「愛の味がします」と友達に教えられ、かねてから行きたかった稲城のケーキ屋さんを訪ねるついでに猫を探してきた。
稲城駅から歩いて5分という立地は、夜勤明けの猫散歩にも適していると思っていたが、実績のない丘陵地帯を仕事帰りに歩くというのは思いのほか億劫で、結局は休日を使って出かけることになった。ついでに日勤前に立ち寄ることが難しい、はるひ野〜黒川〜若葉台のトライアングルゾーンも追加することにして、家を出たのは8時前。雲が厚くて暗いことが予想されたため、この季節の朝の散歩としてはかなり遅い出発となった。はるひ野を追加したのは日の丸猫に会いたかったからだが、先に結果を書いてしまうと今日も願いは叶わなかった。
猫ヶ丘の高台を回ってバス停へ向かっていると、急坂に沿って建つ家の塀に猫が鎮座していた。
猫になんか興味のないただの通行人のふりをして、通り過ぎざまにすかさず一枚。そんな技が必要なほど臆病じゃなかった?
森の中の一軒家は猫民家。あそこに見えるはセミロングのクリーム猫だ。去年の11月中旬、日の暮れた仕事帰りに見かけて以来。
……そこへ巡回帰りと思しきキジトラが現れた。今日は日曜日だから、遅めの朝食なのかしら。
多摩センター行きのバスに乗り、小田急に乗り換えて、はるひ野に着いたのは8:45。梅雨空が続いてるせいで、早起きして洗濯しようなどという気にならないのか、日曜日の割に静かな住宅街に猫たちはいた。
ここは梨畑を望む高台の猫拠点で、初めて訪れたのは割と最近の去年10月(その時の記事はこちら)。なのでこの子たちは一応みんな顔見知りだ。
猫たちの佇む姿をしばらく眺めたあと、立ち去ろうとして階段を下りると、猫たちが上から見送ってくれた。ご飯をあげたわけでも、じゃらして遊んだわけでもなく、ただ眺めていただけなのに、意外に俺のこと気にしてくれていたんだな。なんか嬉しいかも。
通りがかりのとあるアパート。どういうわけか、階段の下に人懐っこいプレーリードッグがいて、「そんなところをうろうろしていたら、猫に見つかってやられちゃうよ」と話しかけ、周囲を見渡すと果たして猫がいるではないか。
逃げ腰だけど穏やかな性格のよう。ちょっとだけモデルになっておくれよ。
野花と一緒に撮らせてもらった。そうこうしているうちにアパートのプレーリードッグはいなくなっていた。
なだらかな丘の上の住宅街から坂を下り、谷筋の街道を渡れば再び上り坂となる。これじゃ夜勤明けに歩くのはきついよなーなどと考えながら、何気なく駐車場の向こうを見ると猫がいた。
まだ若い感じのキジトラ。きれいな毛並みを見せて欲しくて、少し横に移動したら、見えなくなるまで逃げてしまった。
若葉台から再び電車に乗って、京王よみうりランド駅に降り立ったのは10時半。ちょうどケーキ屋さんの開店時刻となり、猫を探しながら1駅戻る形で歩いていると、外階段からこちらを見つめる視線を感じた。
湿っぽい表情に見えるのは、上まぶたの毛が睫毛のように伸びていて、三白眼になっているから。我が家のマコちゃんにもこの毛があるが、サチコはほとんど目立たず、まったくない子もいる。獣医眼科学の本には「猫の下まぶたには睫毛がない」と書かれていて、上まぶたについては「見当たらない」と微妙な表現になっているそうだ。
睫毛であるなら、異物などから目を守る睫毛反射があるはずと思い、マコちゃんで実験したところ、綿棒で軽く触れただけで目を閉じた。睫毛には気流を逸らして目の水分の蒸発を防いだり、微細なゴミが入らないようにする働きもあるそうだから、それらを満たすものは睫毛と呼んで差し支えないのではないだろうか。