茶トラ係長の旅立ち


立川市の猫

 「ん?」
立川市の猫

 がりがり。
立川市の猫

 くんくん。
立川市の猫

 「これはいつものお客さん。係長は出かけちゃって帰ってこないんだよ」
立川市の猫

立川市の猫

立川市の猫

 茶トラ係長は昨日、19年の生涯を閉じた。病院から戻らない係長を探して、スーダラ君は落ち葉の絨緞を嗅ぎ回り、そのうちそのまま寝てしまった。一人ぼっちになったことに、まだ気づいていないのだった。
立川市の猫

 係長のねぐらに花を手向けたあと、バス停へ向かうついでにトラ子さんの路地を訪ねてみた。いつもの場所で寛ぐのは相方のキジ白。
昭島市の猫

昭島市の猫

 短い鳴き声がして振り向くと、いつの間にかトラ子さんが出てきていた。
昭島市の猫

 ここで何度か会ううちに、トラ子さんがとても人懐っこい性格だと分かってきた。この街に住んでいる時は、出退勤時に通過する場所でしかなかったから、どうしても急ぎ足になってしまう。要するにアプローチが雑だったのだろうな。
昭島市の猫

昭島市の猫

 「お腹が空いたのよーん」
立川市の猫

 「ああっ、見られたっ。何でいっつも突然来るのよっ」
立川市の猫

 夕食を待ち切れずに転がる人妻三毛ちゃんの背後には、茶トラ白の旦那と、流れ者と思しきキジ白が並んでいた。
立川市の猫

 みんな元気そうで良かった。今日はちょっと顔を出しただけだからさ。
立川市の猫

 今日は先月29日の奥多摩散歩の続きを載せるつもりだったが、係長の訃報に接し、急遽予定を変更した。
 高齢で餌をあまり食べられず、関節炎で思うように体を動かせない係長にとって、冬の寒さはかなり堪えていたようだ。ねぐらを訪ねると、足を引きずりながら体を寄せてきて、片時も離れようとしなかった。きっと体を温めたかったのだろう。
 係長は根子岳へ旅立った。寒さに震えることは、もうない。
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