山間に秋は訪れ(2)


青梅市の猫

 今朝も早起きして散歩するつもりだったが、トタン屋根を叩く雨音で諦めた。雨は早いうちに止んだようだが、一度休むと決めたことを覆すのはとても億劫で、ようやく布団から這い出たのは10時すぎ。お昼前にコンビニへ買い物に出たので、ついでに古いPENTAX SVを引っ張り出して、猫ヶ丘の猫を何匹か撮影してきた。言うまでもなくフォーカスから何からマニュアルで、加えてこの機種には露出計すらついていないので、すべて勘と度胸でやるほかない。その場で撮影結果が分からないのももどかしく、明日の仕事帰りにでもフィルムを現像に出してくる。小学生の時と同じ機材を40年ぶりに使って、果たしてどんな写真が撮れているだろう。
 今日の記事は、昨日の奥多摩猫散歩で見かけた猫たちの後半編。基本的に仕掛かりの写真は時系列順に片付けていく方針なので、順番からすれば今月4日の輪島猫散歩になるんだが、それより記事の連続性の方を優先しているので、昨日の続きが先となる。最初に紹介する写真は、濡れ縁で見かけた猫家族の残り2点。規定に従って写真29点で記事をぶった切ったため、中途半端になってしまった。
奥多摩町の猫

 子猫は何匹かいたが、母猫は分からずじまい。見た目で明らかにメスと分かるのは、このサビと、とっとと逃げた三毛だけだった。
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 今日はここが最初の場面転換。半年ぶりに訪れた山間の猫集落で最初に発見したのは、牛柄の猫の背中だった。
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「ん?」
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 俺の知る限り、こいつは集落で最も古参の黒白。初めて会ったのは5年前の秋、2013年10月に遡る。
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 視野を広くして山並みを眺めていると、細い杣道をちょこちょこと猫が通る。あれはまだ若そうだから、初めましての子かな。
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 下の段には常駐の茶トラ白。その左側に建つ茅葺の家は、90歳すぎの婆さんが一人で守っていたが、しばらく前から人の気配が消えた。江戸時代中期〜後期ごろから続く兜造の養蚕農家は、ついにあるじを失い、今後静かに朽ちていくものと思われる。猫集落はもはや限界集落なのだった。
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「ここも淋しくなってしまって、もう僕らが繁殖することも難しいだろうね」
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 下の縄張りに残る猫は、茶トラ白とキジ白だけのようだ。悠久の猫の血筋もこの代限りか。
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 急坂をしばらく上るとかまどを備えた炭焼き小屋がある。まだ煙の立たない小屋の前には1匹のキジ白が佇んでいた(動画あり)。
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 竈に火が入っていないから、ご飯は当分先だと思うよ。
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「その懐のふくらみは何だ」
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 バレてましたか。じゃあちょっとだけ……。
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 上の段に戻ると、縄張りを見張るキジ白がいた。
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 とても警戒心の強い子。坂が急なので、広い範囲を逃げ回られるととてもキツい。追うより待つ方が利口だと気づいた時には、体力がゼロになっていた。
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「少年に学ばざれば老後に知らず、だね。それじゃばいばい」
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 猫集落をあとにしたのは10時すぎ。再びハンドルを握って氷川の街を通りすぎ、御岳の山腹トリオ(の残党のキジ白)を訪ねてみたが、あいにく不在。車の返却まで時間があったので、青梅の山岳住宅地へ寄り道してみた。
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 呼ぶと近寄ってくるけど、間合いが大きすぎ。もう少し信用してください。
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 駅から離れた高台に、どういうわけか線路が敷いてあって、そこには猫も住みついている。
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 こちら側は行き止まり。意味を成さないこの分岐器が動くことはなく、人が立ち入ることもなく、猫にとっては居心地のいい場所だ。
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 実はここ、鉄道公園の敷地。かつてここには「のら」という名の猫園長がいて、公園の運営者により正式に任命され職務に励んでいたが、2016年7月を最後に姿を見なくなり、ネット上を検索しても、2017年以降の消息が分からなくなっていた。この日は何年かぶりに営業時間内に鉄道公園を訪れたので、職員に事情を聞いてみたところ、高齢のため近所の愛猫家に引き取られ、現在は悠々自適の生活を送っているとのことだった。
 のらが園長に任命されたのは2010年9月。野良ゆえに年齢不詳であったものの、鉄道公園に住みついたのは2003年ごろだというから、少なくとも15〜16歳にはなっているはずだ。園長職の報酬で食べるに困らないとはいえ、老齢の外暮らしは厳しいと判断されたのだろう。
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