浜辺の10年(漁港にて)


三浦市の猫

 四国・台湾猫旅の疲れがなかなか取れず、帰国翌日の日勤と昨夜の夜勤は生ける屍と化して使いものにならなかった。夜勤明けの今日は雨が強かったこともあって一直線に帰宅し、風呂に浸かったあとは布団に潜り込んで夕方まで爆睡していた。たくさん寝たので体も頭もだいぶすっきりした。
 去年は台湾猫旅から帰った時がちょうど桜の満開で、疲労から回復する間もなく散歩に出かけていたが、今年はまだ開花すらしていないので明日もゆっくり休むつもりだ。明後日は家族の用事があるので出かけるが、体を動かすことではないので気は楽。台湾で撮った写真の取捨選択もだいたい終わって、ここへ来てようやく一息ついた感じだ。まだ速報値だが猫旅全体で出会った猫の数は148匹だった。
 これからしばらくは断続的に猫旅のレポートを出していくことになるが、その前にまず今月15日に三浦で会った猫たちを紹介しておく。2014年秋を皮切りにおおむね年に2回、春と秋に訪れていた三浦市内の砂浜だが、今年の夏には猫散歩をやめることから、同地を訪れるのも今回が最後ということになる。浜辺で暮らす猫のグループは大きく分けて二つあり、前回の記事では椰子の木の駐車場を根城にするグループを紹介した。黒猫一家キジトラ一家という椰子の木グループは、どちらも母猫が数匹の子猫を従えているという家族構成で、今まで何度となく遊んだりモデルになってもらったものだった。最後に全員と会えなかったのは残念だったが、今はきっと孫か曾孫ぐらいまで世代を紡いでいることだろう。
 今回紹介するのは漁港付近を根城にする猫グループで、こちらで暮らす猫たちは恐らく血縁関係ではなく、捨てられた猫が餌場を求めるなどして一箇所に集まったのではないかと想像している。もともとサバトラのボスを筆頭にたくさんの猫が暮らしていた場所が、ある時期から一気に数を減らして、今は空振りすることさえ珍しくないほどになっている。この日は椰子の木駐車場に長居していたこともあり、誰にも会えないことを危惧していたが、舌を鳴らしながらその辺を歩き回っていると、民家の敷地から顔見知りの茶トラが出てきてくれた。
三浦市の猫

三浦市の猫

 顔つきは難しいけどフレンドリーな子。
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 ほら、フレンドリー。
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 一通りすりすりして満足すると、少し離れた場所に落ち着いた。背後に大きく見えているのは霞んだ富士山。
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 茶トラと入れ替わるようにもう1匹登場。
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 見返りのサビ。今残る漁港の猫の中ではいちばん古い知り合いなので、最後に会えてとても嬉しい。
三浦市の猫

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 ちょっと日陰になっちゃったけど、ハマダイコンの花とサビ。初めてこの子に会ったのは2017年秋のことだった。
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 あら、車の下にも隠れていたの?
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 黒とサビは反りが合わないらしく、一度に両方は構えないみたい。なので先にサビを築港に誘ってみた。
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 そんな様子を遠くから見つめる黒い影。紛らわしいけど、あれはさっきの黒じゃないんだなあ。
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 こちらはやや警戒心が強く、呼ぶと返事はするものの、2m以内には近寄れない感じ。
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 漁港には複数の黒がいる(いた)ので、誰が誰だか同定するのはかなりムズカシイ。帰宅してから過去の写真を確認してみたが、こいつと同一人物と断定できる猫は見つけられなかった(たぶんこの子?)。
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 そして、この2匹も反りが合わない……。猫の世界もボスがいないとまとまらないものだな。
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 黒の同定に悩んでいると、背後にもう1匹増えていた。ここでこんなに猫が出てくるのは久しぶりかも。
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 2022年の始めごろ、漁港の猫の大部分が忽然と姿を消して以来、一度に5匹も出てくるのは初めて。こいつは見たことのない顔なので、そのあとでここに捨てられたのかも知れない。
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 仲のいい組み合わせには見えないけど、まあ協力しあってやってくださいな。
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 時刻は11時近くになり、猫たちはそろそろお昼寝タイム。俺も明日は久しぶりの日勤なので、早めに帰って休まなくちゃ。
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「あれ、もう行くの?」
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 見送りに出てきた黒。ここは気候が温暖で飲み水もあるし、時には親切な人が美味しいものを持ってきてくれるみたいだから、あまり心配はしていないけどやっぱり淋しい。みんなと仲良くね。
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 最後にもう一度振り返ると、さっきのサビが立ち去る俺をいつまでも眺めていた。
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 帰途について集落を通り抜ける間、見かけた猫は1匹だけ。三毛ちゃん一家の猫民家を覗いてみたもののもぬけの殻で、後ろ髪を引かれつつ3km離れた駅へ向かった。
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 猫以外に用のないここへ来ることはもうない。最後の猫は呆気なく逃げて視界から消えた。
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