先日、仕事の帰りにスーパーに寄ったら、魚介コーナーに生牡蠣が並んでいた。俺は牡蠣が大好きで、機会あるごとに食べているが、今までで最も印象深いのは、気仙沼の魚市場で買った超巨大牡蠣だ。あれは本当にでかくて旨かった。20年ほど前のごく短い間、仕事の都合で宮城県豊里町(現在の登米市)に住んだことがあり、快速列車なら気仙沼まで1時間半ほどで行けたし、石巻や志津川ならもっと近かった。
そして今日紹介する雲林県台西郷も、街中の至るところに牡蠣殻が山積みになっている、牡蠣好きには垂涎の土地。……少なくとも訪れるまではそう思って、台湾の牡蠣料理を食べることを楽しみにしていたんだが、いざ街を歩いてみると、牡蠣料理どころか食堂自体がほとんど見当たらない。あとで調べたところによると、台湾では牡蠣のことを「蚵仔」と書くそうで、店があったとしても、どのみち見落としていた可能性が高い。
台西郷は人口23,000人ほどの長閑な村落で、牡蠣殻のほかにはこれといった見所もなければ宿泊施設もない。台湾人ですら知らない人が多いというほどの街をわざわざ訪ねたのは、ひとえに台湾の東西南北で猫を探すためだ。猫旅4日目(11月15日)、新竹から高鉄に乗って雲林に移動し、タクシーを飛ばすこと30分。台西郷最大の社交場・セブンイレブンに到着したのは12:15のことだった。相変わらず空は青く澄み切っていたが、海から近いせいか、気温は26.1℃とやや過ごしやすくなっていた(前回の記事はこちら)。
猫もぼちぼちと出ているようだ。
猫情報どころか観光情報すらほとんどない土地で、盲目的に歩き回って猫に会えるものなのか、不安に思っていたが、ひとまず東西南北の「西」を達成できて一安心。残すは「南」の台南を残すのみとなった。
三毛ちゃんは日なたでご飯を食べていたが、強い日差しの下、大方の猫は日陰に逃れているようだ。
行き止まりの路地を覗いてみると、道路の真ん中で行き倒れ的に伸びているのがいた。
牡蠣殻横丁とでも言うべき路地の奥に猫発見。山積みになっていてすごいなあ。
殻には紐が通してあって、一纏めにして保管してあるようだ。捨てた殻が山になっているのかと思っていたけど、そうではなさそうだ。
「観光客なんて珍しいから僕が特別に教えてあげましょう。牡蠣の養殖には大きく分けて5つの工程があり、ここに積んである牡蠣殻の山は、最初の工程に使われる『採苗連』という大切な道具なのです。このように牡蠣殻を紐に結わえて、筏から吊るしておくと、海中を漂う牡蠣の幼生が付着するのです。この工程を採苗といい、付着した幼生がある程度大きくなったら、採苗連から外して、新たな針金に吊るしてさらに育成するのです。日本では牡蠣殻の代わりにホタテの殻を使うようですよ」
「出典は広島市農林水産振興センターだよ! それじゃ僕は逃げるから掰掰!」
猫を探しに行って牡蠣を学べるなんて、何と広がりのある旅なんだろう! 爽やかに逃走した黒に感謝しつつ、住宅の軒先でさらに1匹発見。
鄙びた田舎町だと思って舐めてかかっていたが、蓋を開けてみるとこれが盛況。これだけいてくれれば、暑くても頑張ろうという気になる。次回の記事も丸々台西の猫を紹介するのでお楽しみに!