数日前の夜勤前、久しぶりにいきなりステーキで食事したのだが、それなりに大量の肉を食べたにもかかわらず、何となく満たされないのはなぜだろうと考えた結果、肉が臭くないからという結論に行き着いた。誇り高き道産子は肉塊をもりもり食べるだけではダメで、その肉が獣臭くないと満足できないのだった。なので明日は、散歩のついでに福生の西友でラム肉を買ってくる。より獣臭いマトンではないのが残念だが、自宅から行き来できる範囲で羊肉が手に入るのは、今のところ福生がいちばん近くて行きやすい。通販ならマトンだろうが何だろうが簡単に買えるが、臭い肉を欲しているのは人間二人と猫一匹であり、クール便の送料を考えるとかなり割高になってしまう。
明日の肉々デーに備えて、今日は一歩も外へ出ることなく、家に引きこもって過ごした。朝から冴えなかった天気は午後にはさらに悪くなり、一部地域では雨も降ったようだが、外出していないので正確なところは分からない。猫の方は先月21日の奥多摩散歩の続きを紹介する。今日の記事は3回連載のうちの2回目となる(1回目はこちら)。
日原川の深い渓谷を挟み、東西の斜面にへばりつくようにして氷川の集落は展開している。平地はほとんどなく、西側から東側へ移動するだけでも、急な坂道を降りて登らなければならず息が上がる。それでも頑張って行き来するのは、どちらにも可愛らしいのがいるからだが、人懐っこいのは少数派で、たいていは目が合っただけで遥か彼方へ逃げてしまう。
近寄ってみると、まだ幼いキジ白。なだめすかして何とか止まってもらった。
川向こうの西側集落を望む。山の中腹に白いガードレールが見えるのは、小河内ダム建設時に使用された通称・水根貨物線の廃線跡だ(参考写真)。住宅街はあの辺りにも展開しているので、いずれ猫を探しに訪ねてみたいと思っているが、そこへ至るまでの坂が急すぎて、いつもヘタレている。こちら側に猫がいるのだから、あちら側にいないという理屈はないのであるが。
昨日の記事で紹介したチンチラ三毛のように、ティッピングにより毛の生え際が白く抜けて、薄い色合いに変化した三毛。白斑が大きいので、黒い部分がタビー(A遺伝子座の遺伝子型がA-)なのか、それとも無地(同aa)なのか、判別することは難しい。
ちなみに初めてこの子に会ったのは、子猫時代の2018年10月。たった2年で女帝の風格だ。
8時前にスタートした氷川の散歩は2時間弱で終了。山間の狭隘路を車で走り抜け、次の経由地である猫集落に到着したのは10時を少し回ったころだった。ウイルス騒ぎが本格化してから訪れるのは初めてであり、住人に拒絶される可能性も排除できなかったが、もともと静かな集落はいつにも増して深閑としていて、数匹の子猫が見慣れないニンゲンを凝視しているのみだった。
山並みを望む猫ポイントでは懐かしい光景が再現されていた。これは7年前にも見た風景。
7年前にタイムスリップしたようで感無量だ。毛色からして、きっとあの時の猫の子孫なのだろうなあ。
猫の溜まり場を覗いてみると、案の定、小さいのがたくさん集まっていた。しばらく来ないうちにおめでたが続いたみたいね。
突然現れた未知の生き物(俺)に子猫たちが右往左往する中、とりわけ物怖じせず積極的だったのがこの子。呼んでもいないのに駆け寄ってきて、ごろごろすりすりを仕掛けてくる。
黒とのやり取りを見て実害がないと判断したか、みんな集まってきた。
この時俺はまだこの子の本当の力を知らなかった。こうして見ても、ひときわ立派な犬歯を持っていることが分かるが、それだけでなく、噛む力も普通の子猫のそれを遥かに凌駕していたのだった。
舐めてかかって差し出した左手をがぶっとやられて、手のひらと手の甲の両側に穴が開き、数時間後には熱を帯びてぱんぱんに腫れることになった。現場ではすぐに流水洗浄して安心していたが、猫咬傷の場合は犬歯が皮下にまで達するので、表面だけ洗っても意味がないらしい。咬傷事故は猫よりも犬の方が多いが、感染を合併するのは犬咬傷の5〜20%に対して、猫咬傷は80%以上に上るそうだ。帰宅してから病院に行き、破傷風トキソイド0.5mLを筋注してもらった上、処方された抗生物質(オーグメンチン配合錠250RS)を1日3回服用したが、完全に腫れが引くまで5日間程度を要した。
天真爛漫で人懐っこいのはこの子の一面。時に野生動物と対峙しなければならないこのような土地では、物怖じしない性格とこの咬合力が、生き抜くための強力な武器となるに違いない。
猫集落は次回へと続く。