店子が替わった猫ボックス


国立市の猫

 これから「四国・台湾猫旅」と銘打った6日間の旅行に出かけてくる。
 もともと四国と台湾は別企画で、パンデミックがなければどちらももっと早い時期に実現するはずだった。台湾が日本人旅行者のビザなし渡航を再開したのは2022年9月で、俺が台湾猫旅を再開したのは2023年3月。6日間の猫旅で過去最多となる212匹の猫に会ってきたことは記憶に新しい。
 一方、四国の方はもともと中四国猫旅として立案したもので、当初は東京からサンライズ出雲に乗り、出雲市、益田を回って山口線に入り津和野で散歩。津和野〜新山口を「やまぐち号」で移動したのち岡山から柵原やなはらへ。片上鉄道の廃線跡を散策したあと瀬戸大橋を渡って琴平や阿波池田で猫を探し、さらに京都、舞鶴、天橋立、加悦かやを経由し、京都に戻って新幹線で帰京という壮大な計画だった。ここまでくるとさすがに無茶というか、欲望の赴くまま行き先を追加するうちに日程や予算が嵩み、実現の見込みが立たないまま塩漬けになっていた。
 ところが去年10月、中華航空が「高松割」と称するキャンペーンを実施していることを知り、これに乗っかって台湾の旅程を組めば、塩漬けになっていた中四国猫旅のうち、サンライズに乗る夢は叶えられると思い立った。夜行列車ゆえに高松到着は朝早く、桃園行きの飛行機に搭乗する夕方まで、四国で行きたかったいくつかの場所へ赴くこともできる。台湾ではパンデミック後の日本人観光客の客足がなかなか戻らず、高松割のようなキャンペーンをほかの就航都市でも打っていたようだが、最初に俺の目に入ったのは高松で、それは俺にとって都合のいい都市だった。
 ……というような経緯により、これから俺は東京駅へ向かい、21:50発の高松行き寝台特急「サンライズ瀬戸」に乗る。寝台列車を利用するのは2007年2月の「北斗星4号」以来で、「瀬戸」となると1989年9月以来の約35年ぶり。もちろん当時はサンライズに使われている285系電車ではなく青い車体の24系客車だった。明日は午前中のうち琴平を散歩したあと瀬戸内に浮かぶ小さな島に立ち寄り、午後は坂出からバスかタクシーで高松空港へ向かうことにしている。
 今朝は起きられなければ散歩をお休みするつもりだったが、風の吹きつける音で4時すぎに目が覚めてしまい、近場を少しだけのつもりで西国立へ出かけてきた。結果的には1時間20分で切り上げたので「少し」であることは確かだが、間断なく吹きつける北風にヘタレたという方が実態に近い。短い散歩だったが寒くて死ぬかと思った。
 家を出て間もなく、猫の鳴き声が聞こえたような気がして、いつもの路地を覗いてみると、ちょうど武蔵が出てきたところだった。
府中市の猫

 背後にはクロエさんも見えている。
府中市の猫

 普段はほとんど鳴かない武蔵だが、家に入りたがっているようだ。風が強くて寒いのだろう。
府中市の猫

 クロエさんはこの出で立ちなので余裕の表情。
府中市の猫

府中市の猫

 一通りすりすりしたのち、玄関前に張り付いて再び鳴き始めた。
府中市の猫

 朝の西国立を歩くのは久しぶり。可愛い子はいねがー。
立川市の猫

「ここにおる」
立川市の猫

 こちらを睨みつけるのは馴染の長毛キジ霜降り白。以前は近所の公園が朝食会場だったが、今はここへ移転したようだ。
立川市の猫

「うーん」
立川市の猫

 学校裏の猫アパートで猫を見るのは久しぶり。車の陰で伸びていたキジトラも一瞬誰か分からなかった。
立川市の猫

立川市の猫

 あらま、君は近所の公園のキジトラじゃないの。ここはいつから君の縄張りになったの?
立川市の猫

 もともとここはキジ白の母息子たちが暮らしていた場所。しかし彼らはいなくなり、アパートの猫ボックスもしばらく空き家になっていた。
立川市の猫

 公園には今も現れるようなので、縄張りを変えたのではなく広げたのだろう。あの猫ボックスも店子が替わったというか、無血開城みたいなものだからまあ良かったのかしら。
立川市の猫

立川市の猫

 最初に見かけた長毛キジ霜降り白の一味がここにもいた。
立川市の猫

立川市の猫

 先月末にも会ったばかりのキジ白。こいつがいるなら相方もいるかなと思って探してみたが、あいにく見つけられなかった。
立川市の猫

 北風がさらに強くなり、体温が奪われて死にそうになってきたので、ここで折り返して西国立へ戻ることにした。瞬間的には20m/s近い風が吹く中、庇の上で涼しい顔をしているのがいたりするから猫というのは不思議な動物だ。
国立市の猫

国立市の猫

 むしろここにいるべきは君ではなく、地面で毛繕い中のゴージャスぱっつん黒白でしょうよ。
国立市の猫

「ん?」
国立市の猫

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