今でこそ某巨大ネズミ帝国で有名な浦安だが、もともとは漁業の街で、高度経済成長に伴う海の汚濁化に苦しめられながら、1970年ごろまでは細々とアサリやハマグリなどを産出していた。現在の市域の4分の3ほどは埋め立て地で、それ以前は首都高湾岸線の200mほど内側が海岸になっていて、今回散歩した猫実も昔は砂浜に面した漁師町だった。漁業権を放棄して海面を埋め立て、ネズミ帝国を誘致することになったのは、どれだけ頑張っても海の汚濁が止まらず、これ以上漁業ではやって行けないという苦渋の選択の結果だ。その後、バブル期になって京葉線が開通し、舞浜を始めとする住宅地の知名度も上がったが、浦安の礎は境川を中心とした猫実や堀江などの漁師町にある。
これらの街に猫が多いのは、こうした歴史的経緯があるからだろう。昔ながらの細い路地が残る猫実も、防災の観点からは好ましくなく、今は区画整理事業が進められている。いずれ事業が完了し、街から大方の猫が消えた時が、漁師町としての浦安の終焉なのかも知れない。
……というわけで、今日の記事は猫実猫の3回目。人懐っこい子猫たちに遭遇したあと、区画整理で歯抜けになりつつある住宅街をさらに行くと、空き家と思しき民家の縁側で日に当たっているのがいた。
さらに進んで埋め立て前の海岸近くまでやって来た。とある住宅の隅に猫発見。
キジ渦白の鉢割れ君。こちらに興味はあるらしいけど、警戒してしまって触ったりはできなかった。
漁師町だったころのこの辺りは田畑が広がるばかりで、民家はほとんどなかったようだ。集落は境川沿いにあり、捕れた魚介類は船に載せられ、旧江戸川を経由して直接築地に持って行けたので、付加価値が高かったそうだ。猫実の外れまで来たので駅に戻るべく引き返していると、遊歩道の向こうから2匹の猫が現れた。
キジトラは逃げてしまって1匹だけ残った。こいつもさっきと同じキジ渦白。それでなくとも猫だらけのこの街で、漁師がわざわざアメリカンショートヘアなどの洋猫を買ってくるとも思えないので、新住民とともに現れた新参者の遺伝子だろうな。
近寄ったら民家の敷地へ逃げてしまったので、15分ほど経ってからもう一度寄ってみた。目を細めているので分かりにくいけど、ブルーアイの白。
駅に近づいても猫の気配は濃厚だが、13時を過ぎて大方の猫たちはお昼寝タイムに入った。こちらは古い納屋で寝ていた茶トラ。いくら呼んでも反応なし。
最後の猫は、区画整理で地上げされ、空き家となった民家で寛いでいた。
今の浦安を象徴するような場所でのほほんとしていた茶トラ白。この日の散歩はここで終わることにして、このあと駅前でお昼ご飯を食べてから家に帰った。浦安は遠いけど面白い街だ。乗り換え1回で行けるから機会があったらまた行ってみる。