風邪が治らないんである。16時間近く拘束される夜勤の前後に猫を探して歩き回っているのだから、治るわけがないんである。急性症状はないので、たぶんインフルエンザではないと思うが、罹ったことがないので分からん。肺炎には気をつけている。
夜間はそれなりに体温が上がったらしく、寒気がしてだるかったが、仕事を終えて外に出るととてもいい天気で、日差しがぽかぽかして暖かかった。寒くなければ特に辛いこともないので、職場から朝霞までのつもりで始めた散歩を北朝霞まで延長した。夜になったらしっぺ返しが来るかも知れないが、それはその時になってからゆっくり考えれば良い。
歩き始めて約10分。最初の猫拠点に差しかかると、庇の上で気持ち良さそうにしているのを見つけた。
何となく目つきがとろんとしている。今なら俺も君たちと同じような体温だから、気持ちが分かるよ(ホントか?)。
時々ここで見かける三毛。最近あまり来ていなかったが、元気にしているようだ。
近寄ったら少し奥へ引っ込んだ。ほかにも数匹いるはずの仲間たちは見なかった。
日なたを探して彷徨っていたらしい。お寛ぎのところ済みませんね。
黒白を撮り終えて振り向くと、足元にもう1匹。注意深くこちらを見つめている。
ここではほかにも何匹か顔を出したが、俺に気づくなりみんな逃げてしまった。そのうちまた来てみる。
茶系ファミリーの家では長毛の2匹が日なたぼっこ中。ほかのメンバーは恐らく車の下か猫ボックスで寝ているものと思われる。
朝霞駅を過ぎて延長区間に入ったが、初めて歩く道のため思うように見つけられない。風邪のためテンションが下がるのがいつもより早く、猫背になってとぼとぼ歩いていると、屋根の上で寛ぐ小動物が目に入ってきた。
農家の納屋は放っておくとネズミだらけになってしまう。猫たちには重要な任務があるので、俺と遊んでいる暇などないものと思われる。
北朝霞というのは、東武東上線で言うところの朝霞台であって、ここへ至るには黒目川の河岸段丘を避けて通ることはできない。軋む体に鞭打って段丘の坂道を下って上って、何となく平らな感じの住宅街にたどり着くと、とあるマンションの敷地に黒白がいた。
「不審な2本足の動物が熱っぽい眼差しで私を見つめているけど、異種間恋愛はきっとうまく行かないわ」
三毛の元へ駆けつけたかに思えたクロちゃんは、道を逸れて、俺の歩く方について来る。
にゃ、にゃと短い声で鳴いて、すりすりして来る子。三毛ちゃんにはあとでゆっくり怒られてください。
最後に見かけたのは姉妹と思しき三毛。ちらっとこちらを一瞥すると、興味なさげに道路を渡ってどこかへ行ってしまった。