仕事初めが明日に迫った今日はなるべく時間が経つのが遅くなるよう、部屋の隅に籠もったまま猫を抱くなどして過ごした。来週は成人の日絡みで土曜日〜月曜日の三連休になっており、これに救われている人は多いと思うが、あいにく俺はそのどれかでサチコを病院に連れて行かなければならない。少し遠出したいとも思っているが、色々面倒になってきているので、実現するかどうかはその時になってみないと分からない。
猫の方は昨日に続いて御蔵島で見かけた子を。といってもカメラに収まったのは茶トラがもう1匹(つまり全部で3匹)で、そのほかにも黒が1匹とキジ白を1匹見かけたがどちらも敢えなく逃げられた。島内には猫の面倒を見ている家が何軒かあるようで、それらしい場所で出てくるのを待ってみたりもしたが、日没が迫っているのであまり悠長に構えていられず、最後の茶トラを見つけた時もすでにだいぶ暗くて写真撮影が難しくなっていた。
感度を上げているので写真がざらざらだけど、店先にちょこなんとしているのが見えているね。
とっとと逃げられると思っていたのに、蓋を開けてみたらその真逆。めっちゃ人懐っこくて写真が撮れないー!
行く先々に駆けてきて前足踏み踏みする子。土壇場でこんな子に会えるなんて、頑張ってここまで来た甲斐があったよー。
最後の2枚はじっとして坂の上を見つめている図。飼い主の運転らしき軽自動車が現れると、ものすごい勢いで走り去って二度と現れなかった。
この日泊まったのは御蔵荘という村営の宿泊施設で、宿泊客は俺だけだったらしく食事も入浴も心底ゆったり過ごせた。これまでの御蔵島チャレンジは基本的に日帰りを前提にしていて、東海汽船で早朝着〜ヘリコプターでお昼前に出発という旅程を組むことが多かったが、これは時間や費用の節約というよりも、島内の宿が少なすぎてなかなか予約が取れなかったからだ。とりわけ4月〜10月のオンシーズンは宿の方もイルカウォッチングやダイビング客を当て込んでおり、金にならない一人客が割り込むことは難しい。しかしさすがに海況が悪化する師走には客が減って大部分の民宿が休業期間に入るし、年の瀬も押し迫った小晦日ともなると島唯一のホテルとして人気の御蔵荘もすんなり予約できた。翌日の大晦日を含め、集落を歩いていても観光客と思しき人影は皆無だった。
残念だったのは天気で、30日夜半からの雨と強風は島を発つまで止まず、大晦日の朝も傘を持ちながら1時間半ほど散歩してみたものの空振り。隣の三宅島アメダスでは最大瞬間風速24.9m/sを観測しており、帰りの空路が欠航して年越しの夜を宿なしで過ごす羽目になることを心配していたが、島の人は気象情報を確認することもせずに「大丈夫ですよ」と言う。ヘリコプターも新中央航空の飛行機も有視界飛行なので、運航に直接影響するのは霧や雷雲であって、単なる強風なら台風レベルでも飛ぶのだそうだ。
そんなわけで翌31日の大晦日は20分遅れの東邦航空31便で御蔵島を発ち、経由地の三宅島に降り立ったのはちょうど正午。往路は大島を経由したのに、復路の経由地に三宅島を選んだのは立ち寄りたい場所があったからで、あわよくば坪田のフォーン白に会おうという魂胆。三宅島の猫はB遺伝子座およびD遺伝子座の劣性対立遺伝子頻度(b、blおよびd)が高く、灰色やクリームといった比較的オーソドックスな毛色はもちろん、チョコレートやフォーンといった外猫には極めて珍しい毛色が高頻度に見られる。坪田のフォーン白に再会することはもちろん、ほかにも珍しい毛色を観察できるかも知れず、御蔵島と同じレベルで期待値の高い寄り道だった。
夜明け前に三宅島直上を通過したらしき前線は東西に延びる停滞前線で、南下のスピードはゆっくりだったが天気は急速に回復した。三宅島空港から集落へ向かっているうちに空は晴れ渡り、乾いた芝生ではキジ白が寛いでいた。
手足ないないのキジ白は2023年10月にも見かけた子。というかあの時も伏せていたし、俺はこの子の手足を見たことがまだないのであった。
大白斑の相方は不在みたい。風が強いからどこかに隠れているのかな。
もし元気にしているなら、またあの物好きが来てたって伝えておいて。
この組み合わせも6月以来。ここで待っているといいことがあるんだね。
君が人懐っこくないのは分かっているよ。でも今日は君の相方に用があるんだ。
こちらはとても珍しいチョコレートトラ白。英語で言うところのchocolate mackerel tabby and whiteという毛色。黒と褐色の縦縞(と白斑)で構成される普通のキジ白はB遺伝子座の遺伝子型が野生型のB-で、これが劣性変異してbbまたはbblになると黒い部分がチョコレート色に赤茶ける。チョコレートトラは上池袋で見たことがあるが白斑入りはこの子が初めて。前回は逃げられてアップが撮れなかったし来てみて良かった。
そして次の三毛も6月以来の再会で、チョコレートトラ白同様に珍しい毛色。
なお天気は回復したが風は極めて強く、沿岸なので30m/sぐらい吹いている印象。
こちらの三毛はB遺伝子座の遺伝子型が変異して、黒い縞模様の部分がチョコレート色になっている。大白斑なので普通のキジ三毛との違いが分かりにくいが、この子は尻尾の先端までしっかりチョコレートになっていることから判別できる。元気そうで何より。
残念ながら坪田の人懐っこいフォーン白は不在のようで、ねぐらで見かけたのは警戒心の強い黒だけだった。
風の強い日だから猫が隠れてしまうのも仕方ない。まあでも午後から晴れてくれたから助かったよ。
御蔵島が片づいたことだし、今後ここへ来る機会はないだろうなあ。俺もう東海汽船は体力的にキツいんだよ……。
三宅島で最後に見かけたのはddという遺伝子型を持つ灰白。最後までこの島の猫の毛色は特徴的だった。
こうして2024年のぎりぎりまでかかって伊豆諸島のすべての有人島で猫に会い、東京都の自治体制覇という点ではついにラスボス・小笠原村を残すだけとなった。果たして俺はいるかどうかも分からない猫に会うために最低でも1週間かそれ以上の休暇を取り、10数万円の費用をかけておがさわら丸に乗るのだろうか。その気になれば飛行機とヘリコプターで日帰りできる御蔵島ならまだしも、都心から1,000km、船で往復するだけで48時間もかかるところへ行って見つけられなかったら立ち直れない。2022年夏から続けてきたこのシリーズ、しばらく長考に入るので一つよろしく。