先に結末を書いてしまうと、今回の台湾旅行でまともに散歩できたのは、これから紹介する獅子郷の内獅村〜南世村の4.1kmが最後になった。楓港散歩を終え、鵝鑾鼻から北上してきた台26線と台北から南下してきた台1線の結節点にたどり着いた時、道路沿いの屋台から漂ういい匂いに誘われて買ったイカ焼きに当たってしまったのだった。注文した時は台湾人と思しき母子連れのイカが焼かれていて、それが終わってからさらに15分ぐらいかけて俺のイカを焼いていたので、イカ自体が痛んでいたのではなく、焼き上がってから塗ったタレが原因だったのかも知れない。イカ焼きを食べたのが11:50で、お腹に違和感を感じたのはその1時間後ぐらい。しかし獅子郷の散歩を終えて枋寮に着いたころはまだ余裕があったので、とどめを刺したのは枋寮の道端で買い求めたココナツジュースだった可能性もある。製品化された清涼飲料水などではなく、もいだ椰子の実に鉈で穴を開けて提供されるやつで、外見からは新しいのか古いのか見当がつかない。ほんのり甘くて美味しいとは思ったが、緩くなったお腹に注ぎ込むべきものではなかった。
しかし内獅村口バス停に降り立ったばかりの俺はまだそのことに気づいていない。甘辛いイカ焼きを食べつつ、内獅村のエントランスを「ほえー」などと感嘆しながら見上げたり、広大なマンゴー畑に目を奪われるなどしながら集落へ向かっていた。このころ気温は23.5℃ほどで、連日の好天のお陰で俺の両腕は火傷のように真っ赤になっていた。そんな日だから猫を見つけるのも難渋するだろうと思っていたが、意外にも10分ほどで1匹目に遭遇できたので、この時点では相変わらず運がいいなどと呑気に考えていた(前回の記事はこちら)。
獅子郷の1匹目は農家の納屋でお昼寝中のキジ白。この辺りは小さな集落以外は山か畑しかないので、まあネズミ要員だろうなあ。
1匹目を見かけたのは海から近い内獅村だったが、2匹目以降は少し内陸の南世村。それでも思ったより見つけられないのは、ちょうど南世村の集会場で大きなイベントが行われて、大音響のカラオケが村中に響き渡っていたからかも知れない。旅する時はなるべく週末を避けるようにしているが、今回はこの日が土曜日だった。
今日のお昼ご飯はエリンギやエンドウ豆、それに鶏肉や豚肉も入っているようだ。三毛とさっきの茶トラ白はティッピングが入っているから母子かも知れない。
逃走を図ったものの、逃げ切らずに振り向いた。この習性はホント助かる。
散歩スタートからちょうど1時間。そろそろお腹に違和感を感じつつ、ゴール地点の南勢橋バス停へ向かっていると、大きなエントランスのたもとに猫発見。あれは明らかにマンゴー畑のネズミ番!
「今年芒果收成不好、所以不管是老鼠還是我們、都沒什麼機會出場啦(今年はマンゴーが不作でさ、ネズミも僕たちもあまり出番がないんだよ)」
南勢橋から1773路のバスに乗り、20分ほどで枋寮に到着。というか間違って一つ手前の枋寮醫院で降りてしまって少し慌てたが、ここは今回で6回目になる見知った土地。とりあえず緩くなったお腹を何とかしないと散歩どころではないので枋寮駅に向かったが、土曜日のせいかトイレが混雑していてなかなか空かない。ようやく個室に入って盛大なる土石流をぶちかまし、やっと散歩に出たと思ったら冒頭に書いたココナツジュースが追い討ちとなり、次から次へと便意が催してしまいには水様便しか出なくなってしまった。こうなってはもはや呑気に猫を探すどころではない。
しかし世の中悪いことばかりではない。枋寮に立ち寄った目的だけはきっちり果たせたのだから、総合的にはツイていたのである。
前回の記事でも少し触れた、中山路沿いの商店で暮らすまだらの黒白。念願叶って2018年1月以来の再会成る!
7年2ヶ月ぶりの匂いじゃさすがに覚えてないか。
懐くわけでもない大人しい猫だが、Googleストリートビューに写っている姿を見て、会いたい思いだけが募っていた。願いが叶って良かった。
最後の力を振り絞って歩いた枋寮の5kmで会った猫は2匹。そして2匹目もミラクルアゲイン!
さっきのまだら黒白からさらに1年遡って、この子は2017年1月以来の8年2ヶ月ぶり。
毛繕いに忙しそうで前回ほど無邪気にじゃれてこなかったけど、人懐っこい性格は変わっていないようだった。8年前にこいつのねぐらだった屋根付きの歩道は現在魚市場になっており、大がかりな工事もあっただろうから、再会することはとっくの昔に諦めていた。忘れられずにいた子が元気でいてくれて涙が出るほど嬉しい。
動画はこちら(8年前の動画へのリンクもあり)。そして今回の台湾旅行はこれでほぼおしまい。
枋寮では4時間の滞在時間を確保していたが、ポンポン痛い痛い+吐き気とだるさでギブアップ。17:18発の莒光号で高雄へ移動し、西子灣の碧港良居商旅にはどうにかたどり着いたものの、ベッドに飛び込んだあとは生ける屍となってせっかく買ったビールは手も付けずに部屋に置いてきたし、高雄から成田へ飛ぶ中華航空126便では機内食も断ってフライトの大部分を気絶して過ごした。帰国日の3月23日はホテルを出てから飛行機までの時間を旗津島散歩に費やすつもりだったが、とても歩き回れる体調ではなく、余った時間は高雄軽軌(LRT)に乗って行ったり来たりして時間を潰した。
帰国日唯一の猫、そして台湾旅行の最後に見かけた猫は若い黒。LRTの哈瑪星電停近くをねぐらにしている子。
「猫旅」ではない台湾旅行はこのようにして尻切れトンボで終わった。しかしあれから1ヶ月半が経過して、次なる台湾旅行のパーペキな旅程がすでに完成しているのである。何でもかんでも突っ込んだ結果、6泊7日になってしまって実現可能性は高くないが、少なくとも不用意に屋台飯を食べるのをやめることだけは確定している。
今回の旅行で遭遇した猫は69匹だった。帰国してから記事化する労力を考えれば、このぐらいにしておくのがちょうどいいのかも知れない。