えが目立つ。今の季節は猫草などで気を引いて、なるべく動くように促していて、それ以外の時間は体を冷やさないように注意している。
以前も書いたことだが、俺の人生で20年も一緒に暮らしたのはサチコ以外にいないし、同じ組織に20年所属した経験もない。サチコが家族の一員なのは言うまでもなく、どちらかというと兄弟とか分身に近い存在だと思う。巷間で言われているように、30年も生きることが猫にとって必ずしもいいことだとは思わないが、どこかが痛かったり苦しかったりするのでなければ、もう少しだけ一緒にいてくれたらなと思う。あと何年か経てば俺も定年になって家にいる時間が増えるし、息を引き取るその時までずっとそばにいられる。でもそれだとやはりサチコは超高齢になるわけだから書いたことと矛盾するかな。そもそも自分より大幅に寿命の短い生き物を愛すること自体が矛盾しているのだろうけど、俺はサチコが猫だから好きというよりも、サチコという人格が好きなんだよなあ。