「謝謝」
「好」
「謝謝」
「好」
雨粒の当たる車窓を眺めていると、客と運転士のやり取りが聞こえてくる。台湾の人々は謝謝という感謝の言葉をためらいなく使い、路線バスが停留所に着いた時もその例外ではない。雨は昨夜から降り続いていて、朝早くに漁港を散歩している時も止まなかった。40分ほど頑張って何匹かの猫を見つけたが、雨が強まってきたので散歩は断念。バス停まで走って南方澳8:00発の1766路に飛び乗って今に至る。
2019年11月29日、台湾猫旅の最終日はこのようにして始まった(前回の記事はこちら)。ほかの客に倣い、運転士に礼を言ってバスを降りた2時間あまり前、俺は南方澳の民宿を出発し、雨の内埤漁港を猫を探して歩き回っていた。周辺は雨雲が垂れ込めてかなり暗く、猫など出ていそうな雰囲気ではなかったが、1匹目は割とすぐに見つかった。7:20のことだった。
ここは猫の集会所だったらしく、こちらを睨むキジトラの背後からも、どたばたニャーニャー聞こえてきたが、姿は見えなかった。
内埤漁港は蘇澳港の最も奥まった場所にあり、海面は静かでうねりも来ない。漁船の出入りがないせいか人影は少なく、雨さえ降らなければ、もっとたくさんの猫が出歩いているものと思われる。
最後にもう1匹、トラックの下のキジトラを見つけたところでギブアップ。これ以上カメラを濡らすのも自分が濡れるのも無理なので、とりあえずいちばん近いバス停に行って、何でもいいから来たバスに乗ってしまうことにした。
ギブアップしたのが7:51で、直近のバスの発車時刻は8:00。バス停までの800mを走ったり休んだりしながら何とか間に合って、ぜいぜい言いながらLED表示を見ると1766と書いてあった。
1766路はもともと乗る予定の路線だったが、雨でヘタレたせいで、時間は1時間半も早まった。このまま乗っていれば羅東、宜蘭、礁溪と北上していくので、天気を見ながら降りる場所を決めればいい。せめて服が乾くまでは乗っていようと思い、雨に濡れた車窓を眺めていると、聞くとはなしに謝謝、好といった乗客と運転士のやり取りが耳に入ってきた。
結局、次の散歩地に選んだのは冬山だった。バスに乗っていたのは20分あまりだったが、天気はその間に回復の兆しを見せ、少なくとも雨が止んでいることは車内からも分かった。降車ボタンを押して止まったバス停には冬山郷と書かれた貼り紙があった。バスは台9線の追い越し車線を突っ走っており、押すのがもう少し遅かったら通過されるところだった。
冬山は日本で言うところの村にあたり、人口は53,000人ほど。駅前で猫がお昼寝しているような長閑な街だった。
冬山もさっきまで雨だったようだが、猫はもう外に出てまったりしている。
鄙びた感じの住宅街を通り抜けていると、車の上に猫の背中を発見。
黒白はとっとと逃げて、三毛は車の下でお澄まし。南方澳での遅れを取り戻すべく、冬山郷で頑張ってみることにして、続きは次回へ。台湾猫旅は残り4回。