猫を訪ねて日台ハシゴ旅12(北港〜台西)


台西郷の猫

 四国・台湾猫旅の4日目(3月22日)は雲林県内の三つの街(北港、台西、西螺)を訪ね歩いたが、ほかにも四湖や水林など行ってみたい街がいくつもあって、旅行プランの作成はまずそれらを諦めることから始まった。今回の猫旅は今まで台湾各地で会った印象深い猫に再会することが主なテーマであり、それ以外の土地を訪ねることは時間的にほとんど無理だった。例えば最初期のプランには高雄市那瑪夏ナマシャ区の達卡努瓦タカヌワ村が含まれていたが、ここは十字路どころではない大変な山の中で、日本で例えるなら静岡県葵区の小河内集落のようなところだ。その先の山地を越える道はなく、行って戻るだけで丸二日かかるので早々に諦めた。那瑪夏という地名はツォウ語のyamasiana(この地を流れる楠梓仙渓という河川名)が由来だそうで、台湾において自治体名に原住民語を冠した初のケースという点で興味深い。
 そうした経緯で、今回の猫旅ではこの日最初に散歩した北港鎮だけが初訪問地となった。3時間半近い滞在時間を利用して台湾糖業鉄路の廃線跡を見物することもできたが、同鉄道はかつて台湾南西部に網の目のような路線網を持っていて、俺が目にしたのはその中のほんの「サワリ」に過ぎない。台湾の歴史や文化を知るには人間の一生分ぐらいの時間がかかりそうだし、彼の地で国内旅行が盛んというのも尤もなことだと思う。
 さて、前回から続く北港の猫もすでに後半。門前町らしくブロック舗装された路地では猫が通行人を眺めている。
北港鎮の猫

北港鎮の猫

 小さな白斑のキジ白。これからこの街は大変な人出になるらしいけど、ここでのんびりしていていいの?
北港鎮の猫

「白沙屯媽祖進香は毎年のことだからね。それに僕たちは隠れ場所をたくさん知っているんだ」
北港鎮の猫

 並びの民家には黒白もいた。
北港鎮の猫

 この毛色はいわゆる一つのタキシード。可愛いものだねえ。
北港鎮の猫

北港鎮の猫

 行っちゃった。
北港鎮の猫

 北港で最後に見かけたのは高みの茶トラ白。遠目にも若手って分かるね。
北港鎮の猫

北港鎮の猫

 たぶん1歳にもなっていないと思うけど逞しい顔つき。一応呼んでみたけど下りてくるわけがなかった。
北港鎮の猫

 散歩を終えて北港のバス乗り場に戻ったのは10:54。北港散歩は猫探しに全振りしたわけではなく、糖鉄の遺構を見物するなどしたので歩行距離は9.5kmとなり、正味3時間18分で見かけた猫は18匹という結果だった。普段の猫散歩では1kmにつき1匹ぐらいでいい線行ってる印象なので、520mごとに1匹という遭遇頻度はさすが台湾という感じだ。
 朝一番のバスで北港に到着した際、台西客運の待合所にリュックを預けてあったので取りに戻ったが、次に乗る台西行き7221路は嘉義客運の運行で、乗り場がまったく異なることを忘れていた俺は危うく乗り遅れるところだった。これは他人に勧められることではないが、台西客運の待合所にコインロッカーや荷物預かり所などはなく、リュックは窓口のおばちゃんに断った上で部屋の隅に置き去りにしてあった。そういうことにあまり危険を感じないのも台湾ならではと個人的には思っているし、紛失して真に困るものといったらパスポートと財布ぐらいしかないからできることでもある。自己責任であることは言うまでもない。
 この日2番目の散歩地・台西には11:48の到着。懐かしくてよく思い出す街なので何となく知った気になっているが、2018年11月にたった一度来ただけなので(こちらの記事)、いざバスを降りてみると前回歩いた道順が思い出せない。仕方がないのでナビゲーションアプリで当時のログを開き、地図上に表示されたラインをなぞるようにして歩いていると、しばらくして見覚えのある民家と猫がセットで現れた。
 この家の猫に再会するのが台西を訪れた第一の目的。果たしてあれは誰でしょう。
台西郷の猫

台西郷の猫

 観光客が珍しいのか、鳴きながら少しずつ距離を詰めてくる。猫の習性って面白いね。
台西郷の猫

「好緊張啊(どきどき)」
台西郷の猫

 会いたかった子とは毛色が違うけど挙動も顔つきもそっくり! 5年半前に会ったのは君のお母さんだったのかも知れないね!
台西郷の猫

 この日の気温は正午の時点で24.3℃と穏やかだが、26.1℃だった5年半前よりキツく感じるのは日差しのせいか、それとも俺の加齢のせいか。去年ほどの距離を歩いるわけでもないのに、今回はすでに膝と腰が痛み始めてもいる。前回の訪問では台西特産の牡蠣料理を食べようと張り切っていたが、当時の俺は台湾で牡蠣を「蚵仔」と呼ぶことを知らず、気づいた時にはもうバスの時間が迫っていて果たせなかった。今回も蚵仔料理を出す店を探し回る気力や時間はすでになく、食べる機会があるとしても日本に帰ってからになりそうだ。ちなみに牡蠣は中国語でも牡蠣(簡体字で牡蛎)だが、台湾では台湾語の蚵仔オアと呼ぶのが一般的。
 猫は車の下で伸びている。
台西郷の猫

台西郷の猫

 野良然としたキジ白。ちょっとだけモデルをお願いしますよ。
台西郷の猫

「……」
台西郷の猫

 5年半前にはなかった小さな公園で猫発見。ここ台西は街の至るところに牡蠣殻の山があり、それらは紐で結わえて牡蠣の養殖に再利用されているが、余った殻の処置に困ったのかついにオブジェ化してしまったようだ。
台西郷の猫

 すごいな、地面にも敷いてある。
台西郷の猫

台西郷の猫

 ガジュマルの匂いを嗅いでいた茶トラはなぜかフレーメン反応。お友達の匂いがするのかな。
台西郷の猫

台西郷の猫

 あらま、あの子は大胆だね。警察署の駐車場で休んでいる。
台西郷の猫

台西郷の猫

 こちらに気づくと身を起こして向き直った。でもここ警察だし、次のバスまであと8分しかないし、濃密にいちゃつくのはちょっと厳しいなー。
台西郷の猫

 ……というわけで、2時間弱の台西散歩はこの子で終了。散歩中はご飯を食べる間もなく、コンビニで買ったお握りとバナナを持って13:41発の台西客運9016路に乗り込んだ。ここ台西でも懐かしの猫に再会することは叶わなかったが、子孫と思しきサビに会えたことはテレビドラマ「ルーツ」の猫バージョンを垣間見たようでとても感慨深かった。旅の一日一日が忘れ得ぬ記憶として脳裏に刻まれていく。
台西郷の猫

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