台湾猫旅3日目の夜、俺は台湾最南端の地・恆春鎮は鵝鑾鼻の民宿で寝ていた(前回の記事はこちら)。強い風が窓を叩く音で度々目覚め、iPhoneの天気予報を見ると、向こう5日間すべての日に強風マークがついていた。事前に調べたところ、恆春は冬の季節風が非常に強い土地で、中央山脈から吹き下ろすこの風を特に「落山風」とか「過山風」と呼ぶそうだ。ひどい時はスクーターで走ることもできず、家屋が破壊されたりもする。恆春空港に至っては強風による欠航が多すぎて路線の撤退が相次ぎ、唯一残る立榮航空の台北松山便も、2014年から休止されたまま再開の見込みはない。空港職員は「暇すぎて申し訳ない」とコメントしているそうだ。
翌1月11日になっても風は収まらなかったが、天気予報を見る限り、雨に降られることはなさそうだった。台湾猫旅4日目となるこの日は鵝鑾鼻、恆春の順に散歩したあと、計画では枋野號誌站(枋野信号場)、枋寮、太麻里と回って台東に投宿する予定だったが、前夜のうちに旅程の変更を決めた。そもそも台東を旅程に加えたのは東西南北完訪のためで、ぜひ行きたいかと言われるとそうでもない。結局この日の旅程は鵝鑾鼻、恆春、枋寮、南州の4地点で猫を探したあと、初日と同じ虎尾の上毅飯店に投宿し、帰国日の朝は虎尾散歩に再挑戦することにした。
さて、散歩の方は鵝鑾鼻がスカだったため、8:00発の高雄客運9188系統に乗り、恆春の中心街に位置する恆春轉運站で降車。強風下の猫探しを開始した。
まずは行き止まりの路地で1匹発見。
怪訝そうな顔でこちらを窺っているのは、まだ若い茶トラだった。最初の写真から徐々に後退しているので、あと一歩くらいで茂みの奥へ逃げるはず。
とある廃屋の敷地を覗くと、倒れた木の幹に2匹の猫が座っていた(分かりにくすぎるので、マウスオーバーで場所を表示)。
例年ならクラシックタビー率の高い台湾猫旅だが、今回はこの子が初めて。極めてアンフレンドリーな顔つきな上に、もう1匹は丸くなって寝ている。
瓦礫の上の2匹。茶トラ白も目覚めて出てきたが、最後まで目線がもらえなかった。
次の猫は地面で香箱を組む茶トラ白。記事を書きながら、中国語で「香箱を組む」に相当する言葉があるのか気になって、調べてみたが見つけられなかった。直訳すると組裝香盒だと思うが、慣用句だからたぶんそういう言い方はしない。英語ではcatloaf(スライスする前の食パンの塊)と言うそうだ。
逃げるかと思ったら意外に近寄れた。前足を出したら損をするとでも思っているのか、頑なに香箱を崩さない。
恆春には清朝末期の1880年に建造された古城が残り、数次にわたる地震の被害を受けて一部損傷しているものの、街の中心部は今もレンガ造りの長い城壁に囲まれている。その城壁に沿う遊歩道をぶらぶら歩いていると、道端にうずくまる1匹の猫を発見した。
私は日本から来た旅行者です。一言ご挨拶申し上げに来ましたよ。
道端から茶トラ白が顔を出した。強い風が日本製高級カリカリの香りを運んだかな。
塀から下りてこないと思ったら、上にカリカリが置いてあったのだった。台湾人は動物に対してとても大らかで、こんな感じで街のあちこちに猫や犬のご飯が置いてある。猫は縄張りの序列に従って食べていると思うが、犬(野良犬)の生態はよく分からない。
子猫かと思っていたら、おっぱいが張っている。お母さん猫かな。
那個可愛い的小姐、你現在一個人嗎?(そこの可愛いお姉さん、今一人?)
あら引っ込んじゃった。ナンパ失敗? それともまだ発音が悪い?
恆春の猫散歩は可愛らしい三毛ちゃんで終了。このあと恆春10:45発の墾丁快線に乗り、次の散歩地である枋寮へと出発した。甘くて美味しい台湾バナナを頬張りつつ、車窓から眺める南シナ海はどこまでも青い。