第六感は働かない


福生市の猫

 老夫婦の営む小さな町工場で若い茶トラ白に出会ったのは2012年8月のことだった。作業場からはいつもプレス機の規則正しい音が聞こえていて、何匹かいた猫たちはいつも婆さんの周りに集まって、子守歌のようにその音を聞いていた。2019年の暮れにプレス音が聞こえなくなり、年が明けてしばらくすると工場も取り壊されて更地になったが、猫たちの身柄は近所の会社事務所が引き継いだらしく、敷地の隅に設けられた小さな区画で暮らしていた。俺もその間に拝島から西立川、平山そして分倍河原へと何度も引っ越して、当初よりだいぶ行きにくくなったが、相変わらず懐かない猫たちの元へ通っていた。当初数匹いた猫は次第に減っていき、最後に残ったのはあの若い茶トラ白だけだった。訪ねて行っても敷地の隅で伸びていることが多く、こちらに関心を示すこともあまりなかったが、去年9月の日勤前だけは様子が違っていた。大きな声で鳴きながら近寄ってきて、写真を撮るために離れようとしても、追いかけてきて道路を渡ろうとする。それまで触れたことすらないのに、抱きかかえて敷地の奥へ戻さなければならないほどだった。その日が茶トラ白との最後になるとは思いもせず、今日事務所の人に尋ねると、年末に死んだと教えてくれた。
 特に親しくもなかった猫が突然態度を変えて、縋るように擦り寄ってくることは今までにも何度かあった。記憶に残る最初のケースは立川勤務時代の知り合いで、仮の名前を女優と名付けた三毛だった。いつも逃げられてばかりいたのに、最後に会った時だけは盛んに鳴いて、近寄ってもその場を動こうとしなかった。猫物流のヨレヨレ君の場合は、帰ろうとする俺のあとを100mも追いかけてきて、角を曲がるまでじっとこちらを見つめていた。恐らく彼らは自らの最期が近いことを悟っていたのだろう。悲しいことに、第六感の働かない人間にはそれが分からない。その逢瀬が最後になるなんて思いもしない。
 ……前置きが長くなってしまったが、町工場跡地をコースに含む今日の散歩は拝島からスタート。1匹目はフェンスの向こうに見えている。
福生市の猫

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 モノクロ三兄弟の黒白がカメラに収まるのは極めて珍しい。お友達の灰猫とともに、逃げ足の速さは俺の知る猫の中でトップクラスだ。
福生市の猫

 定点の児童公園にはサバ白1号がいた。
福生市の猫

 こちらに気づいてもう鳴いている。
福生市の猫

福生市の猫

 見かけるのは年明け以来の2ヶ月ぶり。だいぶ暖かくなって一息ついたねえ。
福生市の猫

 民家の敷地の暗いところに猫が佇んでいた。
昭島市の猫

昭島市の猫

 カメラが苦手らしく、どう頑張っても目を細めてしまう。年末に会った時はそれほどでもなかったけどなあ。
昭島市の猫

「大きなレンズは怖いんだよ」
昭島市の猫

 あと数週間でピンク色に染まるとは思えない殺風景な空き地で猫発見。
昭島市の猫

 梅はもう咲いているけどね。
昭島市の猫

昭島市の猫

 この黒白もかなり臆病。逆サイドからアプローチしてみたものの……、
昭島市の猫

 道路向かいの民家の敷地へ逃げ込んでしまった。今日はそれほど多くの猫に会えなかったが、茶トラ白の消息を聞けたのは良かった。
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