昨夜はサチコの夢を見た。といっても現れたのは俺の知るサチコではなく、2003年に我が家に迷い込んでくるよりも前のサチコらしかった。「らしかった」というのは、子猫時代のサチコは写真がほとんど残っていないため夢の中でも姿形がはっきりせず、しかもかなり奇抜で壮大なストーリーだったからだ。
生後間もなく、シルクロードをゆくアラブ商人のキャラバン隊に拾われたサチコは、中国での交易を終えて祖国へ帰る商人たちに可愛がられながら西へ西へと向かっていた。小さな村を通りすぎるたびに一人また一人とメンバーが減っていき、ついに国境を越えてペルシャ国へたどり着いた時、最後に一人残った商人は「身寄りもないんじゃ可哀想だから、うちで一緒に暮らしてはどうか」と誘ってくれた。しかしなぜかサチコはそれを断って元来た方へ引き返し、朝鮮半島から日本海を渡り、さらに埼玉国から柳瀬川を渡って新秋津のとある一軒家にたどり着いた。2003年8月29日は最高気温33.9℃と暑い日だったが、玄関前に張り付いて朝から晩まで鳴き続けていたところ、仕事から帰った奥さんが抱きかかえて家に入れてくれたという次第。サチコがどこで生まれ、どんな理由で一人ぼっちになり、どうやってうちにたどり着いたのか、まったく分からないからこそ見られる夢だったのかも知れない。
そんなわけで朝4時すぎに目が覚めてしまったので、月曜日だというのに仕事前に猫サイクリングへ出かけることになった。昨夜は熱帯夜で最低気温26.4℃と寝苦しく、猫なんか探したら仕事中に気絶することは明らかだったが、サチコの夢の続きを見られるなら悪くない。
6時少し前に北野駅から自転車を漕ぎ出して間もなく、民家の塀の上で2匹の猫がうにゃうにゃ言っているのが見えてきた。
こちらは2023年9月以来の三毛ちゃん。朝から蒸し暑くて汗だくだけど来て良かったー。
この辺りには複数の黒がいるけど、この子はたぶん2023年7月以来の黒。視線が逸れているのはなぜかというと……、
同じ家の敷地にお友達がいるから。カメラを向けられたからって艶めかしくしなくてもいいんですよ。おじさんはデラべっぴんのカメラマンじゃないからね。
隣の家との隙間に黒いのがさらに1匹。こちらは去年の5月以来。
そしてこの家は懐かしいポンちゃんが暮らしていた家でもある。飼い主夫婦はずいぶん可愛がっていたようだし、亡くしてからはやっぱりあの子の夢を見たんだろうなあ。
近寄る素振りを見せただけで車の下へ潜ってしまって歯が立たない。
「イノシシ注意」の貼り紙を見ておののいていると、まさに野生動物を思わせる毛むくじゃらの物体がこちらを見つめていて腰を抜かしそうになった。
まあいつもの長毛キジトラなんだけれども。長い被毛を持て余し気味の顔つき。
懐いているわけではないので、目の前で伏せることはあまりないんだが、昨夜は夜通し暑かったのでバテているのかも。その出で立ちには同情するわ。
といっても今朝は日も差していないのに車の下で伸びているのが多く、夜間に涼めないとなるとさすがの猫も体が休まらないようだ。
塀の向こうから猫の鳴き声が聞こえてくる。甘い声で朝ご飯をねだっているのは巨大三毛か、はたまたその取り巻きかも知れないが、残念ながら今朝も会えずじまいだった。人懐っこい茶トラ白は車の下で伸びていて、呼んでも応答がなかった。
最後に少しだけ猫ヶ丘に顔を出して今朝の猫関係業務はおしまい。
スッパニャンも見かけたけど食事中だったのでスルーした。せっかく平山に来たなら無人販売所のトマトを買って帰りたかったが、朝早すぎてどこも空っぽ。とはいえ日中は軽く35℃を超えているのでおいそれと外出できないんだよなあ。去年まで夜勤前の猫散歩なんてよく死なずにやっていたなあと我ながら思う。