キジトラというのは英語でbrown mackerel tabbyと言われるように、全体的には焦げ茶色のように見えるが、一本一本の毛には黒と褐色の層があり、被毛全体は黒い縦縞模様に覆われている。イエネコの先祖であるリビアヤマネコが纏っているのもこの毛色で、同種の生息域において最も広範に観察できることから「野生型」とも呼ばれる。
ところが、リビアヤマネコでもイエネコのキジトラでも、見慣れた黒と褐色ではなく、濃褐色と薄褐色の毛色で構成された個体をしばしば見かける。つまり縦縞が黒ではなく濃褐色なのである。時には褐色というより、もっと赤茶けた色合いの個体もいて、俺はそれらをO遺伝子由来のレッドと見間違えて、二毛(白斑があれば三毛)に分類していたこともあった。このブログでは美人さんや美人さんの妹がそれに当たり、現在はキジ白にタグ付けして分類しているが、当初は三毛だと思っていた。
今日の散歩で最初に見かけたキジトラも縞模様が黒ではなく、濃褐色と薄褐色で構成されているが、色々と調べたところ、どうもこの毛色は食餌の栄養素が関係しているらしいことが分かった。
台湾ではむしろこっちの方が多いくらいだったけどね(一例)。
こうした毛色を発現するのは、食餌に含まれるチロシンが少ないことが原因らしい。チロシン摂取量の少ない猫は、本来黒い毛が赤茶けることが分かっているそうだ。また、チロシン摂取量の少ない母猫から生まれた子猫も毛色が赤茶けるとのこと。猫のカリカリにはチロシンが含まれているものが多いが、それ以外の食べもので生活している猫は、摂取量の少ないケースがあるのかも知れない。人間の食材で分かりやすいのは、時間の経った納豆にできるブツブツがチロシンだそうだ。毛色の薄い猫には納豆が効くとか?
今日の散歩コースは日野から高幡不動まで。初めてのエリアでキジトラ発見。
黒い部分がちゃんと黒い子。ちなみにキジ色が赤茶ける原因はチロシンだけではなく、B遺伝子が劣性に変異してチョコレート色になっている可能性もあるし、E遺伝子が劣性に変異してアンバーになっている可能性もあるし、アビシニアンのようにルーファスを発現しているのかも知れない。恐らく毛色もそれぞれ微妙に違うのだろうが、色見本があるわけではないので、外で見かけてもまったく区別がつかない。
淋しい結果だが新規開拓はこんなもの。カメラに収まった以外にも6匹スルーしているし、猫民家を見つけたし、実際はもう少し張り合いのある散歩だった。