武蔵溝ノ口駅近くに住む三毛さんのねぐらが取り壊されるということで、里親に貰われていく三毛さんにお別れの挨拶をしたのは先月19日のことだった。張り紙には遅くとも11月中旬までには保護すると書かれていたので、今から訪ねて行ってももういないだろうし、もしかしたら家ごとなくなっているかも知れないとは思ったが、そういうことは自分の目で確認しないと気が済まない性分なので、散歩のついでに覗いてみることにして南武線の上り電車に乗った。あの辺りには三毛さんのほかにも数匹の猫が生息しているらしく、彼女がいなくなってもほかの誰かに会える可能性はある。
所要時間が各駅停車と5分しか違わない快速に乗れたことで何となく得した気分になり、ひと月半ぶりの武蔵溝ノ口に到着したのは12:18。ねぐらの古民家は先月見たままの姿で残っていたものの、家具や什器が外に出されるなどして解体の近いことを感じさせたが、それより驚いたのはそこで猫が寛いでいることだった。
あれー、何で猫いるの?
暗渠伝いに奥の方へ行くと、縁石にすりすり中の茶トラ白もいた。いったいここどうなっちゃったの?
これはきっと三毛さんがいなくなったことで、この場所がほかの猫たちの縄張りに変わったのだと思う。六花谷のゴンがいなくなった時も、普段は滅多に現れない臆病なキジトラが出てきたし、黒煙ちゃん亡きあとの黒煙邸には武蔵が出入りするようになった。猫の縄張りには雨風を避けられるとか水や食べ物が豊富といった利点が多少なりともあるはずで、そういう場所は当然ほかの猫たちからも狙われる。主が強くなければ縄張りを守ることはできないし、いなくなったとなればすぐに次のが引っ越してくるのだろう。
そう遠くないうちにあの古民家は取り壊されるはずだから、あの2匹の縄張りもかりそめだなあなどと思いながら峠を越え、急な下り坂に差しかかると、日なたと日陰の境目でお昼寝中の猫を発見。あれはちょっと露出に困るな……。
フィルム写真を暗室で現像していた昔、こういう写真を印画紙に焼き付けする時は、猫型に切り抜いた紙をかざすなどして引伸機の光を遮り、猫の部分だけ余計に露光して明るさを調整していた。露光時間は手探りなので、小さくちぎった印画紙に何度か試し焼きしてから本番作業を行っていた。今はコンピュータ上で簡単にできるから本当にありがたい。
峠をさらに下りていくと、階段の先に黒白が佇んでいた。あれはきっと知ってる子。
先月はお寺の本堂で寝ていた子。境内へ逃げ込んで安心しているところを1枚。
今日は暖かいから猫峠の猫たちもあちこちに散らばっているようだな。
夏の間は日差しを避けてみんな車の下に隠れていたけど(一例)、今日覗いてみたらもぬけの殻。恒温動物はあっち行ったりこっち行ったり忙しい。
この子はお馴染さんの黒白。縄張り監視は大切だけど目つきがちょっと怖かったよ。
最近とても懐いてくれてすぐに近寄ってくるので、動き出す前にもう1枚撮っておく。
最後に立ち寄ったのは揺れる想いのねぐら。いるだろうと思っていたらやっぱり寝ていた。
抜き足差し足で近寄ったつもりだったけど、相手が猫だとやはりバレるな。元気にしてたか。
こいつもずいぶん懐くようになったけど、まだ指挨拶には至っていない。今日もチャレンジしたけど腰が引けちゃってダメだった。
股間の立派なものも拝めたので目的は果たした。とても満足してその場を辞去した。