猫散歩を始めてから、世の中に猫島と呼ばれる離島がいくつもあることを知ったが、一度に大量の猫に会うことを望んでいるわけではないので、旅の目的地に選んだことはまだない。去年7月に伊豆諸島へ赴くまで、猫旅として離島に渡ったのは石川県の舳倉島が唯一だった。ここは定住者が20人ほどしかいない日本海の孤島で、釣り人やバードウォッチャーにはよく知られているが、猫を目当てに訪れたのは俺ぐらいのものだと思う。一周4kmの島内を二回りして何とかキジ白の家族に会うことはできたが、舳倉島航路は青ヶ島以上に船の欠航が多く、年間平均の就航率は50〜60%、冬場に限れば20%にまで落ち込むというから、会えるかどうかも分からない猫を目当てに行くところではない(あまのじゃくな俺はだからこそ行くのであるが)。
伊豆諸島には敢えて「猫島」と呼ぶほどの生息密度を持つ島はないと思うが、今まで俺が訪れた中で比較的多く感じたのは式根島だった。これは恐らく猫を大切にするという島の風習が猫たちの警戒心を解き、本来なかなか人前に出てこない野猫までが頻繁に現れるからではないかと思う。伊豆諸島では1980年ごろ、農作物を鼠害から守る目的でニホンイタチが放獣されているが、式根島では明治時代には同様の目的で猫が持ち込まれていたそうだ。一部にはこれらを生態系に影響するとして問題視する向きもあるが、本土では韓国由来とされるチョウセンイタチの侵出がニホンイタチを駆逐しており、離島のニホンイタチにはその懸念がないのだから果たしてどちらがいいのやら。そもそも3万年前に人類の海洋進出から始まった生物の移出入を今さらどうにかできるものでもない。
ニホンイタチは青ヶ島にも放獣されたそうで、俺自身も散歩中に家族や単独で行動する姿を何度も見かけた。鳥の囀りが本土とはだいぶ違っていて、注意深く探してみたところ目についたのはアカコッコやメジロなど(それらの写真はこちら)。カラスは見かけなかったがスズメはいたし、ネコももちろんそれらを狙っていた。
集落には猫の面倒を見ている人がいるらしく、ところどころにカリカリのお皿が置かれていたり、不妊化も進んでいるようだ。なので薄色がいたからといって、それが拡散しているとは限らない。
書き忘れていたがこの日は猫旅3日目、つまり10月25日の朝(前回の記事はこちら)。民宿の朝食が7時半からということで、それまで1時間弱の間、集落の狭い範囲を歩いてみた。まだ日の差さない家屋の敷地ではご飯待ちと思しき猫の姿をちらほらと見かける。
こちらの民宿では野生型も発見。昨日は三毛やカラーポイントも見たし、満遍なく揃っている感じだな。
青ヶ島は1785年の大噴火で壊滅的な被害を受けており、1824年に還住するまで数十年間に渡って無人島だった期間があるので、ここに住む猫の祖先もそれよりあとに八丈島から持ち込まれたはず。とはいえ大白斑が多いこと以外、特定の毛色が突出して多いようにも見えないので、ただ1匹の祖先から分化したものではないのだろうと想像している(ただ、この想像は後日触れる予定の三宅島の例を考えると根拠が薄い)。
ごく狭い集落だが高低差が半端なく、行く先に猫が見えても逃亡率が高く、体力温存のためかなり端折って撮影している。あれは面白そうな毛色なので近寄ってみようかな。
案の定、逃げられて逃げられて何とか捕捉したのがこの写真。灰白に分類しておくけど色班が小さすぎて分かんない。
青ヶ島で見かけた唯一の長毛。普段は屋内や道路向かいの商店にいることが多いそうで、外で撮ることは諦めていたけど運が良かった。
朝食前の散歩はこれでおしまい。明日も雨がちだそうなので、引き続き青ヶ島猫をお届けする予定。