前々回の記事で紹介した青ヶ島のポイントさんが今月2日に死亡したと聞き、その1週間前に元気な姿を見ていただけにとても驚いている。自宅から360kmも離れた孤島の猫情報を知ることができたのは、Twitterで教えてくれた人がいたからで、ポイントさんはその人の手により埋葬されたとのこと。残念ではあるが、自分の縄張りで土に還ることができたのなら良かったと思う。
今日は久しぶりに新宿のサファイアちゃんに会いに行くつもりで楽しみにしていたが、朝から雨がちで気温も低かったので明日に持ち越した。とはいえ明日も天気は芳しくないらしく、行くにしても日中か夕方じゃないと無駄足になるかも知れない。10℃にも満たなかった今日の気温を引きずるとしたら明朝はもっと寒いはずだ。
猫の方は昨日に続いて伊豆諸島猫旅3日目(10月25日)の朝、青ヶ島散歩の続きから。前回の記事で紹介したのは起床〜朝食前の散歩で、今日紹介するのは朝食後〜帰りのヘリコプターが出発するまでに見かけた猫たち。前日午後から狭い集落を何度も行き来したので猫が重複することは避けられないが、時間帯によってまったく違う表情を見せてくれるのが面白い。
2時間ほど前は玄関前に張り付いていた子(こちら)。食事って大事ね。
今回お世話になった民宿には本宅と離れがあり、本宅では猫を見なかったが離れのこちらには常に猫がいた。
この子も朝食前の散歩で見かけた。青ヶ島って大白斑が多いなあ。
例えばこの子によく似た猫を昨日ここで見たし、濡れ縁の下の大白斑などは見分けるのも難しいぐらいそっくりなのもいて、これらは恐らくみな親戚関係なのだろうと思う。猫の白斑に関する遺伝は従来言われていたS遺伝子の不完全優性ではなく、白猫と同じW遺伝子座の優性対立遺伝子Wsが作用していることが分かったそうで、いずれにしても優性遺伝なので表現型として広まりやすい。
ヘリコプターの出発が30分後に迫った9:50、青ヶ島最後の猫はメインストリート沿いの墓地で発見。
写真では見えないけど首輪をしている。この子も朝会った長毛黒と同じ商店の子かな。
指で名残を惜しもうにも、目つきが鋭すぎて成功する気がしない……。
なので最後の写真は遠巻きに1枚。24時間にも満たない滞在で、会えなかった猫がわんさかいると思うので、その子たちにもよろしく伝えておいてね。
慌ただしい搭乗ののち、ふわりと浮いて青ヶ島へリポートをあとにした機体の窓から陸地はすぐに見えなくなった。一面の大海原は一昨日から変わらず穏やかで、この時点では夜勤に出勤することに何の問題もないように思えた。青ヶ島を出たヘリコプターは船で3時間かかる八丈島へわずか20分で飛び、八丈島空港では一旦降機して次の出発を待つ段取りとなる。以前も書いたが、東京愛らんどシャトルと呼ばれる伊豆諸島のヘリコミューターは九つある有人島のうち六つを巡回しており、八丈島を11:00に出発したあとは御蔵島まで25分、次の散歩地の三宅島まで10分と小刻みに着陸しては客を拾っていく。この日は平日にも関わらずいずれの区間も満員で、定員9名のうち地元民が2名、官庁関係者や工事業者が4名、観光客が俺を含めて3名という感じ。過疎地のコミュニティバスが空を飛んでいるようなものだが、運賃は青ヶ島〜三宅島の乗り継ぎで24,350円と空を飛ぶ分だけお高くなっている。
三宅島空港には11:40に到着。三宅島では2時間半ほど猫を探したのち15:30発の新中央航空408便で調布へ飛び、自宅で着替えたらそのまま夜勤に出勤することにしている。散歩に不要な荷物を預けるためチェックインカウンターに行ってみると、俺が乗る408便の出発時刻の横に「天候調査中」と書かれていることに気づいた。確かに今日は午後から雨の可能性があるとは聞いていたけど、ヘリから見た海は穏やかで風もなかったし、雲は多いものの一部に青空も見えているのにいったいなぜ? ぶつぶつと一人ごちながらiPhoneで天気図を見てみると、伊豆諸島を横断するように気圧の谷ができている。雨雲レーダーにはそれをなぞるように筋状の強い雨雲が伸びていて、小型プロペラ機の飛行にはもろに影響しそうだった。
このことを知ってから職場へ連絡するまではかなり迷った。このままぎりぎりまで引っ張って欠航となれば三宅島に1泊するほかなくなり、始業直前に代替要員を手配する同僚への迷惑度が半端ない。なるべく早めにありのままを説明した方がいいと判断し、電話の向こうの同僚に平謝りしつつ休まざるを得ないことを伝えてから間もなく、408便は予定通り飛ぶことが決まったのだった。
油断していると長くなるので三宅島猫の1匹目を。散歩開始から20分後に無事発見したが、この時はまだ職場へ連絡する決心がついておらず、揺れる想いのまま撮影。
あとから出てきたキジ白、初めてという気がまったくしないのはなぜだろう。
しばらく考えて思い出した。中神のオッドアイによく似ているのだった。あの子はだいぶ前に死んでしまったけれど。
次の猫もほどなく発見。空港から最寄りの集落までは2km近く離れていて、その道すがらでもぽつぽつと見つかるのだから、どうやら三宅島も猫密度が高そうだな。
坪田地区の中心部へ近づくとともに雲が空を覆って暗くなってきた。職場に電話しなければならないのはもちろん、早めに切り上げないと空港まで雨に濡れて戻ることになるかも知れない。歩みを速めつつメインストリートをさらに進むと、行く手にさらなる猫が見えてきた。
訝しげにしつつも近寄ってきたキジトラ。三宅島にはフレンドリーな猫が多そうと分かり、もう少し先へ足を延ばすことにしたところで今日の紙幅が尽きた。今次猫旅の最終回となる次回は三宅島・坪田地区の猫たちから。