UC Davis VGLに依頼していたサチコの遺伝子検査の結果が今日届いた。それによるとサチコのA、B、C、D遺伝子座の遺伝子型はすべて優性ホモ接合。その結果、表現型で判断できるW、O、I遺伝子座と併せ、サチコの毛色の遺伝子型は「ww oY AA BB CC ii DD Ss」と判明した。野生型であるキジトラとの相違点は白斑の有無、つまりS遺伝子座の接合型のみということになる。
一つ意外だったのはC遺伝子座が野生型の優性ホモ接合CCだったことだ。この遺伝子が劣性(cscsなど)に変異するとシャム猫に見られるカラーポイントの毛色を発現するのだが、我が国の外猫にはこの劣性遺伝子が広く浸透していて、優性の法則により外見は普通の毛色に見えても、潜在的に(つまりヘテロ接合Ccsなどで)劣性遺伝子を持つ個体が非常に多いと言われている。これは一部の愛猫家の間で「和猫の危機」と言われている事象の一つで、その原因は高度経済成長とともに起こったシャム猫の大流行にある。第二次大戦後、進駐軍によってもたらされたシャム猫は、同時に持ち込まれたスピッツ犬とともに、我が国に一大ペットブームを巻き起こした。当時、猫を完全室内飼いする家庭は少なく、流行の裏で捨てられる個体も多かったのだろう。それらが外猫と交雑を繰り返したため、もともと日本には存在しなかったとされるcs遺伝子を受け継ぎ、交配の際に劣性ホモ接合となってカラーポイントを発現する外猫が激増した。なので、もしかしたらサチコも劣性遺伝子をヘテロで隠し持っているのではないかと考えていたのである。
この手の話はどうしても長くなってしまうので、続きは後日また書く。なお、カラーポイントを発現する劣性対立遺伝子は、csのほかにca、cb、cm、cがあるとされるがまだ完全には解明されていない。これらの変異は繁殖家の経験から推定されていて、毛色を白くすることや、程度の差こそあれ体温の低い部位に対してうまく働かないことは人工交配により確かめられている(最劣性のcは完全なアルビノ)。
今日は最高気温35.0℃で再び苦行散歩となったが、八王子駅周辺を歩き回って、どうにか5匹の猫に会うことができた。
茶トラ白に墨汁をぶちまけたような三毛。トイレを急いでいるのか、ほんの少しこちらを振り向いただけで、奥の方へ姿を消した。