直線距離わずか8kmの職場へ通うのに一都二県を跨ぐなんて、つくづく俺は物好きだなと思って今日のタイトルにしたが、そのくらいの距離を通勤している人はざらにいるのである。考えてみれば、トロンボーン奏者の友人に新座から川崎まで通っていた人がいるし、俺自身も3ヶ月ほどの短い期間だが川崎から蘇我へ通勤していたことがある。ちょっと隣町へ行くくらいの軽い気持ちで移動していると、すぐに県を跨いでしまうので、北海道出身者にとって関東は箱庭のようなものだ。
とはいえ始業時刻の5時間以上も前に家を出て、職場と真逆の方向で猫を探し回る行為が酔狂なことは確かだ。今日は年内に一度会っておきたかった肉食三毛ちゃんの許を訪ねて、新秋津から散歩をスタート。サチコの生まれ故郷である東村山市内で最初の1匹に遭遇した。
遠すぎて絶対に分からないと思うけど。
ぱっと見だとこれでも分からない。黒猫は目が光っていないと、猫と認識するのに時間がかかるね。
近寄ったら警戒して頭を低くした。実るほど頭を垂れる稲穂かな。
近所の飼い猫らしく、リボンつきの首輪をつけていた。まあ女の子であろうな。
猫の住宅街に差しかかって間もなく、巡回中の茶トラに行き会った。
丸々とした背中に見とれているうちに、近寄ってきて目の前に落ち着いた。頭を撫でたり、指の匂いで挨拶したりと、親睦は深められたが、写真はこれ以外全部ボケていた……。
……がしかし、シャッター音に気づいて駆けてきた。嬉しい展開。
日なたはコントラストが高すぎて怖い顔に写っちゃうから、日陰で一枚撮らせてね。
三毛ちゃんとうだうだやっていると、騒ぎを聞きつけた相方が現れた。
この子たちがなぜこんなに人懐っこいのか、その理由が今日初めて分かった。ここは小学生の通学路になっていて、毎日二回、たくさんの子供たちに撫でくり回されているのだった。道理で物怖じしないと思ったよ。
時刻は14時前。下校の小学生がわらわらと現れたので、不審なおっさんはそそくさとその場をあとにした。もともとここには昨日の朝来るつもりだったが、寒くてヘタレて今日になった経緯がある。ゆっくり猫と戯れるなら、誰もいない朝の方が良かったかも知れない。
とりあえず目的は達したので、安心して新秋津駅へ戻っていると、道すがらの民家の庭でマーメイド的に寛いでいるのがいた。
こちらに気づくと、慌てて身を起こした。マーメイド化しているところを人に見られたくなかったのかも知れない。