「なにさらしてけつかんねん」は、大阪弁の中でもあまり上品ではない言葉として一部の人に知られているが、日常的に使われているわけではないようだ。話し言葉というのは短くて簡潔なものが好まれるので、緊迫した場面で相手を威嚇しようという時に、「なにさらしてけつかんねん」ではまどろっこしい。大阪出身の知り合いがいないので分からないが、実際は「なにしとんねん」あたりではないかと思う。同じことを東京で言うなら「なにしてやがる」だろうか。
この言葉は若いころの父がよく使っていた。本気で怒ったり喧嘩腰になった時ではなく、例えば俺が試験でケアレスミスをしたり、笑って許される程度の悪ふざけをした時に、「なにしてけつかる」とたしなめられた。北海道には開拓時代に関西から入植してきた人がたくさんいるので、そこから広がるうちに、オリジナルよりも柔らかな意味に変化したのだろう。俺は父の使うこの言葉が何となく好きだった。
先日この「なにさらしてけつかんねん」が猫のイラストのバッジになっていることを知り(のちにマグネットと判明)、欲しくなって探してみたものの、ネット通販では見つけられなかった。色々検索したところ、新世界の吉本ショップにあることが分かったので、この二連休を利用して買いに行くことにした。そんな理由で大阪くんだりまで行くようなバカな真似は俺のお家芸であるし、台湾に行けなくなって旅費が余ってもいた。
大阪城近くの安ホテルに前泊し、そこを起点に目的地を通天閣と定めて散歩を開始したのは6時ちょうど。浪花の猫は10分ほどで現れた。
19歳で初めて大阪に来た時もおっちゃん呼ばわりされたな。大阪って面白い街だな。
まだ日の差さない細い路地で猫のお尻を発見。ちょっと待ってー。
若いキジトラはものすごく警戒心が強くて、ちょっとでも近寄る素振りを見せると、アパートの通路の奥へ逃げてしまう。この写真は逃げたり戻ったりを何度か繰り返したあと。
背後に気配を感じて振り向くと、さっきのキジトラが睨んでいた。心配して戻ってきたのかな。
次の路地は古めかしい雰囲気。子猫がたくさん潜んでいたが一瞬ですべて逃げた。奥に見えているのは、逃げ足の遅い1匹と、様子を見に来た大人の猫。
さっきの路地のキジトラもそうだったけど、被毛がずいぶん赤茶けている。チロシン足りないみたいだから牛乳飲んだ方がいいよ。
俺が大阪を訪れるのは生涯で2度目か3度目というレベルなので、土地鑑もなければ地名もほとんど分からない。右も左も分からないこんな大都会で、猫なんかそう簡単に見つけられないと思っていたが、怪しげな街や路地を避けるなどしたにもかかわらず、たくさんの猫に会うことができた。快晴で日差しが強く、最高気温も30.2℃という日だったので、5時間16.9kmという長丁場の散歩はくたびれ果てたが、それを補って余りある充実したプチ旅行だった。
紙幅の都合により、今日の記事は路地奥で見かけた2匹で終わることにする(続きは後日)。
案の定キジ白に逃げられ、立ち去った方を振り向くと、黒白が驚いたような表情でこちらを見ていた。