四国・台湾猫旅は無事に終わり、一昨日は深夜24時すぎに帰宅した。わらわらと集まる我が家の2匹を少しだけ構ったあと、シャワーも浴びずに24時半ごろ布団に入り、翌朝は6時半に起きて出勤した。猫旅レポートの1回目は昨日のうちに載せるつもりで準備していたが、疲れが残っていて集中できず、頭も朦朧としていたので途中までやって諦めた。
今回の猫旅は天気に恵まれたことがいちばんの幸運だった。一滴の雨にも当たらなかっただけでなく、気温や日差しも穏やかで、サンライズで四国に渡った初日は日中で12~15℃程度、台湾でも朝の台北などは15℃ほどで少し寒く感じるぐらいだった。22日からは暑くなって台西や西螺で27.9℃、帰国日の一昨日は玉里で29.6℃という最高気温を記録したが、一日中それが続くほどではなく、猫も去年よりたくさん出ていたように思う。残念なのは俺自身の体力が落ちていることで、もし去年のように離島で暴風に晒されたり、川を渡渉するような場面があったら途中でヘタレていたかも知れない。実際、一昨日の金崙では傾斜地の集落を歩き回る気力が続かず、せっかくの猫の巣窟なのにかなりの数を取りこぼした。
とりあえず四国で撮った写真の整理だけはできたので、今日のところはその1回目を紹介していく。台湾の猫はまだ手を付けておらず集計も先のことになるが、感覚的には猫旅全体で120匹ぐらいだろうと予想している。なお猫旅に出発する前の今月15日、三浦散歩で会った猫たちがまだ1回分残っているので、四国の2回目へ進む前にそちらを先に紹介する予定。
さて、猫旅0日目となる18日は東京21:50発の寝台特急「サンライズ瀬戸」で高松へ。この列車は高松行きの「サンライズ瀬戸」と出雲市行きの「サンライズ出雲」が併結されていて、途中の岡山で切り離されそれぞれの目的地へ向かう。夜行列車や寝台列車というだけでも貴重なのに、それに加えて併結という列車運用も今ではほとんど消滅しており、好き者にとっては三つの意味で乗り甲斐のある列車だ。意外だったのは乗客の年齢層が想像していたよりもかなり若かったことで、かつて東北本線の「ゆうづる」や「はくつる」を利用していた俺の目には新鮮に映った。今や定期列車として唯一の寝台列車となったサンライズは、始発駅の東京はもちろん途中の停車駅でも注目の的で、多くの人がスマホで写真を撮ったり、走り出した列車に手を振ったりしていた(入線時の動画はこちら)。
長距離を走るサンライズは輸送障害の影響を受けやすく、遅延したり途中で運転打ち切りになるケースも多いと聞いていたが、この日は無事に走り切って終点の高松には翌19日の7:27に到着。そのまま松山行きの特急「いしづち1号」に乗り換え、さらに多度津から土讃線の普通列車に乗り換えて、最初の散歩地である琴平に着いたのは8:24だった。多度津からの列車は通学の高校生でごった返していたが、途中の善通寺でほとんど降りて行き、最後の1駅だけはゆっくり車窓を楽しむことができた。2008年秋以来16年ぶりとなる四国の風景だった。
最初の猫はスタートからわずか1分後に発見。
空き地を突っ切って接近する不審者に驚いた様子。すぐに逃げられてしまったが、琴平にも猫がいることが分かったので一安心。
にゃあと鳴いて若い黒も現れた。キジトラと距離を保っているところからすると、家族ではないらしい。
琴平駅の周辺は旧法準拠の細い路地が残り、その多くには見張り番のような佇まいで猫が鎮座している。
……と思ったら家の中の子だったらしく、店の主人に抱きかかえられて店内へ消えていった。
四国というのは温暖な土地だと思っていたが、この日の琴平に限っていえば八王子とさほど変わらず、最低気温は氷点下1.1℃、9時になっても8.2℃にしかなっていない。夕方には南国の台湾へ向けて移動を開始するわけで、どのようにして服装を両立させるかとても悩んだが、最終的にはやや厚着で東京の自宅を出発し、四国の散歩を終えて空港へ向かう前に不要な服を送り返すという方法を選んだ。今は宅配便が発達しているし、営業所止めやPUDOステーション宛にしておけばどこでも受け取れるので、それらを駆使すればかなり荷物を減らせる。ちなみに難易度は上がるが、日本から台湾の郵便局宛に局留めで送ることもできるし、その逆も可能。俺は旅行でキャリーカートやスーツケースを使ったことは一度もない。
……それにしても日差しがあるのに一桁の気温とは、琴平って意外に寒い地域なんだなあ。猫も高みへ上るわけだね。
2時間強、6.5kmの琴平散歩はこれでおしまい。せっかくなのでこんぴらさんにも立ち寄ったが、時間の関係で山門で引き返したので本堂は見られなかった。参道脇の商店には店番と思しき猫の姿もあったが、朝早かったからか外に出ているのはおらず、山を下りて駅裏にも回ってみたもののそちらも空振り。琴平の猫は主に参道や歓楽街を中心に分布しているものと思われた。そもそも散歩地に琴平を選んだのは、週末を中心にサンライズが琴平まで延長運転しているというので、全区間乗るつもりで旅程を組んだ過去の残滓のようなものだ。猫が多いといった情報があるわけではなく、単に数を稼ぐだけなら男木島や女木島にでも行った方が効率的だったはずだ(あまのじゃくなのでそういうところへは行かない)。
島といってもここは瀬戸大橋によって本州や四国と接続されている。その名を岩黒島といい、本州側は児島からバスで30分、四国側からは坂出から40分ほどで到着する。島には瀬戸中央自動車道のインターチェンジが設けられているが、島民専用となっており一般車は通行できない上、下り線からしか出入りできないので、例えば島から児島へ行くには一旦四国方面へ向かい、隣の与島インターチェンジでUターンしなければならない。瀬戸大橋の存在が利便性に寄与しているかといえば微妙であることは容易に想像できるし、観光収入にもならない巨大構造物を見上げて暮らすのはどんな気分なのか経験してみたくて旅程に組み込んだ。もちろん猫島として有名というようなこともなく、そもそも住民が少ないので空振りもあるだろうと思っていた。
高速道路上のバス停に到着したのは正午すぎ。地上まではエレベーターが設置されているので体力を消費することもなく、小さな島なので集落には数分でたどり着いた。猫は誰かが来るのを待っていたかのように佇んでいた。
近寄ってみるときれいな鉢割れのいい男。やっぱり島って猫いるのね。
人の気配はあまりしないが猫はぽつぽつと出歩いている。水と魚さえあれば何とかなるか。
ここに人が住み始めたのは1797年で、当時は島に一つだけの井戸に頼っていたそうだが、1980年に上水道が引かれてその不便は解消した。とはいえ誰かが井戸の釣瓶を上げてくれたり、蛇口を捻ってくれなければ水は出てこないから、猫が野良として生活するのは今でも厳しいはず。これらの猫はみな島の人が面倒を見ているようで、細い路地にカリカリ皿が置いてあり、その傍らではくたびれたキジトラがお昼寝するなどしていた。岩黒島の猫はもう少し続く。