巨大黒猫は近所の小学生の人気者だった。通学の時間にもなると猫の前に人だかりができて、頭からお尻まで撫でくり回されるのが日常風景になっていた。時に俺がその時間帯に猫を構っていると、いつの間にか後ろに順番待ちの列ができていて、驚いて飛び退いたこともあった。
大人の俺が子供の楽しみを奪ってはいけないので、巨大黒猫には小学校の夏休み中に会いに行くつもりだったが、今月は長雨が続くなどしてなかなかタイミングが合わず、ようやく実現できたのが今朝だった。あいつは寝坊助だから、今日みたいに雲の多い日は、まだ猫ボックスの中で寝ているかも知れないなどと想像を巡らせて、しばらくぶりにねぐらを覗いてみると、寝床の縁台に張り紙がしてあり、そこには「クロちゃんは8月3日に永眠しました」と書かれていた。
西立川で大きな黒猫に遭遇したのは2012年6月。サチコの3倍くらいありそうな巨体に似合わず、繊細で人懐っこい性格の猫だった。ここ1年あまりは療法食を与えられており、恐らく高齢ゆえに腎臓病を抱えていたのだろうが、明らかな衰えを感じたのは、去年の暮れに左前足を骨折してからだった。身動きもままならず、次第に痩せて、大きな体がしぼんでいく様を見るのは辛かったが、面倒を見ている人も獣医に診せるなどしており、18歳と高齢だったことからなかなか治癒しなかったようだ。これまで何度も知り合い猫の死に遭遇する中で、悲しみとともに大きな喪失感に襲われたのはこれが三度目だ。
次に訪ねたのはエビ子のねぐら。この辺りもいよいよ知り合いが少なくなってきたな。
いつもならすぐに駆け寄ってくる子だが、今朝は少し懐く素振りを見せたあと、だるそうにして動かなくなってしまった。
お前、体調が悪いのか。先月会った時、食が細くなったと言ってエビ邸の主人が心配していたものな。
目を閉じて動かないエビ子の体をしばらく撫でて、その場をあとにした。今はまだ手のひらが彼女の毛皮の感触を覚えているが、こうして触れ合えるのは、もうそれほど長い間ではないような気がしている。
今日の散歩は最初の2箇所で打ちひしがれてしまい、残りの区間は抜け殻のようにただゴール地点を目指すだけとなった。まあそれでもこういうのを見つけちゃうわけだけれども。
時刻は7:17。朝ご飯を食べ終えて、いなくなっているだろうと思っていた猫が濡れ縁にいた。
7月初めに来た時はもう少し早かったんだけどね。今日はエビ子のところに長居したので、時間がだいぶ押している。
灰色の熟女・青2号の家を訪ねてみたものの、今朝も会うことは叶わず、代わりに小柄なキジトラがこちらを窺っていた。
生後半年くらいかな。奥の方に兄妹と思しき茶トラ白もいたが、いくら呼んでも近寄ってこなかった。
君がお母さんなの? でもおっぱいが見えないし、そもそも俺は君の性別すら知らないから、断定はできないな。
キジ白の母と黒白の父という組み合わせからは、茶色い毛色の子は生まれないんだよなあ。ヒントが少なすぎるから、そのうちまた観察しに来るよ。
もともと今日の散歩は西立川から立川まで歩くつもりだったが、時間が足りなくなってきたので、途中のバス停から立川駅南口行きのバスに乗ることにした。猫はコンスタントに見つかる。
この辺りでサビを見るのは久しぶりと思って、帰宅してから調べたら、この子には2年4ヶ月前にも会っていた。元気そうで何より。
今日最後に立ち寄ったのはオッド1号の団地。本人も外に出て座っていた。
これはポーズを取ってくれているのではなく、単に逃げかけているところ。団地の人によれば、こいつは男には冷淡なのだそうだ。
最後に逃げた先でアップを撮ったあと、最寄りのバス停へ向かった。